20.次にちょい強オークくん
『――勝った』
ゴブリン――それも王クラスに。
俺は、勝ったんだ。
『ゴブリンキング……ってランクどんくらいなんだ? ていうか、ランクあるかも分からんけど?』
ゲームとかだったらABCとかSとかあったけど、この世界ではどうなんだ?
《あります。ギルドが制定した全連の位階というもので、ランクの説明は以下の通りです――
A+ランク:厄災レベル。
主に迷宮の主やドラゴンが分類されており、大規模強襲でないと討伐不可。
A・A-ランク:災害レベル。
存在するだけで小国の存在が危うくなる強さ。熟練したパーティが連携を取らないとほとんど討伐不可。
B+・B・B-ランク:とても危険。
小国なら半壊するが、それなりの冒険者パーティで討伐可能。
Cランク:危険。
小さな村が壊滅するレベル。ある程度経験を積んだパーティが討伐可能。
Dランク:普通。
放置していると多少の被害が出るレベル。ある程度経験を積んだ冒険者がソロで討伐可能。
Eランク:雑魚。
ほとんど害は無く、駆け出しの冒険者でも討伐可能。
――となっております。ゴブリンキングはCランクに位置しております》
『はえー、A+ランクとか、まだ遠いな……。それに、ゴブリンキングが村壊滅させるレベルなのか……』
――え、これかなりやばくね?
俺はそんなヤツを相手にしてたの?
『……それにしては大分楽勝だったけどな……。――弱体化でもしてたのかな?』
《いえ、それは断じてありません。決して、決して、決して!!》
お、おう。なんか圧が強いな今回。
『じゃ、ゴブリンに勝てたことだし、次はちょっと強いオークとかにしようかな。いるでしょ、オーク』
《――はい。豚鬼の説明を聞きますか?》
『いいや、情報整理のときにまたやる』
このダンジョンも雑魚とゴブリンだけってわけじゃないだろう。
きっと、ここにオークが居るはず。
そう考え、『魔力感知』で探し始めた。
魔力感知で、ゴブリンキング二匹分の魔力を見つけた。
オークかな? と思って、俺は今、その部屋へ根を伸ばしている。
その部屋へ侵入したその時。
ズシーン……。ズシーン……。
と足音が聞こえる。
土を掘って部屋に飛び出す。
その目の前には――言い方を考えなければ、デブの人型に豚の頭がついた魔物だ。
『……オークって、デカい人型の豚っていう認識だったな……ゴブリンと同じイメージ通りだ』
ゴブリンと同じように、斧――いや、棍棒を持っている。
ただし、ゴブリンのものよりも、サイズも圧も一回り大きい。
「グアアア……」
オークのうめき声は、知性など感じられない。
あれだ、こいつは何も考えないで攻撃を繰り出す脳筋タイプだな。
『先手必勝だ。〝竜の胴根〟!!』
ゴブリンキングを貫いた一撃。それをオークに繰り出したのだが――
貫きはしなかったものの、腹を抉り、転がっていく。
俺は、少しだけ信じられなかった。
Cランク――ゴブリンキングですら貫けたのに、ただのオークがキング以上の強度、抉っただけで済むとは思わなかった。
それでも、オークは立ち上がった。
腹から血を流しながら、『痛覚無効』を獲得しているかのような挙動で。
『マジかよ――!』
《この個体はオークロードです。豚鬼の中でも上位の個体で、ランクに直すと〝B+〟にもなります!》
ゲッ! 変にゴブ王より硬いなと思ったら、ランク高いのかよ。
ゴブ王とは違う戦い方を考えさせられる……。
俺よりフィジカルがある分、ゴブよりもきつい相手だな……。
「グアアアァァァ!!!」
オークロード? が斧を振りかぶって突進してくる。
やはり知性は感じられない――のだが、嫌な予感がした。
『くっ!?』
咄嗟に避けると、オークロードが外した一撃が壁を割る。
知性がない――ないことによって、迷いがないんだ。
攻撃が一直線。だから威力が大きいんだ。
『――これがB+のパワーか』
さあて、どうしようか。
フィジカルに通じるのは、生半可な小細工では通じない。
だとしても、愚直に攻撃しようにも、あの防御力だ。どうすれば一撃で倒せるか……。
《オーク系統は基本的に、『痛覚無効』には及びませんが『痛覚鈍化』というスキルを獲得しております》
――痛覚?
そうか。いい作戦を思いついた。
失敗したら根が終わる。不安がないといえば嘘になる。でも……。
この作戦なら――行ける気がする!
別に失敗しても、死にはしないしな。
こうして、作戦実行に取り掛かる――
ダンジョンの角部屋。対角で対峙する形となっている。
『タメて……タメて……タメて――!』
イメージは〝パチンコ〟と〝カタパルト〟だ。
限界まで魔力を溜めて、タイミングを見極めて放つ。これを根だけで行う。
言うなれば、パチンコとカタパルトの融合だ。
カタパルトのように力を限界まで掛け続け、パチンコのように一直線に飛ばす。
スキル『操木』で根の根本にバネのように力を放ち、根をロケットのように飛ばす――という戦法だ。
『発射! 南無三!! さらばだ、オークロード』
根の根本に魔力を放ち、ロケットのように飛ぶ。
〝竜の胴根〟とは違い、攻撃範囲ではなく攻撃力を一点に集中して放っている。
――名付けて〝竜の針根〟!
針のように鋭く、一点に圧を掛ける。
面積が小さいほど圧力は増すので、貫く箇所によっては一撃で終わらせられるはずだ。
俺の見立て通り、俺の〝竜の針根〟はオークロードの頭を貫き、一瞬にして根にオークロードの全体重がかかる。
――俺の勝ちだ。
『よっしゃー! 勝ち越しだぜ!』
《私の助言なしでも、戦えるようになりましたね》
『君なんもしてなくない? 少なくとも、ログさんの助言で助かった記憶はないと思うんだけ――』
《そんな事ありません。とりあえず、今はこの勝利を祝いましょう》
無機質音声になっているが、言ってることは最もだ。
ログさんの助言は、修行前のゴブリン戦でしか助かってない気がするが、今はそんな事どうでも良い。
根を本体まで戻しながら、この余韻を噛み締めるのだった。
――余談だが、俺はこのときから〝即興〟で作戦を組み立てる癖をつけるようになったらしい。
相手を分析し、穴を突ける作戦を組み立て、実行する。
その癖がこの先、どんなに助けになるかを、俺はまだ知らなかった。
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