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神無き世界  作者: ヤング丸
第一章 広がる世界
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第一章 第四十一話 目覚め


「開始時刻まで、まだまだ余裕があります!!」


 闘技場(コロシアム)は、観戦者の入場を始めていた。


 普段は戦に興味のない一般人や冒険者志望の若者達、既に現役を引退しながら戦場に夢を置いてきた老兵。


「なので!!」


 ともすれば、人数とそれに伴う人口密度は見る見るうちに膨れ上がる。

 未だ会場内に入り切れていない観客を見れば、更に膨れ上がることは容易に想像がつく。


「ゆっくりとお進みくださぁあああああああい!!!」


 メープル色の制服を身に纏う従業員は、各通路の数m(メルト)置きに配置されているというのに彼らの声は、観客の熱気を前にまるで届かない。


『現在、各通路大変込み合っております!!狭い通路ではドミノ状に転ぶ危険がある為、ゆっくりとお進みください!!』


 天井に設置されている拡声器まで使用され、それで要約耳へ届く程度。


 万が一の為に全ての従業員は、基礎回復魔法の習得を行ってはいるが、危険が伴っているのは事実。

 よく火事が起きた時なんかには落ち着いて、前の人を押さない、急かさないという事を叩き込まれるが、現在の通路でも似たような状況であった。


「こりゃあまた凄い人数だ!!」

「例年通り…いえ…例年以上ね」


 それを上の階から眺めていたリヨスとラーベ。

 そして、ラーベは常連も常連。

 だからこそ去年と重ねていた。


「無理もない。皆、不安なんだ」


 会場の外を巡回しているバロンの零した言葉である。


「年々、強く絶え間なく増え続けるモンスター。今、この世界は1人でも多くの戦士を…冒険者を望んでいる」


 同じく、巡回しているガークは定めた。


「そして、願わくば…勇者の到来を」


 現勇者候補筆頭と謳われるアリシアは、父が納める国民の姿を目に焼き付けた。


「だからより強い戦士の誕生を目にしたい。より早く、より力強く、雄々しい剣を求めて。200年前と何も変わっていないな」


 先代勇者とまで語られるリヨスの目には、200年前と同じ景色が映っていた。


「この200年。技術は然程進歩しなかった。脅威は減らなかった」


 魔王は息絶え、一度はモンスターの活発気を乗り越えた。


 筈なのに人類は再び、脅威に怯えている。


「人類はこれまで幾度も繰り返している」


 200年前の魔王。

 400年前の堕天使。

 600年前の竜帝。

 800年前の水害。

 その前後に起こるモンスターの活発化。

 世界的貧困。


 そして、今度は東のドラグマ大陸から帝国という危機が迫っている。


 歴史が物語る。

 何かの因果が繰り返す様に廻っていると。


 それはまるで…


「神(・)託(・)のようだな」


 今は居ない神が操っているかのようだと。


────────────────────────────────────


 【グラン・コンバット】


 開始まで、残り60分。


────────────────────────────────────


 闘技場(コロシアム) ステイタス更新用個室


 どうにか【グラン・コンバット】の開始までにイルファルドの順番が回ってきた。


[想像はしてたけど凄い長かったな…]


