教室を出る。
「なあ、いったん外へ行こうぜ」
「どこへ行くの?」
「とりあえずこの教室から外へ出たい」
「分かった……」
「そのスマホは絶対に、テアシの情報を検索することはできないんだな」
「できない……。たぶん、おじさんの問題が解決しないと、この情報しか出てこないから。おじさんはもしかしたら別の場所に移動したのかもしれない」
「テアシを置いて? 黙って?」
「うん……」
「俺、まだこの世界の仕組みがよく分かってないんだけどさ、パートナーって言ったよな。三人以上になったりするのか?」
「え?」
「だってさ、おじさんの問題が解決していないのに、俺が現れた。ていう事は、三人以上のパートナーもありって事になるだろ」
「分からない。あたしも目を覚ましてから、十日くらいしか経っていないから……」
最初の勢いはどこへいったのか、テアシはずい分しおらしくなってしまった。
「まあ、俺たち死んでっからさ、心配すること何もないと思うけど」
「うん……」
教室を出てみると、廊下はさらにひどい有様だった。
両脇の土壁は剥がれ落ち、木の廊下はところどころ穴が開いていて足を踏み入れたら絶対に怪我をする。
まあ、俺は骸骨だから肉はないけど。
時々ネズミの死骸やゴミが散乱していたり、教室から放りだされた椅子や机もあった。
「それにしてもこの学校はひどいな。廃校になってどれくらいだ? いや、それよりもここは何県だ?」
「……」
テアシは前を歩いている。
長い廊下はずっと続いていた。
外は真っ暗で夜だということは分かる。
季節はいつだろう。
静かだ。
肉がついていないので、寒いのか暑いのかも分からない。
すると、少し行ったところに小さな明かりが見えた。
教室から明かりが漏れている。
「テアシ、誰かいるぞ」
「おじさんの呼び出した相手かもしれない」
テアシが走り出した。
そんな偶然があるか?
俺はそう思いながらも慌てて追いかけた。
テアシは明かりのついている教室の前に来ると、室内には入らずにしゃがみ込んで入り口からそっと中を覗き込んだ。
と言ってもドアは崩れていて、教室と廊下の境界はあってないようなものなのだが……。
漏れている明かりは懐中電灯の光だった。
教室の真ん中に置いてある机に懐中電灯を置いて、男がスマホを睨んで立っていた。
スマホの画面がぽうっと不気味に光っている。
男は無地の半そでのポロシャツに灰色のズボン。生地は少し薄いと見た。
季節は初夏だろうか。
男の年齢は30代くらいか。
はっきりは分からない。
男は挙動不審で、少しでも音がするとびくっとしていた。
よくまあ、こんなところに一人で来られるものだと俺は感心した。
廃墟になった学校へ懐中電灯一つで来るか?
誰か知り合いを誘って一緒に来ようとか思わないのだろうか。
「なあ、俺たちの姿って見えるのかな」
「視える人と視えない人がいる」
テアシが答えた。
ということは、テアシはこれまでに人と接したことがあるのだ。
しかし、ただ隠れて見ているだけでは面白くないので、俺はそっと教室の中に入った。
そして、うっかりとガラスを踏んでしまった。
男がぴくっとして、スマホから目を離した。
今ので何か感じたのか?
「爺ちゃん……。爺ちゃんなのか? お、俺を呼び出したのは……」
シーンとした教室内に男の声が響いた。




