表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神無き世界  作者: ヤング丸
第一章 広がる世界
36/46

第一章 第二十九話 グランゼッタⅠ


 僅かな灯りが照らすだけの馬車の内部。

 何人もの山賊が拘束されながら騒音を上げ、騒いでいる。


 するとその時、馬車の扉が開き、外の光が中に差し込む。


「おいおい…もう到着かい、騎士様ぁ?」


 万全の装備を身に着け、例え拘束されていようと付け入る隙を見せないカイン。


 コープス以外の山賊は口を閉じ、動きを止める。

 自らの長を邪魔しないように、カインへ鋭い眼差しを送るだけ。


「ったくよぉ。ここ暑いんだよなぁ」

「精々監獄を楽しみにしていろ。冷たい目で見られて涼しいぞ。よかったな」


 まるで待っていたと言わんばかりに話しかけるコープス。

 不自由そうに身体をよじり、不敵な笑みを浮かべる。


「はぁ…ひでぇなぁ。そうだろぉ…お前ら?」


 指揮を執るように周りの山賊を動かし、気を散らす。


「騎士様ー酒をくれよー」

「あーあーここから出て、日の光を浴びながら体操でもしてぇなー!!」

「ひひっ!!娼婦を所望するよ、ほら持ってきてくれ。朕は待っておるぞ」


 カインは山賊に憤りを感じるが、感情を押し殺し、全てを無視する。


「わざわざ騎士様が来るとは、ご足労いただきありがとうございますぅ」


 ゴトッ、とカインが重々しい音を立て、足元へ置いたそれは両手剣だったもの。


「へぇ…いいんだぁ。大事な証拠を壊したりして」

「あまりこの国の技術を舐めるなよ。物体を巻き戻すなんて造作もない」


 刃は折られ、毒々しかった色が抜けきっている。

 コープスは嘗ての愛剣を目の前にし最初こそ、己の目を見開いたが、既に使い物にならなくなっていることに気づくと興味を無くし、ゴミを扱うように足で払った。


「最後にもう一度だけ聞く。この武器に関わっている商人は何者だ?」


 ()()。その言葉通り、カインとコープスが相対するのもこれで終わり。

 既に闘技の街(グランゼッタ)に到着間近。


[どう出る…?]


