マナベが見ていた。
テアシの話を引き継いで話そうとすると、心臓はないがさらに気分が重くなった。
「俺は焦った。スーツ男と孫が外へ出てしまったら、スカおじはもう外へ出られなくなるかもしれない。だから、そいつの背中に憑りつけと言ったんだ。スカおじは俺の言うとおりにした」
「ええっ。じゃあ、その死体を引きずっている時に背中に張り付いたんすか?」
「うん……」
「うげ……」
「それで? それで、どうなったんだ?」
「そいつは外に繋がる渡り廊下に出るとすぐに、スーツの男を茂みに放り捨てた。そして、そのまま二人は渡り廊下から外へ出て行った。その後、車の音がしたから、たぶん車で逃げたんじゃないだろうか」
「それで終わり?」
金ちゃんが言う。
「ああ」
俺が頷くと、マナベは考えるように口元を押さえていた。
「100万……。スカおじは100万はどこにあるか知っていた?」
「いや……。スーツの男はスカおじの家をくまなく探したが、100万は家にはなかったって言っていた。それで、指だけじゃすまねーぞって……。脅してたな」
「指だけじゃすまない……。スカおじの死因、分かる?」
「あ、ああ……」
俺は必死で思い出そうとした。
スカおじは、どこで見つかったっけ。俺に目玉はないが、目を閉じたつもりで思い出そうとした。そして、思い出した。
「海岸……一部白骨化した遺体が海岸に打ち上げられていた」
「海岸で発見。と言うことは、もしかしたら、海に投げ込まれたのかな……」
「おそらくな……」
とんでもないことをする連中だ。
「スカおじが孫を呼び出した日付とか分かるか?」
「……ん?」
「あ、俺たちが拘留されていたのは2日間。で、ウキンたちと出会ったのは4日前。そして、その事件が起きたのはさらにその2日前だということは……。スカおじたちが孫に連絡を取ったのはいつなのか、孫はいつここに来たのか。スカおじが海に投げ込まれた日とオレオレ詐欺の事件が起きた曜日など、少しでも細かく日時が分かった方がいいと思って……」
確かにそうだ。
「俺が目覚めた時、テアシがこう言っていたな。毎日メッセージを送ったけど、相手は来なかった。一週間待ったけど来なかったと言ってたよな」
テアシが小さく頷く。マナベがメモに取り、ぶつぶつ呟く。
「一週間待っていた……。遺体が白骨化するには時間がかかる。でも海岸に打ち上げられていたから、発見はたぶん早かった。けれど、事件性はなく、大きなニュースにはなっていない……。ありがとう。これだけ情報が集まれば、少し調べられると思う。日にちなんかも計算してみるよ」
マナベがホッとしたように言ってノートを閉じた。
金ちゃんたちが黙り込むと、セイラが呟いた。
「ひとりごとは終わり?」
「あ、はい、すみません」
「いいけど。なんだかテレビドラマみたいなお話ね」
セイラは椅子の上であぐらをかいている。
そうすると、きわどいところが見えそうで、俺は見てはいけないと思いつつ、チラチラ見てしまいそうになる欲望と戦った。
「はあ……。とんだ無駄足だったわね」
セイラが両腕を伸ばしながら言った。アイラが首を振る。
「でも、ここにはレイラがいないって分かったから、来てよかったのよ」
結局、2人には何も伝えることはできなかった。セイラたちはあくびをして、退屈そうな顔をしている。
「はあ、そうね。ユーチューバーさんに会えたからよかったわね。ねえ、連絡先を教えて。フォロワーになってあげる」
セイラがマナベに迫った。
「ああ……。はい、ありがとうございます」
マナベは丁寧に頭を下げた。
セイラは自分のスマホを出した。
「動画配信に興味があるってのは本気よ」
「はい」
「あたしたちもやってみたいの」
セイラが熱心に言う。
マナベはちょっと困った顔のままでスマホを取り出そうとはしなかった。
金ちゃんが自分のスマホを出すと、俺で良かったら交換しますよ、と言った。
セイラが嬉しそうに交換する。アイラも連絡先を交換していた。
それらがすむと二人は椅子から立ち上がった。
「じゃあ、あたしたち帰るわね」
「あっ」
俺は2人を呼び止めようとした。
しかし2人には俺たちが見えないし、テアシは家族が目の前にいるのに動こうとしない。
「テアシ、いいのか? 行っちゃうぞ」
「いい」
テアシは一言、そう言った。
セイラは形のよいヒップを振りながら去り、アイラはその後ろに従った。
行ってしまった。
俺は大きく息を吐いた。
マナベは考えに没頭している。
「ウキン」
「ん?」
気づいたらマナベがこちらを見ていた。




