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骸骨パラダイス!  作者: 春野セイ


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なぜ、忘れていた。

 

 俺たちは今、教室のテーブルを四つくっ付けて椅子に座っていた。

 マナベと金ちゃんに頼み、二人と座って話がしたいと頼んだのだ。


 二人はマナベの意見を受け入れてくれて、椅子に座ると茶色のスカートの女性が持ってきたレジ袋を机に乗せた。

 中身はサンドイッチで、レイラに食べさせてあげようと思ったらしかった。


 死んでいることを知っているはずなので、お供え物のつもりだったのだろう。

 それを机に広げて四人は、一人一つずつサンドイッチをほおばった。

 サンドイッチの種類は卵とハムサンドだった。

 4人とも朝から食べていないらしく、一切れずつをゆっくり味わっていた。


 俺は、自己紹介をしてもらうよう、金ちゃんたちにお願いした。

 キャミソールの胸のでかい女性がテアシの母で、滝本《たきもと》聖良《せいら》。

 そして、茶色のスカートが、妹の滝本《たきもと》愛良《あいら》と名乗った。


 セイラとアイラ、そしてレイラ。

 完全に家族だな。


 テアシは何を考えているのだろう。

 見たところ、完全に殻に閉じこもっていると思われた。


 サンドイッチを食べ終えたセイラが言った。


「ねえあたしたちには視えないけど、そこにレイラがいるの?」

「はい。います」


 マナベが答えた。

 骸骨になっていますが、とは言わなかった。

 レイラがいると聞いて、二人の様子が豹変した。

 母親のセイラが目を見開いて、教室内をキョロキョロし始めた。


「どこにいるの? 視えないわよ」


 俺とテアシの方も何度か見たが、視線が合わないので、セイラは全く視えないようだった。


「テアシ、お母さんに話しかけてみろよ」


 俺が言うとテアシはビクッとして、おっ、お母さん……? と小さい声で言った。

 しかしセイラは全くの無反応だった。


 一方こちらはアイラだったか。

 アイラは不気味なほど、ジッとしていて金ちゃんとマナベを交互に見ている。


「本当にいるの? 嘘じゃないの?」


 金ちゃんとマナベは顔を見合わせて頷いた。


「います。だって、俺たち2人……、いや、4人のおかげでユーチューバーとしてほんの少し目立つことができたんで」

「は? ユーチューバー?」


 それを聞いたアイラの顔つきが変わる。


「やらせじゃないのっ」


 アイラが急に怒り出した。突然の事で俺たちは唖然とした。


「姉さん、やっぱり嘘だわ。インチキよ。サンドイッチ代返してよっ」


 アイラは興奮しやすいタイプなのだろうか。

 まずいな、せっかく来てくれたのに、怒らせたくない。

 まだ2人をここにとどめておいて、話を聞き出す方法を考えなくては。


 俺は一生懸命、今はない脳みそをフル稼働させた。


「アイラ、ちょっと待って」


 テアシの母、セイラが妹をなだめるように言った。


「あなたたちユーチューバーって言ったわね。それってお金になるの? お金になるんだったら、あたしたちにもそのやり方を教えてくれない?」

「えっと……」


 金ちゃんたちが困っている。

 この状況はどうしたらいいのか。


 そもそも金ちゃんたちはここへ何をしに来たんだ?

 ここで4人が鉢合わせしなければ、ややこしいことにはならなかったのに。いや、それでは俺たちの存在が分からない。

 そうだ。セイラにスマホで話しかけてみようか。


 俺がまだ考えている最中にテアシが俺の腕をグイグイ引っ張った。


「どうした? テアシ」

「この人たち本当にあたしのお母さん? なんかすっごい派手な人だよね」

「そうだな。確かに派手だ」

「あ、すみません」


 突然、マナベが声を出す。いっせいにみんながマナベを見た。


「あのちょっと……。俺の話を先にさせてもらってもいいですか? 探り合ってるだけじゃ先に進まないので」

「……いいわよ」


 アイラがちょっと怖い顔で言った。


「セイラさんとアイラさんとお呼びしたので、いいですかね。俺たちこれから奇妙で理解しがたい話をするんでびっくりすると思いますが、できれば静かに見ていてもらえますか?」

「降霊術ってやつね?」


 いきなりセイラが自信を持って言った。


「幽霊を誰かに乗り移らせて話すってやつでしょ。知ってるわよ、それくらい」


 自信満々にセイラが大きな胸をゆっさゆっさと揺らした。

 俺は思わず目を逸らした。

 目に毒なんだよなー。何か羽織ってくんねーかなー、と俺は思った。


 マナベはちょっと嫌そうな顔でセイラを見て、めんどくさそうに頷いた。


「まあ、そんな感じです」

「……いいわよ」


 アイラがむっつり答えた。


「じゃあ。ウキンっ」

「お、おう」


 いきなり名指しかよ。


「俺たち、スカおじの孫が殺したっていう殺人事件を追おうと思うんだ」

「……は?」


 俺は顔(ないけど)をしかめた。


「あの教室で起きたことを話してくれないか? この前の動画配信の後、ものすごい反響があって。あの血は誰のだとか、あの包丁はどうしてあそこにあったのかとか、質問の嵐だ。あの包丁がどうしてあそこにあるのかなんて、俺たちだって聞きたいくらいだ。この間、聞いた話はちゃんと警察へ届けたよ。どこまで信用してくれたか分からないけど……。でも、俺たちも真相を知りたい。だから教えてくれ」


 そうだ。そうだった。

 なぜ忘れていた。まだ外にはあの死体がそのまま残っているのに。


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