ここ、出るんすよ。
気になること、すなわち。
あの孫とここを出て行ったスカおじはどうしているだろう、という事実だ。
あの現場はスカおじの孫が、殺人を犯してしまった場所だ。
今思うとあれは夢だったのじゃないかとすら思えてくる。
あれから、殺された奴の仲間が来た様子もないし、警察も来ない。まるで時は止まったままのような気もしてくる。
俺は喉まで出かかっている言葉を何度も呑み込んだ。
きっと、床の血痕と人を刺した包丁が出てくるはずだ。
二人のリアクションを想像すると、動画としては最高の取れ高が得られるだろう。
これが明るみになれば、絶対に警察は無視することはできない。
というか、通報しないわけにいかない。いや、それよりも、あの遺体はどうなったのだろう……。
「ウキン……。ウキン!」
名前を呼ばれてハッとした。
テアシが俺の肩を揺すっている。気づけば自分の考えに没頭していたようだ。
「あたし、疲れちゃった」
「あ、ああ」
疲れるはずはないのだが。
「とにかく! 自然体がいいと思う」
スズメのテンションがどんどん上がっているように感じた。
その反面、シラトリは静かだった。
「動画を見る人の気持ちになって考えてみよう。まず、どうしてこの場所に来たのか、その説明は欲しい。そもそもどうして二人はこの学校に?」
「ああ、それはっすね。ここ、出るんすよ」
「えっ」
俺にもたれかかっていたテアシが、びくんっと体を震わせて飛び起きた。
「有名なんすよ。出るスポットで」
「じゃあ、そのまま伝えろ。間違ってもピースなんかしちゃだめだぞ」
朝の理科室で骨格標本の前でピースサインは確かにまずかった。
しょっぱなから黒歴史を作った金ちゃんは照れくさそうに頭を掻いていた。というか、みんなツッコもうよ。
俺たちと出会っている時点でもう出ているんじゃないの?
俺たち一体なんなの?
自分たちの存在をなんと呼べばいいのか。
それをあえて無視しているのは、もしかして現実を見ようとしていない者たちの集まりなのか。
みんな、話を進めていく。
「セリフを考えておけよ。視聴者は本物が見たいんだ。今夜は幽霊が出るスポットに来ています。いや、頭で考えちゃだめだな。自然体だ。やらせっぽくなるのはまずい」
スズメがぶつぶつ呟く。
ある意味、半分やらせに近いが、あの教室で何が起こるかはまだ分からない。
俺は、ニコニコしている金ちゃんとマナベを少々複雑な気持ちで見つめていた。