 極めて珍しい、追憶魔法を持つカルミリア。

 対象の思い出を盗み見る魔法での尋問。


 しかし結果は振るわなかった。

 幾度も使用し、尋問の末、ほとんどは不透明なまま。


 理由は明確であり、コープスとカルミリアの魔力差。


 より高次元の魔力でコープスは隠し通した。

 たった一回を除いて。


 激闘の直後、勇逸情報を得た謎の商人。


 コープス以外の山賊からは何も情報を得られず、手がかりであるコープスは徹底的に隠し通す。

 だから端から期待していない。


「さぁねぇ?」


 完全に舐め切った態度で口を開いたが、やはりまともに喋ろうとしない。


 知らぬ存ぜぬ、を突き通すつもりだ。

 つまりは無意味。


 本体に渡し、そちらで尋問するしかない。

 そう結論付けた時。


「あーでもせっかくだぁ。一つだけいい事教えてやるよぉ」


 今まで一貫して貫いてきた態度を崩した。


 何か目的があるのではないか、と疑いの目を向けるがそんな事などお構いなしにコープスは続ける。


「あの場所で()()()を捕えられなかったのが最大の過ちだぜ」


 カルミリアの魔法で探れていない情報だった。


「なら…そのデウスって野郎は今もハクア村にいるのか?」

「さぁな…最後に視たのは俺が殺した姿だったぁ」

「殺した…?」

「あぁ。この手でなぁ。だがそいつの遺体を見つけたか?痕跡は見つけられたかぁ?」


 挑発するように声を荒げ、どこか勝ち誇っているように見えたコープスにカインは一筋の汗を流した。


「カイン。そろそろ」


 カインの後方にあった荷車の扉が開かれ、そこに立っていたヴェイエ。


「分かった。今行く」

「ならこれでお別れだ。じゃあなぁ。騎士様ぁ」


 こうして護送パーティーは、二週間と一日の旅を得て、夕暮れ時のグランゼッタへ到着した。


────────────────────────────────────


 トットットットッ、と歯車による規則的な音が響きながら、門が開く。


「ここが闘技の街…!!」

「祭りの直前らしく、凄い賑わい」

「ようやく目的地だ。一先ずお疲れ様」


「ようこそ!!グランゼッタへ!!」


 イルファルドが子供のように目を輝かせ、ヴェイエが周りを探る様に観察し、カインが依頼(クエスト)のスポンサーとして労いの言葉を掛ける。


 最後にカルミリアから通行証を受け取った、街の衛兵が歓迎の言葉で出迎えた。


 真っ先に見えた街の光景は、入り口の目の前にあったとても賑わう繁華街。

 そろそろ夕食の時間という事もあり、飲食店や飲み屋などには列が出来始めている。


 無論、全員が全員、食事が目的という訳ではなく、百貨店や土産物店などに入る人もしばしば。


「カイン。私達は本体に合流しましょう」

「そうだな。イルファ、ヴェイエ。時計の針が20時を指したら、中央の闘技場で合流しよう。報酬は後日になるが、宿代と食事代は俺が出す」

「ありがとうございます!!ならまた後で!!」


 カインさんは大通りに設置されている時計を指差し、今から約二時間半後に集合の約束を取り付けた。


 僕達はグリガとマキアをカインさん達に返し、荷台からはカラスさんを回収する。

 かなり大きな荷台ということもあり大通りを避け、人の少ない道へ進路を向けた。


「コレデ ニダイ セイカツガ オワル」

「ご苦労様。がんばったね」

「…キサマニ イレラレタセイデナ」


 まだまだ時間がある。

 慣れない街で時間の潰し方なんて分からない。一体何をすればよいのやら。


「ワタシヲダセ!!ヒサビサニトバセロ!!」

「ヴェイエさんはどうします?」

「私は適当にぶらぶらと。繁華街は行かないけど。人多いし」

「ワタシハ トブ!!トブ!!」


 常に拘束されていたカラスさんの迫真さは目を見張るところがあり、ヴェイエさんは渋々、鳥籠の中から解放しどこかへ飛び去って行った。


「イルファはどうする?」

「僕もぶらぶらと…」

「なら一緒に行く?」


 ヴェイエさん自身、特に目的は決めていないようだった。


 そこで改めて思考を巡らせる。

 試験を受ける以前。

 やりたかったことは無いだろうか?

 夢に見た冒険をして、想像したこと。


[旅に出て明確な自由時間。なら…]


