↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
骸骨パラダイス!  作者: 春野セイ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
34/54

生きている時

 

 ランの顔を見ても表情がないので、気持ちなどさっぱり分からない。


「俺の本名は知っているのか?」

「名前までは分からない。俺が知っているのは、ランはあそこで殺された。それだけだ」

「誰が俺を殺したんだ……」

「それは分からない」

「本当か?」

「本当に知らない。俺はその時も骸骨なんだから。あんたらが勝手にこの学校へやって来て、勝手にケンカを始めてランは殺された。そして、外の渡り廊下から放り投げられた」

「……」


 ランが黙り込んでいる。

 沈黙が怖かった。


「何を考えている?」

「別に……。ムカつくとか、俺を殺した奴に復讐したいとかそんな気持ちはない。ああ、そうか……っていうくらいかな」


 フッとランは、鼻があれば笑った気がした。

 骸骨の表情は全く読めないので、ランの本心など理解できない。

 俺は話を進めた。


「警察が来た時、ここにいた何体かの骸骨が彼らに憑りついて出て行った」

「は? 憑りつく?」

「うん。ここから出る方法は、人に憑依できたら外へ出られるんだ。外へ出た後のことは知らない。出たことがないから」

「ふうん……。なら、どうしてウキンは出て行かなかったんだ?」

「テアシが出て行かなかったから……」

「テアシと言うのがあんたの相棒か」

「ああ。彼女は15歳だった」

「女の子か。まさか、その子とできてたんじゃ……」

「そんなわけないだろ」


 小説の読みすぎだ、と俺は首を振った。


「分かんねえぜ、あんたいい人そうだからな。その子に気に入られそうだ」

「ハハっ」


 俺は笑いながら、苦しい気持ちがした。

 そのテアシがもういないんだよ。


「えっと、どこまで話したかな。ランが殺されて発見された。その発見時の状況によって、ここに現れるかどうかの基準になる。ここにいる骸骨はおそらく、ニュースで取り上げられた白骨化遺体だ。これは間違いないと思う。幽霊もいるけど、あれはちょっと別だ」

「え? 幽霊いんの?」

「いるけど……」

「こ、こええな」

「何もしないよ」

「そうなのか……?」


 どうやらランは少しビビりなのかもしれない。生きている時はそんな感じじゃなかったが。


「話が逸れた。それで、発見時、白骨化していた遺体がここで目覚める」

「面白い。興味深い話だ」


 ランがクックと笑った。


「そのスマホをもう一度見せてくれ」

「うん」


『○月○日午後20時頃、○○県○○市○○町にある廃校となった建物で肝試しに来ていた若者二人が血のついた包丁を発見し、警察に通報しました。

 県警察が小学校を調べたところ、小学校から離れた山の斜面に一部白骨化した遺体が発見され、事故と事件を視野にいれて遺体の身元の特定を急いでいます。

 遺体の年齢や性別は分からないものの成人と見られ、上下黒のスーツに黒の皮靴を履いていました。現場の建物は山の中にあり、築100年の小学校で30年以上前から廃校になっていました。

 なお、廃校など無断で立ち入ることは大変危険であり、軽犯罪違法の疑いで書類送検されるケースもあります。興味本位で立ち入らないよう警察は呼びかけています』


 ランはこれをじっくり見た後、俺を見た。


「何も知らなかったらそのまま流されてしまうような、面白みのない事件だな」

「そう、かな……」

「ああ。これが俺なんだろ?」

「うん……」


 俺は答えながら内心ひやひやしていた。

 いろいろ質問されたらどう答えたらいいだろう。だが、ランは何も聞かなかった。


「それで後はこのスマホで、ランの知り合いの関係者に連絡を取ることができる」

「なにっ?」


 ランがびっくりした声を上げる。


「なんだよそれ、面白い話じゃないかっ」


 いや、だから。

 ランの関係者だから、メッセージ送った後が怖い、と俺は思った。


「すぐに呼び出そうぜ」

「わ、分かった」


 ためらいがないところがすごい。

 テアシと違うな。


 俺はスマホをタッチしてアプリを起動させる。相手の番号が出てきた。

 なんて入れよう。


「相手は誰か分からないのか」

「分からない。男か女かすら」

「そうか……。じゃあ、今までの奴らはどうやっていた?」

「とにかくここへ来てくれって頼んでいた」


 ランはスマホをじっくり見つめながら、ここの住所は分かるのか……と呟いた。


「そうか……。俺が殺された殺人事件が起きてるんだから、それで釣って呼び出せばいいんだ」

「そうだな、興味を持ってくれた奴なら必ず来るね」

「ラッキーだな。ていうか、俺、包丁で殺されたんだよな……」


 ああ。背骨が折れるほどにな、と言う言葉を呑み込む。

 ランはちょっとここで考えを改めたようだった。


「何だか怖くなってきた。俺は誰かに恨まれて殺されたんだろ。あんたはそれを間近で見ていた」

「ああ、うん……」

「俺を殺した奴は、どんな奴だった?」

「あ、ああ。若い男だったよ」

「若い男……。俺、何をしたんだ?」

「さ、さあな……」


 知り過ぎているのも厄介だと思う。もう、この話から別の話に逸らしたい。

 けれど、ここにいる連中で普通に死んだ奴なんていない気がする。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。