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骸骨パラダイス!  作者: 春野セイ


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足早にその場を去る。


 主犯格のアイラがいない。


「アイラにばれていたのかな」

「いや、ここにあの二人が来ていたと言うことは、俺の話を信じているって証拠だ。妹と彼氏が連れ去られたんだ。あの女はこれからは全部、一人でやらなくちゃいけない。すぐにボロが出るさ」


 そうだろうか。

 滝本アイラのずる賢そうな顔を思い出すだけで、気持ちが悪くなってきた。


「さあ、これで終わった。あっという間だったな」


 ランがそう言って、先程まで二人が座っていたベンチの方へ歩き始めた時だった。うわあああああっと女の雄たけびが聞こえてきたかと思うと、テアシをすり抜けて俺とランの方へ、アイラが手を振り上げて走り込んできた。


「う、うわあああっ」


 俺はあまりに驚いて尻餅をついた。ランは手で顔を覆った。


「この嘘つきっ。だましたなっ。この野郎っ」


 アイラが訳の分からないことをわめいて、ランに向かって手を振り下ろしている。

 形相は、化粧は剥がれ落ち、髪は乱れ、サンダルは片方脱げていた。


「おばさん……」


 テアシが怯えながら後ずさりした。

 すると、どこからか駅員が数人駆け寄ってきて、ランに向かって手を振り下ろすアイラを羽交い絞めにしようとした。

 しかし彼女のどこにそんな力があるのか、駅員たちを振り払うと、うわあああああっと叫んで裸足のまま、改札を飛び越えてホームに向かって階段を駆け上がって行った。

 俺とランはその後を追いかけた。

 その時、ざわざわしているホームにアナウンスの音が聞こえてきた。


「ただいま電車が通過します。危ないですから、白線の内側にお下がりください。電車が通過します。危ないですから、白線の内側にお下がりください」


 アナウンスが流れる中、アイラが髪をなびかせ白線を飛び越え、ふわっと線路に向かって飛んだ。まるでスローモーションのようにゆっくりで、時が止まっているのかのように見えた。


 鳴り響くアナウンスの音とすさまじい警笛音が鳴り続けたまま特急列車がホームを通過した。

 大勢の人の悲鳴が上がり、俺はその場に立ち尽くした。ランも立ち止まっている。


「な、何が起きたの……」


 後から追いかけてきたテアシが俺の隣にいて腰にしがみついていた。

 ホームでは、気を失いかける人、嘔吐しそうにしゃがみ込んでいる人、悲鳴を上げ続ける人と蜂の巣を突いたかのような大騒ぎになり、気が付けば長い特急列車の最後尾の車両が目の前で止まった。


 俺はテアシを抱きかかえ、ランと一緒にその場を離れた。

 冷静でいたつもりだったが、気が付けば階段を下りてすぐの改札口のそばに立っていた。

 俺たちはすぐには話をすることができなかった。

 

「ねえ……、アイラおばさん、死んじゃったの? 死んだんだよね?」


 テアシが静かに言った。

 目の前を歩く人間がスマホから目を離して、何かあったのか? と階段の上の方を見上げた。そして、誰に言うでもなくひとりごとを呟いてそのまま去った。

 何も知らない人たちは、自分のことで忙しく目的地へと歩いて行く。

 すると、頭上からアナウンスが聞こえてきた。


「ただいま、○○番線で飛び込み事故が発生しました。このため、列車が緊急停車し運転を見合わせております。運転時刻などは詳しい情報が入り次第、社内放送にてお知らせいたします。本日は列車が遅れます事お詫びいたします」


 一瞬立ち止まった人々が顔を歪ませ、嘘だろ……とか、マジか、参ったなあ、また? と不快そうに言って、その場を去って行った。



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