第一章 第四十二話 火蓋を切る Ⅰ
今回の話も2つに分けさせていただきます。
それでは本編へどうぞ!!
正午。
太陽が真上まで上がり、一日の半分が過ぎ去った。
「準備は整ったか?」
「はい。いつでも…というか始めてください!!もう…」
「収集がつきません!!」
その場にいる警備員含め、開催を今か今かと待ち望む人達。
彼らの放つ熱量は制御とは程遠い所に存在していると言ってもいい。
オープニングセレモニーは終了し、あとは開催を待つのみになってしまった闘技場全域は矢も楯もたまらずといった景色。
「お願いだから騒動なんて起こさないでよ。ましてや急に居なくなるとか言語道断だからね」
「エー ワタシモ ホカノカンキャクミタイニ ハシャギタイー」
「こんな中で飛ばれたら追えないし、一瞬で見失うのよ」
観客ひしめく観戦席でようやく腰を下ろしたヴェイエとその左腕を止まり木代わりにするカラス。
ヴェイエ自体、人の多い所はあまり好きではない。
故に億劫な気持ちになりながらもようやく一息を付けた。
そんな中でカラスを見失ったりしたらそれはもう最悪である。
「せっかく2人分…じゃなくて、1人と1匹分買ってあげたんだから大人しくして。いや…しろ」
「マァ ソレモソウカ ナラワタシハノミモノヲ!!」
2人はイルファルドと別れてから一度、メインストリートへ戻り、そこで魔具により冷たさを保ち続けるドリンクと売店で買い集めた食料の数々を手に待機する。
「ねぇ…今あのカラス喋らなかった…?」
「う…うん…私も聞こえた」
そんな後ろの席からの喋り声。
観戦目的で同じく席を確保したての2人の女性だった。
「トコロデ ヴェイエ?」
「なに?」
「サイキン ワタシガシャベッテモ ナニモキニシナクナッタナ」
「あ…」
ハクア村では絶対に人前で喋るなと言い続けたヴェイエだが、気づけばそのラインは下がるどころか消え去っている。
正確には少しずつ消えて行ったのだろう。
このようにカラスが喋っても注意の『ち』の字も出てこない程だ。
「カカカ!!コレハイイ!!シャベルゼェ!!」
「喋るな。人目を集める」
「オモイダシタシュンカンニコレダヨ ホントウニ ヒトメヲアツメタクナイノカ イササカ ギモンダ」
このようにヴェイエ達も開催を待ち望む他の観客と同じく、その時を待っている。
「選手全員…!!入場準備整ったようです!!」
「そうか!!では合図をおくれぇえええええ!!!」
その時、ようやく現場に狼煙が上がった。
全6つに別れた選手入場口。
その全てで連携が取られ、衛兵が門へと向かう。
「フルバニル様。壇上へお上がり下さい。いつでもいけます」
「そうか」
透明で透き通った声は、部下に絶対的な隷属強制した。
男の名は、フルバニル・フォッテン。
【グランゼッタ】の首長であり、【グラン・コンバット】の会長でもある。
その彼が今、中央の壇上へと上がった。
『皆!!随分と待たせたな!!』
拡声器を手に取り、闘技場内外全ての者へと問いかけた。
『そんな君らは、私がだらだらと語るのは誰も求めていないだろう!!勿論、何を求めてこの場へ訪れたか私が一番わかっている!!』
グランゼッタの音楽団が演奏を始め、空には飛竜を駆る調教師が5色の煙を巻きながらショーを始めた。
それは例年恒例の景色であり、子供は勿論既に仕事を引退したご老人に至るまで、皆が目釘付けになる圧巻のパフォーマンス。
『今日この日!!新たな戦士が生まれる!!』
【傭兵騎士ガーテイン】のような屈強な戦士を生み出す揺り篭として。
才能の原石を見つけ出す最高の現場として。
グランゼッタから新たな蕾が芽吹く。
『そんな彼らの死闘を皆で見届けようではないか!!』
『おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!』
フルバニルが腕を振り上げ、観客が大歓声がそれに答えた。
これこそが、彼等こそが、全観客の求めていた者達である。
『全選手!!入場!!!!』
バッ!!と各入場口にスポットライトが当てられた。
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皆が浮ついた心を共に妙な焦燥感を抱きながら、僕達は待機していた。
ほとんどが緊張感を表に出し、隠しきれていない。
実際…
「っ!!!!!!!!!」
僕もその1人だ。
今だって緊張のせいでビクッ!!と身体を震わしたのが証拠である。
[やっぱり…本番前になるとこうなっちゃうのかー!!!!]