「いえ、大丈夫です。僕は繁華街の方に行ってきます」


 初めて来た街を詳しく知りたい。


 その為に僕はヴェイエさんとは真逆の行動を取った。


「そっか。ならイルファもまた後で」

「はい。お気をつけて」


 僕は分かれ道でカインさん達とは、逆の方向へ進むヴェイエさんを見送った。

 単独行動の開始だ。


「奥の席へどうぞー!!」

「ドレイクフグ入りました!!」

「今日も飲むぞぉおおおお!!!!」


 大通り付近でも耳にしていた賑わいの声だが、一度足を入れるとそこはまるで別世界。

 グランゼッタに住む住人の方々や店の店員さん、冒険者や街の衛兵など、皆が日頃の疲れを癒すため発散しているのが分かる。


 それに鼻を刺激する魅惑の料理達は、胃袋を刺激してくる。


 肉を焼いた香ばしい匂いと共に嗅覚を刺激するハーブの香り。

 海鮮類を売りにした店からは、海藻から魚に至るまで幅広いメニューがある。


 こうして一人で散策していると幼かった頃から成長し、父さん達のような一人前の大人になって行くのだと感じた。


「でも…お酒の匂いは苦手だな…」


 華やかな料理の数々。

 その中で匂う、お酒の匂いはどうも慣れない。


 父さんが【大左翼】の団長という事もあり、いざという時に備え酒を飲んでいなかったというのもあるが、僕自身苦手なのだろうとひしひしと感じる。


 エールや焼酎、ワインなどはどうも似合わないし性に合わないだろう。


「そこのお兄さん!!」


 それは僕の後方からの声だった。


 振り向くとそこにはチラシを持ったおじさんが僕を呼び止めていたのだ。


「どうだい?そこの道を曲がったところにあるウチの店。来ないかい」


 チラシには【蜜の宿り木】と書いており、初めて見るタイプのお店だった。


 どうやら飲食店では無さそうだ。

 それにチラシの隅っこには数名の名前が書いてある。


「えっと…これって何の…」


 どこか胡散臭さを感じた僕は、更に詳しく探る様にチラシとおじさんを交互に視る。


「いいからいいから!!」

「ちょっ…!!」


 有無を言う間もなく背中を押され、曲がり角までやって来た。


 一目で分かる。

 この先は()()()違う。


 曲がり角から出入りするのは男だらけ。

 嗅ぎなれない香水のような甘い匂いに薬では無さそうだが独特の原料臭。


 それに何故か、この先には行くな、と本能が叫んでいる。


「あらあらぁ。これはまた可愛いお客さんね」

「…っ!?」


 僕に話しかけてきたのは、僕よりも年上のお姉さん。 


 綺麗に化粧をし、スタイルも抜群。

 尚且つ曲がり角から延々としていた香水の匂いもする。


 だが僕の驚いたことはそこではない。


「ふっ服がっ!!!」


 布面積が少なく目のやり場に困る。

 大事な箇所こそ隠しているがお腹や背中を隠すものは無く、下着姿よりほんの少し隠しているところが多いだけ。


「服って…ただのアマゾネスの服装よ」


 天空大陸でも確かにアマゾネスは居た。

 だが視界をずらし生活してきた僕にとっては、刺激が強すぎる。


 そこで気づいた。


 何故このような格好をしたお姉さんが居るのか。

 男しか出入りしないのか。

 異様な雰囲気があったのか。


 そう、ここはえっちなお店だがあるのだと。


 ※歓楽街である


「し…し…」

「「し?」」


 僕をここまで誘導してきたおじさんとお姉さんが同時に呟く。


 そして、次の瞬間。

 全身に力と魔力を走らせ、身体強化を発動する。


「失礼しまぁぁあアアアアアアアアアスッッッッ!!!」


 この日、グランゼッタの街を顔を真っ赤にし、誰も追ってきていないというのに全力で走る少年が居た、と数々の酒の席で話題になっていた。


────────────────────────────────────


 グランゼッタへ来る以前に聞いていた本隊の居場所。

 あらゆる騎士の宿谷となっている国王が設けた施設。


「ここだな」


 カインとカルミリアは到着し、少し重い扉を開ける。


「ハクア村の任に付いていたカイン・モルデ・フィールド、カルミリア・レーディス。ただいま帰還いたし…まし…た…」


 膝を付き、帰還報告をしたが妙に人が少ない事に気づいた。


 メインホールには数名の騎士が居るだけで気配も少なすぎる。


「おー戻ったかー」


 すると吹き抜けになっていた二階から階段を無視し、着地した男。

 気怠そうな声で出迎えた男は、【日天の国】の者が身に着ける袴を着ており、その体躯は190(セニチ)を越えている。


「師匠…!!」

「隊長。何故わざわざ」


 カイン達の所属する部隊の隊長にして、カインに剣術を教えた師匠。


 バロン・グラメデス。


