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3.
妖精の愛し子か。ノエルは帰りの馬車で、思考を巡らせる。
妖精の愛し子は妖精に好かれやすく、妖精の姿が見える者のことを言う。その者によって、力の程度に差があるらしいが、イーブのは……。
「ステイシー様が見えるのなら、そういうこと、よね」
「聞こえていたか」
「貴女、考え込むときは声に出るでしょう」
安んじる場所では、ぶつぶつと言っている時があるらしい。
「君しかいないじゃないか」
「そういうことではありません。ノエル」
がたがたと揺れる車内で、コーデリアはノエルに手を重ねる。
凛とした彼女の瞳が揺れていた。ノエルは目を合わせ、
「大丈夫だ、コーデリア。大丈夫だ」
ゆっくりとしっかりと、コーデリアは耳を傾ける。
「大丈夫。なんとかする」
「ふふ、心配ですね。一緒に、ですよ」
「ああ、二人なら私達なら、なんだってできる」
「ふふふ、なんです、世界でも救う気ですか?本の中の英雄みたく」
ちゃめっけのある言い方だ。
「ああ、君はいつも私の英雄で、道標だ」
「共に歩みたいと、いつも言っているでしょう?」
もう忘れたのですかと顔に書いてある。
「それは、難しい提案だ。君には、私がついていくのだよ」
「もう、話になりませんね」
コーデリアは呆れたように言う。
険悪とにこやかを混ぜた朗らかな時間、は長く続く__。




