言うのが遅くなってごめん。
今、マナベはなんて言った?
息せき駆けてきたマナベはよほど急いでいたらしく、玄関に入るなりしゃがみ込んだ。
ゼイゼイと言いながら額の汗を拭った。
「マナベ、金ちゃんがいないってどういうことだっ」
「おい、ウキン、この男は俺たちが見えているのか?」
ランが驚いている。
「ああ、そうだ。彼はマナベ。俺たちの姿が見える唯一の人間だ」
「ウキン、この骸骨は?」
「ああ、えっとこの骸骨はランて言うんだ」
「テアシは?」
「テアシはもう、ここにはいない……」
「えっ」
俺は胸騒ぎがして、胸が張り裂けそうなほど苦しかった(心臓があったなら……)。
するとマナベが突然、ああっ、クソっと頭を抱えた。
「マナベ、大丈夫か? 金ちゃんがいないって……」
「もしかしたら……。二人がいなくなったのは偶然じゃないかもしれない……」
マナベは顔を上げると俺の両肩をつかんだ。
「ウキン、今すぐここから出ようっ」
「あ、ああ……。で、でも、もし成仏したら……。もう、テアシに会えない……」
いざ、出ようとしていたのに、直前になって躊躇した。
マナベは俺の気持ちを察したのか、大丈夫だから、と言った。
「今すぐ成仏はしない、たぶん」
「でも、シラトリたちはいなくなったって……」
「二人はここを出た時、あたりをキョロキョロし始めて、見覚えがある気がするって言ったんだ。そして、別々にいなくなった。だから、少しずつ記憶が戻り、どこかへ向かったんじゃないかと俺は思った。その後は知らない。もしかしたらその後で、二人は成仏したのかもしれないけど……」
「なんでもっと早くそのことを言わないんだ。それが分かっていれば、テアシだって」
「言えなかったんだっ」
マナベが苦しそうに言った。
「テアシはあまりにかわいそうだったからっ。記憶が戻らない方がいいと思ったんだ。俺もすごく悩んだ。どうしていいか分からなくて言い出せなかった」
「テアシに何があったんだよっ」
「二人とも少し落ち着こう」
ランが言って、俺とマナベは息を止めた。
「あ、ああ……。ごめん」
ランの言うとおりだ。落ち着こう。
マナベを見ると、彼はさらに汗をかいてしんどそうに見えた。
「おい、大丈夫か?」
「……黙っていてごめん。とにかく、テアシの親は、あの毒親はヤバイんだ。あの二人の周りではたくさんの人が行方不明になってる」
「行方不明……。金ちゃんに何があった。金ちゃんは危ないのか?」
マナベに確認すると、彼は首を振った。
「分からない。金ちゃんがあの二人と連絡先を交換しているのを見て不安だった。あの二人は……、あいつらは……。噂だけど……。自分の娘にウリをさせているって聞いたことがある」
「……は?」
聞き間違いじゃないだろうか。
俺は一瞬言葉を失った後、ぐっと手を握りしめた。
「……マナベ、今の話は本当なのか?」
「言うのが遅くなって……。本当にごめん」
マナベの気持ちを理解しなきゃ。
俺はふうっと大きく息を吐く。
しかし自分の不甲斐なさに怒りが治まらなかった。




