鼻で笑った。
このままじゃ、胸クソ悪いんだよな……。
ランの声に俺はハッとした。
表情が分からないが、ランは怒っていた。
「何か、何か手はないかな。この子だけでも助けたい」
俺は頭を押さえた。考えろ。何か思いつけ。
すると、ランが突然、庭の方へずかずかと歩き出した。俺は慌ててその後を追った。
庭では三人がまだ100万のことで言い争っていた。
ランが、アイラの元へ行き、後ろから蹴りを入れた。しかし蹴りはスカッとアイラを素通りする。
アイラがキョトンとした。
「何よ、こいつ」
「何よじゃねえ、その100万は元はといえば俺たちの金だ。横取りしやがって」
「はあ? 何言ってんの、この死人が。てめえはもう死んでんだよっ。骨だけに何ができるっ」
「おい、アイラ、お前、本当に狂ってんじゃねえか、どこに向かってしゃべってんだよっ」
セイラの彼氏が薄気味悪そうにアイラに言った。
「ポンコツが余計な事言ってんじゃねえよ」
ポンコツポンコツと言われて、男がムッとした顔をする。
「てめえ、いつもいつも俺たちを顎で使いやがって何様のつもりだ? てめえはそんなに偉いのかよっ」
「あたしがいなけりゃあんたら、おにぎり一つも買えないじゃないか、能無しは黙ってろ」
「アイラ、あたしのヒデになんてこと言うのよ。大体、あんたがレイラを殺したから、こんなことになってんじゃん。レイラは人気があって一番いい年頃だったのにさ。15歳まで育てんのだって金がかかんだよ。だからこの100万はあたしらのだからね」
「へ、クズが。米の炊き方も知らねえくせにふざけたこと言ってんじゃねえよっ」
「やめてくれ……」
俺はこの場にテアシがいなくてよかったと心から思った。
静かに見ていたランがふううっと肩を大きく上下させた。
「やっぱり、こいつら許せねえ……」
ぶつぶつ呟きながら、おい、と低い声を出した。
「その100万を二倍にする方法を知りたくないか?」
言い争っていたアイラが口を閉じる。
「え?」
「俺はその手のプロだ。失敗して殺されちまったが、一億くらい稼いだかなあ」
「一億……」
ごくっとアイラが唾をのむ。そばにいたセイラの彼氏がアイラの肩を掴んだ。
「おい、アイラっ、無視すんなっ」
「黙っててっ。今、大事な話してんのよっ」
アイラが叫ぶとセイラの彼氏が押し黙った。
ランは声を潜めると、内緒話をするようにアイラに囁いた。
「俺たちは組織で動いている。そのため、いざとなった時、グループが即座に解散できるよう暗号ツールがあるんだ。その暗号を教えてやるぜ。今から言う番号に電話すれば、コインロッカーに預けてある俺の逃走用資金200万が手に入るぜ」
「200万……」
「え? 200万って何? なんの話?」
セイラの彼氏がアイラに詰め寄る。
「黙ってて」
「言うぞ。メモしろよ」
アイラが慌ててスマホを取り出した。
「080〇51〇9〇2〇。この番号に電話をして、『アラバレ』とひとこと言えばいい。そうすれば組織は解散する。解散してしまえば、その100万を探しているやつらも解散する。金の流れはこうだ。電話を受けた人物が金をコインロッカーへ預けに来る。コインロッカーに預けられる期間は3日間だ。電話したら3日以内に取りに行け、でないと中身は廃棄されてしまうぜ。場所は〇〇駅にあるキヨスクの隣にあるコインロッカーだ。そのコインロッカーの上にテープで鍵を張り付けてあるから、その鍵でコインロッカーを開けるといい。中に金が用意される。200万だ」
必死でスマホに数字を打ち込んでいたアイラが顔を上げた。
目が据わっている。
「……なんで、そんなことを教えてくれるの? 何を企んでるの?」
「何も。ただな、子どもを食い物にするのはやめろ。教えた代わりに子どもは置いていけ」
ランの言葉はアイラに届いたのだろうか、彼女は無表情だった。そして、ふんっと鼻で笑った。




