7.
ややと咳払いを済ませ、やっぱりとはにかむコーデリア。
ノエルは子どもたちに語りかける。
「八大妖精様方に我々は守護を受けている。私達が魔法を行使できるのも、それぞれの場所での安全が担保されていることもその御加護によるものなのだ」
うむうむと頷くノアと、知ってる〜と素直そうに表情に現れているコリン。イーブはじっと父の顔を見つめているようだ。
「とにかくね、凄いお方なのよ」
コーデリアの優しい伝え方にも、イーブの意思は堅いらしく揺るがない。
「……まあ、家はみんな頑固だ。きっと大丈夫だろう」
ぱちくりとイーブのまつ毛が上下した。
「それで〜?とくに言いたいことは無い感じ?」
こてんと頭を傾けるマリアーナ。
誰も言葉を発さずに、数秒が経過する。
「少し邪気が大きくなっているわね、わずかに」
思案顔のイレーナは話を切り出した。
「でも、わずかでしょ〜」
ハイリンヒは、ゆるり指で林檎を一欠片__口に放り込む。
「__少し、早いかも」
とレノアは話す。
「今回のはしゃあないだろ……早いだけだー」
ヴィルヘルムは冷静な顔で赤い短髪の横、眉尻の横を指の背で掻く。
「そうですね。警戒は怠らずで良いのでは__」
「そうね」
ナイトハルト、マリアーナと話は続いて__
「そうねじゃないわよ姫ちゃん〜‼︎」
ミレイユが声を上げる。
「え?」
マリアーナはほんのりと声が上擦った。
「甘く見ないでほしいわ」
ばっちと二柱の目が合う。
「貴女__いい出会いをしたらしいじゃない!教えてちょうだい!」
やわやわと握られる、顎の下に位置する彼女の二つの拳。
…………流石に早いわね。
金色のややと細めた瞳の眼光に捉えられた。
「あ〜」
集まる七つの視線。どうしたもんかと宙に目を逸らす。__ううんと咳払いでもおこして違う話をしちゃおうか。
「いましなきゃだめ〜?」
ハーフのお団子や三つ編みと飾った頭をこてんと傾けてみる。下方の髪はさらさらと肩を撫でた。
「いいよ、代わりにこの後付き合わせてもらうけれどね」
ぴかぴかと熙る彼女には難しいかと、しぶしぶ諦観し、話し始める。
「この間、ストラウド家の子達が会いにきてくれたのだけれど、好きな子がいてね。まあそれだけの話よ」
恥ずかしそうに声がややと上擦り、後半は早口になりつつあった。
「ふ〜ん狂瀾だって聞いたのに……」
さすがにそんなことは、なかったわよねぇ……?
狂瀾……?とその場の大妖精は頭をまわす。瞬きほどの時間で、なにかが思い当たったようで、「あー」と誰かの誰に言うでもない小さな響かない声がする。
皆の浮かぶ想像を受け、妖精姫はややと不服そうだ。
「姫ちゃーん、もっと教えてくれてもいいじゃーん」
こちらも不満そうだ。
「ミレイユ。また今度ね」
温かい日の揺れる木の葉の音のように、静かに温かい声で発せられる。
「はーい」
とミレイユは素直に返事をした。
ややすると静かにしゃんとして妖精姫は喋り出した。
「__私だって……逢いたいし、機会があれば……機会が…………」
どんどん自信がなくなり、寂しそうになってゆく。
「兎に角!自慢するから!」
自分にも言い聞かせているようだが、自慢したいのも本当のようで、つまりは皆にも合わせるよと云うことであった。本人の許可なしに話もせずに約束を取り付けることはとてもできない。だが、自慢したいことも、合わせたいことも、この場の者を大切に思っていることも本当のことなのだ。
「うん!待ってるよ姫ちゃん」
心の底から嬉しそうに、ミレイユは笑顔を見せる。