 アリシアと別れてから一時間以上。

 そのほとんどが行列に並んでいる時間であった。


「現在80人待ちでーす!!」

「えぇ…」


 と言った具合で流石に絶望の二文字が過ったが、どうにか間に合った。


 既に観客席からの熱気がここまで伝わり、オープニングセレモニーが始まっている。

 今頃、何かしらのショーでもやっているのか知る由もない。


「急がないと…」


 イルファルドは部屋に入るなり周りを見渡し、一脚の椅子を見つけた。


『神と人が結んだ楔 命の道に導を与えたまえ』


 今は時間が惜しい。

 椅子に腰かけ、ヴェイエから貰った魔力布を頭に乗せると直ぐに詠唱を始めた。


 魔力が籠り、青い光が文字と成す。

 それは魔力が籠り、準備が整った証拠でもある。


 イルファルドは最後に深く呼吸をすると目を閉じた。


『【ライフツリー】』


 部屋中が一瞬、魔力に照らされる。

 飛び散った文字が蛍の様に宙に浮く。

 文字の数は以前よりも増え、魔力総量が大きくなったことが分かる。


 すると、次第に文字は一つに集まり始め、イルファルドの身体に吸い込まれてゆく。

 同時に、カチャ、と錠が開くような音が聞こえた。


 魔法が完成したのだ。


 次に目を開くと意識は、魔法の中


 ここへ来たのならまずは【ステイタスポイント】の確認だ。

 書見台に近づき、ページをめくった。


「す…凄い貯まってる…!!」


 鍛錬を開始してからの一週間、それとハクア村から【グランゼッタ】までの道のりで得た経験値が反映されている。


 使用可のポイント 72p


 コープスとの生死を賭けた戦い程ではないが、十二分に溜まっている。


「少し前だと夢みたいな経験だよな…」


 この72pの内、【グランゼッタ】までの道中で稼いだ経験値は二割程だろう。

 そして、残りの八割はバロンとの鍛錬。

 全てにおいて圧倒的格上であるバロンは、イルファルドに多大なる経験値を与えたのだ。


「このポイントをどう割り振ろう」


 ここでのステイタス振りが勝敗に大きく関わるのは確かである。

 だからこそ、慎重に大切に割り振らねばならないのだが、そこで一つ不可解なものを見た。


「なんだこれ…?」


 普段ならば【ステイタスポイント】を先に割り振るのだが、右上の魔法の項目が掠れていた。

 まさか【ライフツリー】の発動が失敗したのか?


