マナベの頼みごと
金ちゃんが目を覚ました時、俺たちは彼から離れた場所にいてその様子をそっと見ていた。
というのは、金ちゃんが気を失っている間に、マナベが俺たちに頼みごとをしてきたからだった。
なんとマナベは、骸骨を背中に乗せて逃げている間に、驚くことを考えていたのである。
彼らがさっき撮っていたのは、やっぱりユーチューブ動画配信で、その動画配信に本物の骸骨である俺たちに出演して欲しいと頼んできたのだ。
話を聞いた時は耳を疑ったが、シラトリたちは冷静で、いいよ、と承諾した。
それから、シラトリは俺たちを撮る代わりに取引があると言った。
その取引というのが、お前たちに取り憑かせてくれたら、動画に出てやると条件だった。
シラトリの要求を聞いて、マナベは一瞬言葉を失っていたが、黙っている間、いろんなことを巡らせていたのだろう。
分かりました。構いません、いくらでも憑いてくださいと言った。
それから、金ちゃんが目を覚ましたら説得するから、骸骨の皆さんは少し離れてくださいと言われて、俺たちは呼び出されるまで少し離れた黒板の前に立って待つことにした。
やり取りを全く知らない金ちゃんが目を覚ます。
マナベは優しく包み込むように金ちゃんに話しかけた。
「金ちゃん、大丈夫? 頭とか打ってない?」
「うん……。大丈夫だけど、あれ? え、夢?」
「夢じゃないよ。現実だ」
その言葉に金ちゃんは、ぶるるっと身震いした。
「ど、どこに行ったんだ、あ、あの……」
「金ちゃん落ち着いて、俺、あの骸骨の皆さんと取引をしたんだ」
「と、取引っ?」
「うん。俺ね、彼らにユーチューブ動画に出てもらいたくて、お願いしたんだ。そうしたら、出演してくれる代わりに、俺たちに取り憑かせてくれって言われたから、オッケーした」
言い方!
こいつ説得下手だな、と俺は見ていて思った。
「マナベがいいなら、俺はいいけど……」
いいのかよ! と一人でツッコミを入れる。
「ほら、あそこに骸骨が四体立っているだろ」
マナベが俺たちの方へ顔を向ける。
金ちゃんはゆっくりとこちらをちらりと見て、サッと目を逸らした。そして、もう一度ちらっと見て黙り込む。
「分かった。マナベを信じるよ」
金ちゃんの言葉にシラトリが動いた。
「話はついたみたいだな」
シラトリを先頭に俺たちは、マナベたちの方へ近寄って行った。
金ちゃんはまだ慣れていないようで、びくびくしている。
「金ちゃん、大丈夫だよ。骸骨さんたちいい人だから」
なぜ、そう言い切れるのか分からなかったが、俺は友好の印として手を伸ばした。
「初めまして、金ちゃん。俺、ウキン。よろしく」
「よろしく……っす」
金ちゃんは素直な若者らしい。
俺の手を握ろうとしてスカッと空振りしていた。
誰もツッコまず、マナベが言った。
「じゃあ、さっそく俺たちの動画を見てもらおう」
俺たちは六人掛けのテーブルに座った。
マナベが自身のスマホを机の端っこに置いてユーチューブ画面を開いた。
テアシは動画を見慣れていないようで、一番近い場所で食い入るように見ている。
「ふわあああああ。何これ、テレビじゃないんだ。素人がやってんの? 全然、面白くないだけど」
初めて見るユーチューブが、二人の動画であったが、率直な意見が聞けて良かったと俺は思う。
シラトリともう一人の骸骨は黙って見ていたが、俺はあることに気づいた。
「あっ」
俺が声を上げたので、みんなが驚いてこちらを見た。
マナベが動画を止めて、全員が俺の方を見た。
「どうたんですか?」
「俺とシラトリ、そして、あんた、えっと……」
「スズメです」
やっぱりこいつも適当に名前を付けている。
「途中で止めちゃって悪い。あのさ、俺ら三人、似すぎていて区別がつかなくないか?」
「確かにそうですね」
そう言ったのはマナベだ。
人数が増えたので、誰がしゃべっているか混乱してくる。
「俺らって骸骨だから、黙っていたら誰が誰だか区別がつかないだろ。動画を撮る前に、身体的特徴を調べといた方がいいと思うんだ」
俺は真面目に提案した。




