テアシの死因
スカおじからスマホを受け取ったのは俺だった。
骸骨同士なら、このスマホは自由に移動できるらしい。
俺が最初に目を覚ました時、テアシがスマホを持っていた。
しばらく過ごして感じたのだが、スカおじの事やこの骸骨たちの仕組みについて、テアシの言うことはイマイチあてにならないと感じていた。あまり考えずに、思ったことをそのまま口にしているようだった。
俺は手に持っているスマホのメッセージを開いた。
電話番号で文章が送ることができるSMSだ。
相手の連絡先が出てくる。送り先は一人の番号しかない。
なんて入れようか。
メッセージ画面は不思議なことに住所だけが記載されていた。
「これは……ここの住所か」
俺はいろいろ考えながら、テアシの気持ちになって、相手をビビらせない言葉を選んだ。
「こんにちは。わたしはタキモトレイラです。訳があって連絡をさせて頂きました。このメッセージが届いたら連絡をください。わたしはここにいます」
そして、最後にここの住所、と。
これ、どう思う? と作った文章を読んで聞かせてみたが、テアシの反応はイマイチだった。たぶんあんまり、分かっていないのだろう。
送信っと。
ピコンと音が鳴り送信される。
送り先の番号は間違っていないようで、既読はつかないが送信はできた。
俺はスマホを切った。
画面が真っ暗になる。後は待つだけだ。
今日は二日目の夜だ。
虫のこえが聞こえる。そして、夜行性の鳥たちが時々啼いて、タヌキか小動物が歩いているのか、パキパキという音がする。
静かだった。
外に出て夜空でも眺めることができたら最高なんだが。
テアシが俺にもたれかかってくる。
何もすることがない。
感覚はないが、時間は過ぎているのだろう。
目を閉じようにも眼球がないのだから。はたから見たら滑稽だろうな。
骸骨二体が壁にもたれて。
このまま何もなかったら、朽ちていくのかな……。
その時、ピコンとスマホが光った。
「あ……」
俺はドキドキ(以下略)したはずであろうときめきを感じそうになった。
「へ、返事がっ……返事がきたぞ!」
思わず興奮して叫んでいた。
スマホの画面をタッチしてSMSを開く。
『レイラちゃん……? レイラちゃんなの?』
女だ。相手は女の人だ。
「テアシ、女の人から返事が来た。なんて返そう。そうだな、は、はい! レイラです」
簡単なメッセージを送る。
すぐに既読になり、それからたっぷり時間が経ってから返信が来た。
『からかっているのよね。だって、レイラちゃんは五年前にもう亡くなっているのよ。こんなふざけた嘘をつくなんて、あなたは一体誰なの?』
この相手は話し言葉でメッセージを返すんだな。俺たちと一緒だと思いながら返信する。
「ふざけてなんていません。訳があってレイラなんです」
『ふざけているとしか思えない。だって、だってレイラは、わたしの娘は……』
娘? 娘って書いている。
「おい、テアシ、お前のお母さんだって」
「お母さん?」
テアシが反応した。
そんな事ってあるのか? いや、もっとやり取りして、うまく情報を聞き出そう。
「ここに来てください。急ぎません。ずっと待っているから。レイラはここで待っているからっ」
俺は代弁しながら、ちょっと恥ずかしかった。何かのドラマみたいだな。
「待ってる」と入れてから返信がこなくなった。
まずかったかな、ちょっと熱がこもり過ぎただろうか。
肉体があれば脇汗がひどかったろう。俺は、額の(肉はないけど)汗を拭うふりをした。
テアシがジーっと穴が開くぞと言いたくなるほど、俺を見ていた。
「……なんか楽しそうだね」
「え? そ、そうか?」
「うん。お母さん、なんて?」
「さあ、分からんけど……。相手を信じるしかないな。それにもし、来てくれても俺たちの姿は見えないかもしれないけどな……」
そうだ。金ちゃんたちが特別すぎて勘違いするところだった。
ほとんどの人には俺たちは見えないのだ。
それから返信を待ったが、俺が熱意を込めて「待ってる」と入れたのを最後に返事がなかった。
俺が間違っていたのか。
あんなこと、書かなきゃよかった……と少しセンチな気持ちになっていると、テアシがぽんぽんと俺の肩を叩いて励ましてくれた。
「急ぐことないよ。別にこのままでもいいんだからさ」
まだ、そんなことを言っているのか。
仕方ない。テアシには、テアシの考えがあるのだ。
それを尊重しないと。自分の気持ちを押し付けるのは良くない。
それからその日はのんびりと過ごし、二人でテアシの死因について、少し推理してみた。




