現実なのかゲームの世界なのか。
「それ、貸してくれ」
テアシのスマホを借りようとすると、彼女はそれを自分の胸に引き寄せた。
「ダメ。あたしが先」
「ま、そうだよな」
テアシはスマホの電源を入れるためスイッチを押した。
暗い教室内にスマホの画面だけが光る。
電源の入ったスマホの光は目を覆いたくなるほどまぶしく感じた。
テアシも少し顔を背けて画面を見た。
上手に指先を使って検索をかけていく。
俺はそれを見ながら、こうやってやるのか、と感心していた。
黙って画面を見ていたテアシが呟いた。
「これ……。おじさんの死因だ」
「どれどれ?」
俺は検索内容を覗き込んだ。
「こんな風に書かれているのか」
――海岸に一部白骨化した男性と思われる遺体を発見。
○○県○○町の海岸で一部白骨化した高齢と見られる男性の遺体が見つかった。
警察によると遺体は70代から90代の男性で身長165センチくらい、体のほとんどが白骨化していた。
黒のフリース、黒いズボンを身につけており、左手の薬指の第二関節から欠損していた。
警察は身元の判定を進めるとともに事件と事故、自殺を視野に調べている――
フフフと俺は笑っていた。
テアシが不気味そうに俺を見た。
「何がおかしいのよ」
「いや……。ぶっちゃけ無理じゃないか。これだけの情報で自分が何者かを探せって?」
ただのスマホニュースじゃねえか、と思うと脱力した。
ああ。それで生きている人間を一人だけ呼び出せるっていうルールがあるのか、と思いつく。
「その呼び出す人間ってのはどうやって探すんだ?」
「電話の連絡先に入ってるの。ほら」
テアシが丁寧に教えてくれる。
確かに連絡先にはびっしりと名前が書かれている。
この膨大な連絡先の中からたった一人を選ぶのか。
俺は眉をひそめた(あればだけど)。
「どうやっておじさんはこの中の一人を選んだんだ?」
テアシは俺の質問を全く無視して答えた。
「おじさんの呼び出した人間は来なかった。おじさんはまだ学校内にいるのかもしれない……」
「あっそ……」
もう無視されるのも慣れっこさ。
「あたしたち一週間待ってた。おじさんは怯えていたよ。だってそうだよね。指が欠損って書いてあるでしょ。もしかしたら普通の人じゃないかもって言っていたし、自分は殺されたかもしれないって呟いていた」
「おいおい、このニュースってのは、おじさんの事で間違いないのか」
「だから、そう言ってるじゃない。あたしの死因はおじさんが成仏したら出てくるんだと思う……」
「じゃあ、俺は……」
「あんたはあたしの後。順番だから」
俺は一瞬、言葉を失った。
だったら俺の問題は一体いつ片付くんだ。
あ、でも、もう死んでいるから別に焦る必要ないか。
スマホの仕組みが少し分かったところで、俺は気を取りなおして話を戻した。
「なあ、このニュース記事を見ても、何も思い出せないのか? ここに県名と町名があるけど……」
「このニュースはあたしのことじゃないから分からないけど。おじさんはビクビクしていたよ。呼び出した相手は絶対に知り合いだって言ってた」
「えっ? それは分かるのか?」
「分かるみたい。おじさんは早くここから出たいって言ってた。あたしたち学校中歩き回ったよ。学校内からはどこからも出ることはできない」
「ふうん……」
俺は正直言って、この教室から出てみたいと思っていた。
じっとしているのは性分に合わない。




