19.カチコミ成功、ゴブ達抹殺!
照準を、弓を構えるゴブリンに合わせる。
『遠距離を……潰す……!』
斧持ちのゴブリンはまだ動いていないが、弓のゴブリンは既に弦を引いている。
正面と正面。多対一の遠距離戦。
共に遠距離――遠距離?
遠距離……なのか?
分からんが、ほとんど西部劇の早撃ちであることは間違いない。
一瞬の静寂。
それを打ち破ったのは、俺の叫びだった。
『突撃――ッ!!』
根を突撃させる。
遅れて反応した弓ゴブリンが、矢を放つ。
だが、俺も馬鹿ではない。二度目は流石に避けれる。
蛇のように根をうねらせ、スルッと回避した。
「グギャ!?」
向かってくる俺に、弓ゴブリンが弓そのものを投げつける。
『慌てたな、馬鹿め!』
弓は矢があるから脅威だ。
それが無ければ、ただの糸張る木の棒だ。
根を鞭のように振り、弓を破壊する。
『ハッハー! 弓なんざ喰らわねえよ。切れ味終わってる斧の方がマシだぜ!?』
ここでやっと斧ゴブリンが動き始めたが、もう遅い。
攻撃されるより先に、弓ゴブリン達を倒す方が速かった。
弓を弾いた後、すぐに弓ゴブリン達に向かった。
そして、槍のように弓ゴブリン達の喉を貫き、断末魔すら上げさずに倒した。
『っしゃ! 初討伐だぜ!』
《まだ敵が残ってま――》
ああ、それね。大丈夫。
もう『魔力感知』で分かってるから、弓達ぶっ飛ばした後仲間を呼ぼうとする奴らを中心に薙ぎ倒してやったよ。
『初めての討伐……成功だ』
滅茶苦茶嬉しい。
戦闘は理解と、経験。
一度出来なければ、何回も試行錯誤して倒す。
それを二度目の挑戦で成功できたのは、運なのかもしれない。
――まあ〝運も実力の内〟って言うし、俺が成長した証だろ!
《――いえ、これでは成長できたかまだわかりません。少し難易度を上げてより上位階級のゴブリン集落へ行きましょう!!》
……なんで審査しようとしてんの?
まあでも行くことには賛成しよう。今でも上に通じるのか知りたいし。
『そのハイグレード集落はどこにあるか分かる?』
《アガストスの近くです》
――アガストスかあ。
迷宮が近いと強くなるとかなの? 魔物って、そういうもんなの?
魔力がどうこうとか、良く分からんなぁ――
なんてことを考えながら、根をアガストス方面へ伸ばす。
――滅茶苦茶、憂鬱だったけど。
《結局行くんですか》
◆◆◆◆◆◆
さあやってまいりました、迷宮封国アガストス! ――の近くの草原。
正直言ってまだ早いと思ったけど、ログさんが言うならやってみる勝ちはある!
『それで、どこに集落があるのか――』
刹那、背筋がゾワッとする。
『魔力感知』で、嫌な物を探知してしまった。
――あれ? これ……やばいかも。
ちょっと建前作って逃げ――
考える暇なんて無く、ログさんが告げる。
《ここから、およそ八百メートル先にある迷宮にあります》
『……え? らび……りんす?』
集落って言ったよね?
《肯定。ですから、迷宮の中にゴブリン集落があるのです。それではいきましょう! 時間は有限です》
『……』
集落に行くならいいけど、迷宮に行くのはなぁ……まだ早いかなと、思ってまして……。と念じても、ログさんは聞く耳を持たない。
『えちょ!? 根が勝手に動くんだけど!!』
《早く行きますよ!》
俺、まだ許可してないんですけど――と止めることも叶わず、俺は急遽迷宮へ訪れることになるのだった。
迷宮に到着……させられた。
恐怖は……あるのか、ないのかよく分からない。
『ログさん、本当に行くの? まだ早いとおも――』
《入りましょう。地下迷宮は初めてですので》
え、ダンジョン?
『ダンジョン……迷宮と違いが……?』
《地上か地下かくらいです。はい、行きますよ》
……はあ。あまり変わんないのね。
ログさんに疑念が湧くが、そいつは後にしよう。
最高速度で、突入する。
『ログさーん? 本当に集落あるのー?』
コウモリやらウサギだけで、ゴブリン一体も見当たらないんだけど。
《集落はありません。ですが、ここの階層主が小鬼なのです》
『……ふろあろーど?』
集落がない? ……騙された――
《ああ! 失礼しました。まだ用語解説がまだで――》
『……でも、面白そうだな! 階層主! よし行くか。あのデカい扉の先なのかログさん?』
《……はい》
ッシャア行くぞまだ見ぬ強敵を求めて!
……勝てる程度の。
根で扉をバコン! とぶち破る。
目の前にいるのは――
王冠をかぶったデケェゴブリン二体。
『なんか見たことあるな。ゲームとかで』
一旦鑑定してみるか。
[種族:小鬼……ゴブリンキング]
[種族:小鬼……ゴブリンクイーン]
ふむふむ、王族系か。
『相手にとって不足なし。いざ尋常に勝負!』
そうして根で引っ叩こうとしたら、ゴブリンキングが角笛を吹く。
すると、キングの後ろからゴブリン達が出てきたのだ。
『増援か』
となると、先に角笛とキング潰したほうがいいかな。
『今に見てろ……! 俺の新技――』
そう、俺は一つの必殺技を思いついたのだ。
ダンジョンでひたすら雑魚敵相手にしてた時、俺が暇で暇で仕方なかったとき。
土壇場で編み出してちょっと磨いた技。その名も――
『喰らえ! 〝竜の胴根〟――ッ!』
――〝竜の胴根〟――
それは、は、一本の根を限りなく太くすることで攻撃範囲を広くする技。
威力は、先端でちょっと触れただけでも『一本角の兎』程度なら木っ端微塵になるほどだ。
『さて、キング達ならどうなるかな』
根が大根六つ分ほどの太さとなり、キングの方向へ突き出される。
キングは防御体制を取ろうと、クイーンは王を助けに行こうとした。
だが、その行動よりも先に、キングへと突っ込まれる。
――グジュッ!
キングの腹に大きな風穴が空き、壁にもたれこむ。
目の光が一瞬で消え、角笛を手放した。
角笛はギリギリ壊れなかったが、キングを倒すことには成功したな。
『よし、まずは一体――ってアブね』
危ない危ない。ちょっと油断してたら取り巻きゴブリンにやられてしまう。
《判断速度は上昇しましたが、まだまだ甘いですね》
ぐぬぅ……。ログさんめ、言うじゃないか。
今に見てろ、元ゲーマーの俺の反射神経を。
そんな感じにやり取りしてても、周辺の警戒は忘れない。
クイーンが王の角笛を取ろうとしてたことも、取り巻きが攻撃しようとしたことも、全てお見通しだ。
『さて、速く終わるかな!』
俺はまた〝竜の胴根〟で、クイーンを中心に取り巻きごと薙ぐ。
一回薙ぐだけでは終わらず、部屋全体に〝竜の胴根〟で何回も何回も叩き潰す。
数分間の轟音が鳴り響き、そして静まる。
目の前には、部屋全体が赤く染まり、数々の肉片が散らばっている。
角笛も破壊され、このフロアに残っているのは俺の根だけだった。
ちょっとやり過ぎたかな――なんて思ったけど、魔物だから人の危害になるかもしれないからな、大丈夫だと思いたい。
俺対ゴブリン――勝者は、俺だ。
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