あら、仲間が増えた。
「俺の仕事はまずシナリオを書いて、それを受け子に指示をする。今回のターゲットは、はっきり言ってかなりチョロかった。銀行員のふりをして電話したら、ころっと騙されてくれてな」
ランが呆れたように息を吐く。
「自分のために貯めておいた葬式代100万を株に投資すれば倍にしてやると言うと、簡単に騙されて受け子に100万渡した。金を受け取ったまではよかったが、俺のアパートに持ってこさせる予定だったが、アパートでボヤ騒ぎが起きてな、たばこの不始末だ。それで、消防が来ていたんだ。そこで急遽、俺は受け子に100万を1日預かっておくように指示を出した。すると、あいつ、名前を確か……ナガヤマ……永山平志朗と言ったな。永山が祖父のところへ持って行っちまった」
ランの口調がイラついたものに変わる。
「俺が知ったのは翌日だ。すぐに永山の祖父の家に向かったが、永山はおらず、じじいだけが残っていた。100万はどうしたかと聞いたら、金は婆さんに返したとか言い出したので、指を一本もらって脅したが、それでも金の場所を吐かない。死体が増えるのは厄介だったが、俺はちょうどこの時、余裕がなくてな。ボヤ騒ぎで苛々していたし、闇バイトの若いのがいたから数人で爺さんから100万のありかを聞き出そうとした。それでも爺さんは絶対に口を割らなかった。孫を呼び出して脅そうとしたが、バイトの一人がうっかり爺さんを殺しちまった。それで仕方なく、海へ投げ捨てた」
俺は気が付けば、ランに飛びかかっていた。
「なんでそんなことができるんだっ。あんたは人じゃないのか? 同じ人間じゃないのかっ」
「同じだよ。俺らも人間だったよ」
「どうしてっ、スカおじは殺されなきゃいけなかったんだっ」
「さあな、殺人てのはそういうものじゃないか? 俺が思うに、みんなタテとヨコで繋がっていて、その結果じゃないか?」
意味の分からない理屈を言われて、俺はランが服を着ていたならそれをつかんで思い切り殴ってやりたかった。
だが、今はもうそれすらもできない。
俺はランから離れると、首を振って冷静になろうと息を吐きだした。
今できることをしなきゃいけない。
「……それで、スカおじの家はどこにある」
「ついて来い」
ランがそう言って歩き出した。
「歩いて行ける距離なのか?」
「まさか、電車に乗るか、バスでも……。とにかく急ごう」
ランが走り出す。
この方向は駅に向かっているようだった。どうやらランもこの辺りの地理に詳しいようだ。
駅の構内に飛び込み、階段を駆け上がる。電車がホームへ入って来て、俺たちはすぐ乗り込んだ。
昼間だからか人は少なかった。3つ駅を通り越して電車を下りた。
そこは〇〇駅と書かれた場所で、改札を出てすぐにランが走り出した。
「家は駅の近くだ。木造の古い一軒家に住んでいるはずだ」
ランは悪い奴だが、彼しか頼れる人はいなかった。
俺ははぐれないように走った。10分ほどだろうか。コンクリートの塀が見えてきた。塀の内側には大きな木が植わっていて、一軒の古い家の前で止まった。
『永山』という表札を見て、ここがスカおじの家と知る。
二人で中へ入った。
完全に不法侵入者だ。玄関の開き戸が開けっぱなしだった。
三和土には靴が脱いであった。見覚えのあるサンダルが二足。それを見ただけでぞわっと鳥肌が立ちそうになる。そして、かかとを踏みつぶした男物のスニーカー。
俺とランが玄関を上がって中へ入ると、和室はまるで泥棒が入ったかのような惨状だった。箪笥の中身が全部出されて足の踏み場もない。
「滝本セイラがやったんだろうか……」
俺が呆然とすると、ランが首を振った。
「いや違う。俺たちがやった」
はあ……。やっぱりランは悪い奴だ。
俺はすぐにテアシを探した。もしかしたらスカおじがいるような気がした。
平屋建てなので二階はない。
和室、リビング、そして、奥に寝室があるようだ。
荒らされた和室を出て、リビングに行く。そちらもひどい有様だった。ここも誰もいない。
残りは奥の寝室だ。俺とランがそちらに行くと人の話し声がした。
俺はギクッとして足を止めた。ランはためらわずに襖を通り抜ける。
「やめてよおっ」
テアシの声だ。
泣いているように思えた。俺は部屋に飛び込んだ。
複数の人がいた。
スカおじ、テアシ、そして、滝本セイラとアイラ。それから、畳の上に小さな女の子がいて、その子の肩をセイラの彼氏が踏みつけていた。
俺はカッとなって男にタックルした。
「ウキンっ」
テアシが叫んだ。
「あら? 仲間が増えた」
アイラが笑った。