「報告は後で聞くわ。二人共、帰ってきたところで悪いが早速、任務だ」

「任務ですか…?」

「隊長が動く程の任務…」

「ガーク達はもう出ている」


 カイン達は上手く状況を飲み込めずにいた。

 帰還早々に任務。

 それに自らの隊長バロンと他の隊長達も動いている。


 大事件でもあったのでは?と考えてしまう。


「はぁ…まーた【キングを探せ】…か」

「「なるほど」」


 【キングを探せ】。

 この言葉で全てを理解した。


 任務の内容と何故、異様に騎士達が少ないのかを


────────────────────────────────────


 日は沈み、ようやく夜がやって来た。


 既に多くの人が飲食を楽しみだす頃。

 たった一人、大きく息を切らしている男が居た。


「急に叫んで逃げたりして、失礼なことをしちゃったかも…」


 十分に走ったイルファルドはようやく正気を取り戻し、大通りの端っこで後悔の念を抱いていた。


「もう少し説明すれば…ん?なんだこれ」


 ふと頭に舞い落ちた一枚の張り紙。

 どうやら壁に貼り付けてあったが、風に靡かれたせいで取れてしまったのだろう。


「人を探しています…テュル・フォーテン」


 それは行方不明者の張り紙だった。


 似顔絵に特徴、見つけたら場合の連絡場所など。


「酒場の店員さん。なんで…」


 失踪した裏には、人攫いなどの事件性を孕んでいる可能性が高い。

 こういった張り紙は悲しい事に無くならないのだ。


「赤毛で目の下にほくろのある女性。念のため覚えていよう」


 自分の力が手助けになるならばそれに越したことは無い。


 その時。

 カランカラン!!という鈴の音が耳に届いた。


「揚げ物全品、出来立て安売りだよ!!」


 どうやら大通りに出店が出ているようで、そこからの声だった。


「うぅ。流石にお腹が空いたな。少し何か食べよう」


 イルファルドにとってちょうどいい。

 後々カイン達と合流するため満腹にならない程度の小腹を満たす食べ物が必須だ。


 既に列が出来始め、この機を逃したら更に多くなりそうである。


 最後尾に並ぶと後方には、見る見る内に客が増え続け、同時に列も少しづつ前に進み始めた。


 出店の看板にはメニューが記載されており、全て揚げ物。

 鳥を上げた唐揚げや海鮮のフライ。

 中でも目を引いたのが一つ。

 見たことも聞いたことも無い。


 そして、ようやく注文の時。


「「とんかつを1つ!!」」


 僕の横に居たお客さんも一緒の商品を頼んでいた。


 しかも一言一句同じタイミングで重なるとは。


「おや。また来てくれたのかい。嬉しいねー」

「私の大好物ですので」


 声が柔らかく、落ち着いた女性の声であり、どこかで聴いたことがあるような感覚に襲われる。


 そこで僕は顔を振り向けた。


[あれ…?僕はこの人を知っている]


 身体が熱く、脳が焼ける。


[淀みのない純白の髪に毛先だけが金色の長い髪]


 肌がヒリヒリと痛み出し、感覚が無くなる。

 記憶がバチバチと弾け、何かを訴えかけてくる。


[剣のようなシルバーブルーの瞳]


 目の奥から熱が涙が溢れ出そうと。

 バクバクと心音が鳴り止まない。


「……かし……した……」


 名前も正体も分からない筈なのに。

 記憶が叫んでいる。


[名前は…]


「あの」

「っ!!」

「大丈夫ですか?」


 目の前の女性が僕に触れた途端、思考が全て吹き飛んだ。

 直前まで覚えていたことが綺麗に抜けきった感覚。


 身体に熱こそあれど正常に戻った。


「す、すみません。ちょっとぼーっとしちゃって」

「なら安心」


 この日の感覚は一生忘れないであろう。

 目の前の女性をきっかけに身体の示した非常ランプ。


 僕はあえて忘れるようにしたのだと思う。

 理由は分からないがその時は、身体がそう言っていた気がしたんだ。


────────────────────────────────────


 次回 グランゼッタⅡ


────────────────────────────────────



 最後まで読んでいただきありがとうございます。

 今回の世界観解説は無しです。


 最近更新速度が遅く申し訳ございません。

 自分の身の回りが忙しく、少しでも早く投稿できるように致します。


 次回の更新も同じペースだと思います。


 今回も誤字、脱字など気兼ねなくご報告ください。


 またブックマークやフォローなどとても励みになります。


 何卒!!


 それではまた!!


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