18.まずはちびちびゴブのリンから
『特訓だーーーッ!!』
《……頭、冷やしましたよね?》
『あたぼうよ! 弱いままなんて許されない!』
弱肉強食の世界では、〝弱い〟というのは罪だ。
というか、今までがぬるすぎたんだよ。平和な森で、過酷な転生前を忘れるほどボケて……。
生き残るには、戦うしかないっていうのにな。
――戦う。
それがどれだけ難しいのか、パンピーの俺にはまだ分からない。
だが、習い事と同じだ。
最初は全く出来なくても、続けていくと徐々に上達し、できる幅が増えていく。だが、俺はそれを当たり前だとは思わない。
やればできる?
そんなの、天才の考えることだ。
俺みたいな、突出した才能のない凡人には――
『凡人には、延々と続けることしか、能がないんだよ』
まずは、勝てる相手からだ。
思いつく限り、最初に戦う弱いやつは――〝ゴブリン〟辺りだな。
流石に、迷宮は早すぎる。アガストスで嫌になるほど洗礼を浴びせられたしな。
『この近くにゴブリンっている?』
《ヴァルデリン森林の近くにゴブリンの集落が存在します。突撃しますか?》
『勿論! 根一本で突撃じゃーーーッ!!』
……と言ってみたものの、内心、ちょっとだけビビっていたのだった。
《ゴブリンの集落――鬼族の中でも最下位に位置する種[小鬼]が成す集落です。貴方様が仮称する『ヴァルゴブ集落』の規模は極めて小さく、小鬼が六、七体程度です。私は、ここが特訓の初期段階に最適だと推測します》
――ログさんの説明を聞き流しながら、根の『魔力感知』でゴブリンを探す。
現時点で、収穫なし。
『ログさん、本当にここにいるんだよね……?』
――と、疑問を口にする。
だって、無理ないだろ。
なんせ、今いるところは〝集落〟というより、ただ単に草原が広がっていただけだから。
魔物もいない。
人影すらも無い。
痕跡も見つからない。
一体どういうことだ?
狩りにでも出かけてるのか?
そう思った瞬間、生い茂った草陰から、何かが飛び出した――
「グギャギャギャギャグギュギュギュギューー!!!」
何かが叫ぶと同時に、根が傷つく。
『うお! ゴブリン……!?』
イメージ通り、緑色の肌に尖った耳と鼻。そして――超頭悪そうな顔!
『初戦闘……! もう逃げない。やってやる!』
――根だけど。
戦闘は人型でやりたかった――など夢見ていたが、今となっては仕方がない。
やるだけやるしかないのだ。
『さあて、一体どんな動き方を――』
「グググルルギャギャギャギャ!!!!」
――ゴブリンAが、仲間を呼んだ――
そんな、ゲーム音声が聞こえた気がした。
思い切り忘れていた。弱い魔物の特権! 仲間を呼ぶ!! いや別にいいけど。
というか、ゲームっぽい要素もあったなんて……いや、弱いなら群れるのは当たり前か。
ゴブリンAが斧を振り回し、呼ばれたゴブリンBとCが仲間を呼び、弓で狙い撃ちしやがる。
対して、俺は根一本。
大した動きもできずに、攻撃をモロに喰らいまくる。
『ぐわああぁぁ!! 痛くないけどうざいすぎる……!』
落ち着け――落ち着け!
考えるんだ。このゴブリン達の動きを観察しろ。弱点を、隙を……見つけろ!
――ゴブリンAが斧を振るとき、タメがデカい。
そこに気づいた。
力をため、振り下ろそうとするその瞬間を突く。
そう考えてた所、丁度ゴブリンAが斧を振ろうとする。
『しめた! 喰らえ、〝根一本突〟――!』
根をうねらせ、ゴブリンAへと直撃――当たらなかった。
ロケットのように突っ込む根を、ゴブリンCが矢で邪魔して、狙いが外れたからだ。
ゴブリンAも狙われてたのに気づいたらしく、一目散に逃げ去っていった。
《――優先順位の判断がまだ甘いですね》
『チィ! さきに弓からやるべきだったか! お陰で逃げられちまった……!』
一旦撤退すべきか……?
《一度情報を整理したほうがやりやすいと考えます》
『なるほど。それじゃ撤退! 根よ引っ込め――』
負けたとは思わない。
次に勝つための一歩なんだ。
そう思いながら、俺は根を戻した。
◆◆◆◆◆◆
『さて、情報をまとめるか』
ゴブリンA――斧から狙ったけど、遠距離攻撃のゴブリンCに邪魔されたんだよなー。
しかも、ゴブリンBのせいで敵の数も多くなったし……。
『やっぱ人型になりたい……』
やっぱり、人の形だと自由度が違うんだな――
俺の願望を他所に、ログさんの音声が響く。
《対ゴブリンで得られた戦術をまとめます。
・優先順位は、最初は〝援軍を呼ぶ者〟。その次は〝遠距離攻撃の者〟。最後に〝それ以外〟を狙う。
・攻撃のタメが多いなら、その攻撃で囮にできる。
・一瞬の判断が大事。迷えば即被弾。
このくらいでしょうか》
『――よし、次は絶対に順番間違えない』
遠距離と仲間呼びは面倒だから先。
ゴブリンは弓から、弓から……。
思わず、根をヴァルゴブ集落の方へ伸ばしてしまう。
『……そろそろ再戦したいな』
《まだ一時間も経ってませんよ?》
『覚えている間にやっておきたいの。勉強と同じだよ、反復が大事』
《――了解致しました。貴方様が望むのならば、ゴブリンと再戦しましょう》
ログさんが許可を出してくれたので、俺はすぐさま根を伸ばす。
そうして、ゴブリン共にやり返しをしに行く――!
シャアーーーッ! カチコミじゃ――ッ!!
どうしてこんなにも昂っているかって?
決まってんだろ、やっと倒したからだよ! ゴブリンを!
どういう経緯でそうなったのか、事の顛末からお教えしよう……。
『シャアーーーッ!! カチコミじゃーー!!』
ゴブリンの集落に到着!! 出てこい小鬼共!!
俺の叫びで、無数のゴブリンが反応する。
もう、アルファベットでは数え切れないほどの量。
数字で数えても三桁は優に超えるレベルだ。
――だが、それでいい。
『だからこそ、俺はもっと成長できるんだ』
ログさんにゴブリンの種類の計測を念じる。
《計測結果:
・素手十五人
・近接武器持ち三十一人
・遠距離武器持ち九人です》
よし……。情報通りに……やってやるぜ!
根を震わせて、弓を持つゴブリンを確認する。
積年の恨み――晴らしてやるぜ!!
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