8.
「ひ、久しぶり……ね」
妖精姫は声が上擦りそうなくらい緊張していた。
「はい。お久しぶりです。妖精姫さま」
一言一言を丁寧に発する声は非常に可愛らしく、とても練習したのではないかという具合がまたとても……と妖精姫の心を締め付けて離さなかった。
かわいらしいとの想いは緊張を何処へやらと連れて行った。が、その想いは顔へは出さない。それは目の前の小さき身体の幼き者の勇気に、勇ましさに応えたく思ったからであった。
「久しぶりね。元気にしていた?」
質問が来る想定をしていなかったのか、少しの目が合う時間が過ぎた後「はい」との返事が帰ってきた。ぎこちなさと、慣れていないという生温いような心地は、その場を独特な空気と一体感で包む。
「この前はごめんなさいね」
イーブは妖精姫の顔を見つめている。が、返事は帰ってはこないようである。
「調子は大丈夫?具合が悪くなったりしなかったかしら」
妖精姫はいかにも自分が悪く、そして心配しているといった様態だ。
「はい!」
元気のいい返事が素晴らしいのだが、もう少し話してほしいかも……情報がほしいかもと思っていると、様子を見守っていたコーデリアがイーブを少し見た後にこちらにじっと目線を送ってきた。コーデリアのこれはそういうことだろうと思考を見てみると、『いいですか?』『姫様』『イーブに話してみても』『心配の気持ち』『姫様!』と言った具合で、少々の罪悪感とこれは彼女が適任だなと頷くこととした。
コーデリアが小さめの声で話しており、イーブもそちらに顔を向けている。
ここは任せるか〜とノエルに話しかける。
「この前は御免なさい。__仕事は順調?」
こちらにしっかりと向き合うノエルの様子が見える。
「いいえ、誰も事はありませんでしたし、息子が好かれることはとても嬉しく思いますから。__はい。仕事は順調でございます」
「__そう?面倒ではないの?種族の差というのは」
「いいえ。そのような会話をご所望とならば申しますが、このような者が我が家門__であることがこの上なく喜ばしく思います。そして、これは損得の利潤の話でもそうと考えます」
「ふふふふふ。まったく」
可愛げがない話で、私がこういった言い方を好まないと知っていて、望めばこう答えてくれる。そしてこれも本心だというのがひどく楽しいものであるのであった。
「まったく表面の、表層の可愛げのなさといったら……ふふ、ありがとう」
ノエルの堅い仏頂面が嬉しげな表情を見せた。
「__いいえ、姫様。姫様はノエルの魅力を知らないところがあるのですよ」
「ほほう」
思わず溢れたような笑みを見せていたノエルは慌てた恥ずかしそうな笑みに変わり、コーデリアに手を繋がれたイーブは不思議そうにこちらを眺めていた。
そして、しばらく話をしたあと……「それで、話はできたの?」と聞けば、「はい!姫様!」と返ってきたのはやはり可愛いらしかった。




