俺より小柄に見える骸骨
「あんた今あたしに話しかけた?」
こっちを向いた骸骨から声がした。
女⁉
女だ。声は若い。可愛い女の子ってこんな声なんじゃないか? たぶん。
「ああそうだ。俺が話しかけた。あんた名前は?」
「あんた名前は? って初めて会った人に失礼ね、あんた」
確かにそうかも。
俺は妙に納得してしまった。
「それは悪かったな。謝るよ」
俺が素直に謝るとおそらく女であろう骸骨は微動だにしなかった。
表情が分からないので表現に困る。
「あのさ、教えて欲しいんだが、ここはどこだ? 学校みたいだが」
「はあ……。あたしはあんたが起きるのを待ってた」
質問を全く無視して女の骸骨が言った。
俺が起きるのを待っていた? こいつは何かを知っているのか。
「あんたが頭の軽い奴でよかった。ふつーの人はキャーとか、うわあとか、パニックになって泣き叫ぶんだけど、あんたは肝が据わってんのね」
「へえー」
どうやら俺は褒められているようだ。
「そうだ。あ、き、君の名前は? あんたって呼ぶと怒るしさ」
「あたしは……。思い出せないの。あんたこそ自分の名前が分かる?」
「俺? 分からん……」
「あたしは十日くらい前かな……ここで目が覚めたの。あんたはあたしのパートナーだから、これからよろしくね」
「君は女で合ってるんだよな?」
「さあね。あんたが男かどうかも怪しいわよね。あたしが女かどうかもあたしは知らない」
どうなってんだこりゃ。俺たちにアイデンティティはねえのか?
「そうか。じゃあ、これからそれを探っていけばいいな。分かった。よろしく頼む」
「……」
俺が手を差し出すと、女の骸骨はおずおずと手を伸ばして俺のごつごつした手を握った。
「あっ」
二人同時に声が出た。
「ハハハハ……」
俺は小さく笑っていた。
二人の手は重なることはなく、通り抜けてしまったからだ。
「すり抜けたな」
「……そうね」
俺は気を取り直すように女の骸骨に話しかけた。
「ま、いいや。とりあえずお互いの名前を決めようぜ」




