15歳の少女
紙とペンがあればいいのだが、あいにく物には触れない。
俺は考えるのが好きなのだろう。
思いついたことを言ってみるが、テアシは右から左なのか、自分のことなのに俺の推理をスルーして適当に相槌を打つだけだった。
正直いって、あんまり面白くないぞ。
翌日も同じだった。
俺はその日も独自の推理を展開していったが、テアシが興味を失っているので、俺の脳内だけで物語を展開させて楽しんでいた。
テアシはあまり考えることをしない子だった。
何を聞いても、考えることもせず分かんないと答えた。
15歳の少女とはこんなものかなと首を傾げる。
あれきりテアシのお母さんからは連絡がなかった。俺は一日一回だけ、メッセージを送り続けた。
急ぎません。でも、本当にレイラはここにいるんです。待っていますと送り続けた。
これじゃ、スカおじと同じだなと思った。
数日たってスマホを見ると、朝早くにメッセージが入っていた。
俺はそれを見て手が震えた。
「テアシ! お母さん来るって。今からそっちへ行くねって書いてるぞ」
俺は思わず叫んでいた。
当然、テアシの表情はさっぱりだった。
その時、車のエンジン音が外から聞こえてきて、俺とテアシはびくっとした。
「え? え? もう来たの? 早くない?」
俺はスマホのメッセージを見てうろたえていた。
だって早すぎるじゃないか。心の準備が。
テアシのお母さんに会うのかと思うと、今までにないくらい胸が(略)……。
しかし、エンジン音が切られてから、 ドンドンっと階段を激しく駆け上がってくる音に、俺とテアシは気づけば抱き合っていた。
「ウキンっ」
三年一組の教室に駆け込んできたのは、金ちゃんとマナベだった。
「ひ、久しぶりだな……」
脅かすなよ、と俺は思わず胸を撫で下ろしていた。
「どうしたんだよ。二人とも血相を変えて」
「た、たた、大変なことになっちゃって」
そして、二人はまくしたてるように言った。
あの動画が炎上して閲覧数がヤバイことになっている。しかも、自分たちは今日の朝まで警察に拘留させられ、事情聴取を受けていたという。
ま、当然の結果だろうな、と俺は思う。
「ここに警察が来るのか? 信じてくれたのか?」
「いや、警察は半信半疑だった。でも、廃校に入ったことはメチャメチャ怒られて、やっと解放されたんだ」
マナベが必死で説明した。
捕まっていた理由はそっちか、とまた胸を撫で下ろした。
「それは災難だったな。で、シラトリたちは?」
「あの二人はこの学校を出た途端にどっかへ行っちゃった。消えたんだ」
「消えた? 成仏したのかな」
「さあ、分かんないけど、でも……」
その時、
「ねええ……、誰かいるのお?」
と教室の外から女性の声がして、廊下をゆっくりと歩いてくる音がした。俺たちはハッとした。
金ちゃんとマナベがびくっとしてどこかへ隠れようとした。
「あっ。だ、だ、誰? まさか警察?」
「……いや、違うと思う」
俺が答えた。
廊下をぎしぎし言わせながら慎重に歩いてくる。三年一組の入り口からにゅうっと顔だけ覗き込んだ。
「わっ」
金ちゃんがマナベに抱き着いた。
「あ、あらっ」
入り口に立っていたのは、30代くらいのかなり美人の女性たちだった。
しかし、装いが派手じゃないか?
その女性はキャミソールに短パンと露出がすごい。張りのある桃みたいな胸をしていて、わざと見せつけているのか、と勘違いしそうになる。
女性はもう一人いて、キャミソールの女性とは真逆でとても地味だった。よく見ると二人の顔はよく似ていた。
キャミソールの女性の髪は長く茶髪で背中に垂らしている。もう一人は黒髪で一つにくくっていた。
黒髪の女性は服装も地味だった。くすんだ青色のTシャツに膝くらいまである茶色のスカートを穿いていた。
茶色のスカートの女性は手にレジ袋を持っていて、動くたびにガサガサ音が鳴った。
それにしても、キャミソールの女性の短パンは短すぎないだろうか。20代の女の子が穿いていそうだ。
よほど体に自信があるのだろう、とじっくり観察してからハッとした。
この二人の女性のうち一人はテアシの母親なのだ。
うっかりいかがわしい目で見てしまっていた。すぐに反省する。
「すまん、テアシ……」
テアシは、は? 何が? と冷たく言い返した。
キャミソールと茶色のスカートの女性たちが、金ちゃんとマナベを見て教室の中へ入ってきた。
二人ともサンダルなので、あ、ガラスとかに気を付けて、と俺は無意識に言っていた。だが、どうも俺の姿も声も届いていないようだった。
金ちゃんが代わりに言ってくれた。
「あ、その辺危ないすよ」
「ありがと」
キャミソールの女性は肩をすくめて、流し目で金ちゃんを見た。
「ねえ、あなたなの? 私たちにふざけたメッセージを送ってきたのは」
「は? 何の事すか」
金ちゃんがキョトンとした。