心の中ではどうにか自分を落ち着かせようと必死だったが、あまり効果はない。
「全員、先程渡した魔具は身に着けたな!!」
ここへ来た時に配布されたアクセサリー基魔具。
イヤリングの形をしているが確かに魔力を感じる。
[これは結局なんなんだろう…?]
きっと【グラン・コンバット】で必要なアイテムということは、想像がつくが効果まではさっぱり。
『今日この日!!新たな戦士が生まれる!!』
それはフルバニルの言葉だった。
そして、外の盛り上がりは最高潮。
「それでは参加者の皆!!武運を祈る!!!!」
『全選手!!入場!!!!』
門の前に立っていた係りの者が勢い良くレバーを下げた。
直後、強烈な光が選手達を包み込む。
『おおおおおおおおおおおおおおおお!!!』
光であまり見えない観客の声がここまで届く。
もう始まろうとしてる。
全身の肌が引き締まのを感じる。
ここへ来て、僕の身体から焦燥感が消えていた。
覚悟が定まった。
もう後には引けない。
そのまま一歩、前へ進んだ。
「!!」
イルファルド以外の参加者はどこか観客の大歓声に圧倒され、萎縮していたのだろう。
誰よりもひ弱で戦士は勿論、冒険者にも見えない風貌の少年が歩き出し、全員が息を呑んだ。
そして、彼等も腹を括ったのだろう。
1人また1人と門を出た。
まだ青い少年に続くように進みだしたのだ。
「っ!!!」
外へ出ると歓声はより一層大きくなり、自分達が熱狂の中心にいるのだと嫌でも理解した。
【グラン・コンバット】とはこういう場所なのだ。
『出てきたぞ!!我らが希望の星々が!!』
それぞれのモニターが映し出したのは各門から出てきた選手達。
その最前列。
「へぇ…!!イルファが一番前じゃん」
「カカカ!!イイゾ~イルファ~」
「やっぱり喋るのね」
モニターに映し出されたイルファルドを見て、仲間であるヴェイエですら驚いた。
しかし、同時に納得もした。
「あいつは確かに度胸があるからな」
街の一大イベントである【グラン・コンバット】は、闘技場外でもその景色を見ることができる巨大モニターが各地点に設置されていた。
だからこそ、カインも巡回しながら見守った。
そして、同じく中継を見ていたバロンとテルミリアには別の人物が目に入る。
「あれー?まさか他の列で前貼ってるのってアリシア様じゃないか?」
「ガーク様は確か…」
深くフードを被っているが騎士団から見れば一目瞭然。
というか…
「何故…あの方は目立つ最前列にいるんだ…!!」
ガークもまた別の巡回場所で中継を見ていた。
「あんなに目立つなと…言ったのに…!!」
ガークはアリシアの昔馴染みである。
だからこそ、あまり効果はないと分かっていた。
正義感が人一倍強く、どこか鈍感で純粋な彼女は何かでやらかす。
というか、どこかで正体がバレるのは分かっていた。
だが、だとしてもいきなり目立つような最前列に立っているとは、ガークも思ってもいない事件。
「隠密での参加だと分かっているのですかね…!!アリシアは!!」
「くしゅっ!!なんか鼻がムズムズする…」
ガーク達の気持ちはいざ知らず。
今晩は何故最前列に居たのだと、お叱りを受ける事になるだろう。
しかし、前に居るのもしょうがないのだ。
[なんか皆止まってたから]
それならしょうがないね!!
だって皆は緊張していたんだから!!
進めるのはアリシアしかいない!!
そうに決まってる!!
[よし!!がんばろ!!]
ふんす!!とアリシアは気合を入れ直した。
「今年も凄い盛り上がりだこと」
ラーベは一度、観客席を見渡すと今度は他の列に居る参加者を見渡す。
[あの子…たしかリヨスが…]
特段注目していた選手ではなかったが、今ではその考えも少し変化していた。
リヨスの過去に関して少なからず知っているラーベ。
『ただ少し似てるなって思っただけさ』
選手部屋でリヨスの呟いた言葉である。
それがどこかラーベには引っかかっていた。
[お手並み拝見って所かしら?]
すると、ラーベが凝視していたという事もあり、2人は目が合った。
「っ!!」
「あら想像通り初心ね」
女性に不慣れなイルファルドは直ぐに視線を外すのだが、確かに目線は交わっており、ラーベは小悪魔のような笑みを浮かべた。
ともあれ、全6門から歩きだした選手達は中央でようやく一つになる。
ようやく皆が足を止めた。
直後、演奏も変わり、全中継が1つへと集まった。
そこは観客席よりも上。
ガラス張りになっている部屋、いわゆるスカイボックスと呼ばれる部屋である。
『そして、彼等が今【グラン・コンバット】の本戦から参加する者達である!!!』
【グラン・コンバット】特別枠の参加者。
パリィィン!!