 一抹の不安を抱きながら、僕の指は吸い込まれるように魔法欄を開いた。


 すると、そこには何ら変哲のない魔法のスロットが表示されている。

 魔法も【ラウンズ・オブ・トゥエルブ】と記されているだけだ。

 その下にはいつも通りの詠唱文…そして効果一覧…


「って!?なんだこれ!?」


 僕は思わず声を上げた。

 【ラウンズ・オブ・トゥエルブ】が変化していたのだから無理もない。


 詠唱文

『並びて十二 優劣はあらず 俯瞰せよ 血の絆とその轍を 円卓に集いし 勇猛果敢な勇たる者よ 汝らに力の加護を求める』


 【第十二席(トゥウェルフス)】煙魔法

 【■■■■】

 【■■■■】

 【第九席(ナインス)】空歩魔法

 【第八席(エイス)】空握魔法

 【■■■■】

 【■■■■】

 【■■■■】

 【■■■■】

 【■■■■】

 【■■■■】

 【第一席(ファースト)】■■魔法


「新しく追加…いや、見えるようになっている。それに詠唱文だって変わって…」


 以前まで黒く塗りつぶされていたスロットが解放されている。


 それはまるで魔法が進化しているようだった。

 だが、進化する魔法など聞いたことも無い。


 強化系が開花することがあっても、元となった魔法が消えることなどまず無いのだ。

 そもそも詠唱文が伸びるなど、まずありえない事。

 魔法知識に疎い僕でも分かる摂理。


「元々…異質とは聞いていたけど…」


 もう数週間前になる。


 ヴェイエさんに魔法で尋ねたことがあった。


『魔法って1つでいくつかの効果を内包しているものがあるんですか?』


 僕が初めて魔法を使用したのは、試験の時。

 今では使えなくなっている【第一席(ファースト)】が初めてだった。


 だからこそ疑問に思ったのだ。


 全く形の違う煙(・)魔(・)法(・)が何故、単一の魔法に共存しているのか。


『流石に断言はできないけど。それでもいいのなら』

『お願いします…!!』

『存(・)在(・)し(・)な(・)い(・)』


 そもそも魔法とはそれぞれ属性が割り振られる。

 地水火風、【毒】【麻痺】【睡眠】それだけではない千差万別の属性。


 強化系が出現した場合、丸々新しい魔法として追加されるのだ。

 しかし、【ラウンズ・オブ・トゥエルブ】そうではない。

 単一の魔法がいくつかの効果を内包している。


『私からしたら、その魔法は未(・)知(・)…ルールから外れているように思う』


 魔法とは応用は出来ても、想定を超えることはできない。

 決まった限界値がある。


『これからも開放されていくのならその魔法は…』


「絶大な存在になる…か…」


 ヴェイエさんの言葉をなぞる様に口から言葉が零れた。


「正直、本番を前にして増えるのは嬉しい。だけど…練習時間はない。使うならまたぶつけ本番かぁ…」


 魔法の練習もせずに、本番でいきなり使用というのが何故こうも重なるのだろうか。


「てか…!!詠唱文だって変わってるし!!これじゃあ…【第十二席(トゥウェルフス)】だって使用できるか…」


 新たに【第九席(ナインス)】【第八席(エイス)】が解放された反動とでも言うべきなのか、詠唱文が伸びている。

 未だ魔法の詠唱でほとんどのキャパが取られる僕には、致命的。


 だが変わったものは変えられない。


「よし!!ウジウジしていても始まらない!!」


 無計画の無鉄砲だが一度乗った【グラン・コンバット】というの船は出航間近。

 然程時間は残っていない。


「覚悟は決めた!!」


 僕は【ステイタスポイント】割り振り、そのまま【ライフツリー】を出た。


[これからの残り時間。詠唱に詰まらない様に復習とステイタスで強化された身体に慣れる]


 言うなればこれが大会前最後の調整となる。


────────────────────────────────────


 【グラン・コンバット】開始まで残り10分


────────────────────────────────────


 『イルファルド・ランクルス』


〈ステイタス〉

【力】52p→60p

【生命力】54p→66p

【敏捷】56p→80p

【器用】54p→72p

【幸運】30p→40p


〈スキル〉

【メルティス・グレイム】


〈魔法〉

【ラウンズ・オブ・トゥエルブ】


 詠唱文

『並びて十二 優劣はあらず 俯瞰せよ 血の絆とその轍を 円卓に集いし 勇猛果敢な勇たる者よ 汝らに力の加護を求める』

 【第十二席(トゥウェルフス)】煙魔法

 【■■■■】

 【■■■■】

 【第九席(ナインス)】空歩魔法

 【第八席(エイス)】空握魔法

 【■■■■】

 【■■■■】

 【■■■■】

 【■■■■】

 【■■■■】

 【■■■■】

 【第一席(ファースト)】■■魔法



〈パッシブ〉

【ファティグヒール】LV3

【セカンドヴォーパル】LV3

【ソードマスタリー】LV1

【ナイフマスタリー】LV1

【パラシリス・ヒール】LV1


〈ライフポイント〉

 残り20p


────────────────────────────────────


 次回 火蓋を切る


────────────────────────────────────


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 今回の世界観解説はありませんが、【ラウンズ・オブ・トゥエルブ】とライフポイントについてのちょっとした小話です。


 ハクア村で開花した【ラウンズ・オブ・トゥエルブ】ですが、その必要ライフポイントは300p。

 【モルディル・キメラ】との戦闘で得た、ライフポイントを注ぎ込んで取ることが出来ました。

 ポイントのアベレージ的には平均的であり、魔法やスキルの習得となれば1000pを優に超える場合もあります。


 ちなみにコスパで最強は、ミーナの【リセル・アールグリム】です。

 必要ポイントは…なななんと!!

 30p!!

 大変お買い得!!


 その為アカデミーでは、セシルに続いて天才児と呼ばれていました。

 つまり、ライフポイントの必要数で強さが変わるという訳ではないんです。

 【リセル・アールグリム】なんて、もしもコープス戦で使えたら難易度はVeryeasyですからね。


 さてさて、新しいイルファルドの魔法は、どのような活躍を見せるのか楽しみにしていただけると幸いです。

 次回の更新も同じです。


 誤字、脱字など気兼ねなくご報告ください。


 ブックマークやフォローなどとても励みになります。


 何卒!!


 それではまた!!

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