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9.

「えーっと、それで」などと適当なことを言い、妖精姫は話を切り出せず、イーブは妖精姫を見つめ、ノエルは様子を見ており、コーデリアは一人思った。どうして全員こういうのが下手なのだろうと。こういうのは得手不得手がちょうど良い感じになるのではないのかと、こんなに不器用が揃うことがあるのかと僅かな時間の間思ってしまったが、考えて見ればしようがないことだったと考えを鎮めたのだった。


一呼吸おいて、「イーブ、自分のことは言えますね」練習してきたでしょうと目線を向ける。どちらかといえば、邸宅では『ぼく言えますから!心配いりません!』と言った感じだったのであった。

 はっきりとした眼差しで頷く様子に、後押しするように立ち位置を調整する。二人が向かい合う様子が目に映る。すると、なんだか早い独り立ちのようでいろいろな想いが巡り、もう涙が溢れそうだった。

 隣の気配に横に顔を向け、目を見た。そして、ああ、まだ教えることは沢山ありますねと瞬きを向けた。


「姫様!」

「はい」

思わず返事をしてしまった。何を言われるのだろうかと不安も浮かばないほど、目に焼きつくことが予感される胸の高鳴りを感じている。

「ぼくは、ぼくはいま一体どういった状況なんでしょうか」


「みんな、説明してくれたのです。ですが、いまいち、でして」

弛緩してしまったなにもかもが、また可笑しかったが、つまりは私の口から説明してもほしいということだ。誰もが飛ばそうとした手順をしっかり確認しようだなんて、そうだね、それは君にしかできない。

「いいよ。しっかりとしよう」



「私達のような妖精という種族はね。気に入った相手に許可なく手を貸す、手伝うことができるの」

「きょかなく」

「そう。それが手伝われた側がどう感じるかは、場合によってわからないでしょう。だから、そういった行為が危険になるかもしれないよといった考えがあるのよ」

ここまでは大丈夫そうかと見れば、ややと頭を上下にして頷いていた。

「それがぼくと妖精姫さまのかんけいですか?」

「……ええ。細かいところは省いて、今回は」

じっと彼の双眸に見られ、しっかり話すと観念した。

「ええーっと、始めだったり、途中だったりと話す子、話さない子というふうに、その子によって違うのだけれどね。私はで、できるだけ聞くようにしていたのよ」

話しながら冷や汗が垂れるような感覚がした。

「私は寿命__が無いに等しいわ。定まった命の終わりがないの。短い子もいるのよ。といっても、貴方達と比べてしまえば、皆んな長くなってしまうでしょうけれど、ね。だから、一度の時間を私が狭めるのは楽しくないの。だから、だから__」

「__だから?」

「だから、考えていたのだけれど」

妖精姫は流れるように片手を顎から頰と持っていき、人差し指で恥ずかしそうに搔いた。逸らした目線を、またと戻す。

「止められなかったの。__私はあなたの選択に従うわ」

二人が初めてあったときのように、妖精姫は危なげに笑みを見せ、脣は弧を描く。

「どうして……どうしてぼくなのですか?」

真剣な眼差しに射とめられる。問答は背の方に壁があるように感じた。

「……好きなのよ。あなたのことが」

「ぼくたちはまだそれほどお互いをしりません」

「それは……魂が見えるよ。妖精には、だから、好きな子は感覚でも察知できるの。わかるのよ。____正直、感覚の話はお互いが違うのだから完璧に分かりあうのは難しいと思うの。だから、気になるところがあれば一つ一つ話すわ


「じゃあ、これからどうなりますか?」

「ざっくり分けるならば、三つね」

妖精姫が指を三本立てた。イーブも自分の三本の指を立て、それを見つめ「みっつ……」と声に出す。

「そう。一つ目は、私と関わらない人生。二つ目は私と共に生きる人生。最後は、永遠……と長い人生を私と歩む人生」

妖精姫は悲しげに寂しげにイーブ達の方を向いている。

「私はあなたが好きなの。私としては……と思うけれど、あなたの軌跡を狭めたくはないの」

「わかりました。まずは妖精姫さまと離れたくないです」

妖精姫は目を見開いたまま僅かに止まっていた。

「__ぼくも妖精姫さまのこと気にいっている、のですよ」

「……うん」と声を泄らし、目をそらす。

「妖精姫さま?」

「あ、なぁに?」

自分的にはやや苦しいかもしれないが、優しい雰囲気を装った。

「ぼくと契約してください!」

我儘なのは()っていて言う。

「今世だけ?」

痛ましさを抱えた、愛されたことのないような女の姿をしている者は、この世界で一番愛されているのではないかとされる妖精姫だった。

「妖精姫さま。願いごとは声に出さなければ、いけないんですよ」

眼前に迫るような錯覚を見させたその顔、表情。

 マリアーナの心に呼応するように、向かい風が吹き、彼女の下ろしている膝ほどまである白色の長髪は、後ろへと靡く。

「そうね。ほしいならば、声に出さなければ、伝えなければいけないわね」

マリアーナは胸に手を当て、心を決めた。

「イーブ・ストラウド。あなたが、あなたが欲しいの」

妖精姫マリアーナはしかとその目で捕らえた。

 

 イーブが返事をするかというところで

「お待ちください、妖精姫様。前の約束をお忘れですか」

それは毅然としたノエルの声だった。

「そうね。わかっているわよ」

イーブはきょとんとした顔でこちらを見ている。

「イーブ。あなたのご両親はあなたのことが心配なの。__父と母と居られる時間は大事よ。だから、しようがないから……これで我慢するわ〜」

妖精姫が少々と右手を上げる。空中の高い位置で横に平たい、平面に近い円が生まれ、(ひか)っている。

 それは淡くて薄い風のベールのように、イーブの頭上に(ひかり)と風を齎し、宙の小さな粒となって目には見えなくなった。

 これはなんだろうと言ったふうに、イーブが片手を上げ、もう片方の手もそれを感じようと、知ろうとしている。

「そう心配しないで。ちょっとにおさえたのだから〜……」

大分と不貞腐れているようだが、それでも嬉しそうに妖精姫は微笑んだ。

第四話の修正をご報告致します。●2026.6.1.「魔獣」→「獣達(けものたち)」に修正。

妖精姫様の髪色や髪の長さの言及を探したのですが、もしやしてませんでしたでしょうか……?

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