ガラス張りの壁は中からの魔力で粉々に割れた。
本来なら大惨事。
事実、その真下の観客は叫び声を上げたが、一向にガラスの塵は落ちてこない。
「破片が宙に…!!」
イルファルドの呟き通り、ガラスの破片が未だ宙に浮いていた。
光が乱反射し、神々しく浮かんでいる。
「さぁ…行こうか」
すると、部屋から4つの影が現れた。
次の瞬間、ガラスの塵が集まり始め、一段また一段と階段が生成されてゆく。
光の反射でガラスを溶かすと瞬時に形を作り上げ、白い粉末でコーティングされる。
「おい…!!降りてくるぞ…!!」
観客の誰かがそう叫んだ。
全4名。
1人ずつ順番に階段を下りてきた。
「V!!V!!VICTORY!!!」
真っ黒なサングラスを掛け、真緑と金色のローブを羽織る誰が見てもチャラいと感じる男。
腰には金色のベルトを身に着け、全10本の指にはそれぞれ派手な指輪を嵌めている。
「チャンピオンが来たぜ!!!」
【ヴィクラー・ヴィクロリー】
魔力総量 聖域
【一級冒険者】
二つ名
【踊闘家】
「あああああ!!熱いのは嫌なのに!!汗で化粧が崩れるじゃない!!」
世は彼女の化粧を見て同じ言葉を言うのだろう。
厚化粧だと。
白塗りの肌は、【飛天の国】の歌舞伎を想起させる。
「もっとファンデーションを…いや口紅?いやいやアイシャドー?」
【ルルルマ・マキアージュ】
魔力総量 爵域
【一級メイクアーティスト】
「ガアアアアアアアアアア!!!」
全観客、全視聴者が困惑した。
何故か?
見た目が完全に獣なのだ!!!
「グラアアアアアアアアアア!!!!!!」
【アイオン・ラッド】
魔力総量 聖域
【一級冒険者】
二つ名
【獅子男】
『きたああああああああああ!!!』
待っていたと言わんばかりの絶叫が闘技場を支配した。
今大会最高峰の魔力にして、伝説の英雄。
彼が一歩階段を下りる度、声援が上がり、文句なしの一番人気。
「やぁやぁやぁ!!皆も暑い中ありがとー!!」
ただファンサービスをするだけだと言わんばかりに、誰よりも余裕があり、実際に彼こそが全選手で最強だと皆が理解している。
【リヨス・アルヴァー】
魔力総量 王域
【英雄級冒険者】
二つ名
【光の御子】
『よくぞ!!【グラン・コンバット】へ参加した!!改めてフルバニル・フォッテンである!!』
全選手がフルバニルの前に集まり、いよいよ開会式が始まった。
『今年も215名もの選手が参加してくれたことに感謝する!!そして…肝に銘じてほしい!!』
声を張り上げながら荒々しく叫んだ。
『この【グラン・コンバット】は、参加者それぞれの手で名声も勝利も掴み取れる!!例え敵が圧倒的強者であっても勝利すればそれは塗り替わる!!己の手で這い上がれる!!』
この場に居る皆がリヨス達、特別枠と戦い勝利する権利を持ち合わせている。
無論、勝利することができるかはその者の腕前次第にはなるのだが。
『実力の差を埋めよ!!そして勝利を掴め!!』
例年、最終順位TOP4は、特別枠でほとんどが埋まるのが恒例となっているが、一般枠で上位に食い込む猛者が生まれるのも事実。
だからこそ彼ら戦士は、この場に名を残し名声を求め集まる。
『ともあれ、この場に居る9割以上が脱落することになる、予選がこの後に控えている。まずはその説明と行こうか』
フルバニルが空を指すとそこには一つの魔力モニターが現れ、上空から見たグランゼッタが映っていた。
『今年の予選フィールドはここ…【グランゼッタ】の地下だ!!』
直後画面は切り替わりその地下の映像へと切り替わった。
『ゲーム名は【旗探し】!!』
それは良くも悪くもシンプルなゲーム。
子供の遊びの一種である。
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最後まで読んでいただきありがとうございます。
それでは謝罪です。
今回は投稿が遅くなり申し訳ございませんでした。
リアルの予定管理が出来ていない自分の落ち度です。
今月の上旬から下旬初めまで少々忙しく、更新が遅れるかもしれません。
なるべく早く投稿できるよう頑張りますので、お待ちいただければ幸いです。
次回は、今回の続き。
途中まで書いた結果、急遽分けさせていただきました。
今回より早く投稿できるように致します。
誤字、脱字など気兼ねなくご報告ください。
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それでは失礼!!




