2.
次の日になり、再び場は用意された。口を閉ざす妖精姫と二つの堅い視線は、逸れずに結ばれる。
「姫様ご説明を」
口を開いたのはコーデリアだった。
「……えぇ、もちろん。それより……」
「イーブは連れてきておりませんよ」
「……はい」
準備は万端らしい……。
「せ、制御ができなかったの。抑えられなかった。私は……悪いことをしたとは思っていない。いえ、思えない。これは妖精の性。いやでしょうねぇ。こんなふうに我が子をとられるなど。__まぁいいわ。現実的な話をしましょう」
しおらしくて、露悪的で、その目はこちらを射抜く。妖精と対等に会話などできもしないのに。
「イーブ・ストラウドが欲しいわ。彼が嫌がるのならば、私はあくまで彼を好ましく思う者。ただそれだけよ。……勝手に契約を施したのは……でも、彼が拒めばこんな」
あの契約は、妖精側の一存だけでは決まるはずはないと言いたいのだろうが、妖精姫の力ならば、弱い抵抗など無意味に終わる。とはいえ、イーブに抵抗の意思が見られなかったのも確かだ。のちに確認してもそれは見られなかった。
「えぇ、わかっているわ」
ステイシーが声をかけたようで、妖精姫は落ち着きを見せた。
「それで、どうする?」
ありもしない選択肢を用意されているような強さだが、聞いてくれるだけでも人間に寄り添っている。妖精姫は人間も好きらしいのは関わってきてこれでもかと感じる。故に他の妖精と関わるときに注意がいるのだが、相手によって対応を変えるのはなにも妖精相手だけの話ではない。人間の専売特許ともいえる。だからなにも変わらない。
「姫様、ご提案嬉しゅうございます。ですが、こちらとしても愛しき我が子をよいそれと渡しはいたしませんのよ」
「…………」
「姫様。イーブ、息子に聞くことはもちろんですが、選択の時は待っていただきたく思います」
「‥‥というと?」
「……イーブは人間として生まれてきました。その時間を、ということもあります。ですが、息子が選択できる、しっかりと選べる歳まで待っていただきたいのです」
「あとでいやだと言われて、困るのは姫様もではありませんか?」
ノエルは言い過ぎを心配しているが、コーデリアは間違っていないという確信をもっていた。
「…………そうね。認めるわ。間違っていない。なら、それで詰めましょうか」
両の手を重ねて斜めにする妖精姫。場の雰囲気は一変し、緊張の糸は切れるのだった。
なるほど、なるほど。うんうん、それでいこう。うん。
イーブ・ストラウド
五歳、妖精姫の加護を受けし、お気に入り。
二十歳になったときを、選択の時とする。
妖精の愛し子
「妖精の愛し子……」
ノエルは考え込み、コーデリアは驚きが少し顔に出ている。
「ステイシーのことも見えていたようだし、気にした方がいいかもしれないわねー。とはいえ!私が印をつけてあるし!他の子につけられのは大方避けられるわよ。たぶん」
妖精は自由なため、妖精姫も自信がなさげだった。




