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神無き世界  作者: ヤング丸
第一章 広がる世界
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第一章 第二十八話 夜の闇で男は笑う


 今回の二十八話は文字数が少なめです。


 それでは本編どうぞ。



「ありがとうございました!!」


 今日も街の酒場からは、元気のある看板娘の声が聞こえる。


 昼から夜まで人が絶えないグランゼッタ、一の酒場。


「エールを3つ、肉も3人前お願い」

「かしこまりました!!少々お待ちを!!」


 至って普通の業務であり、彼等彼女等にとっては慣れた業務。

 キッチンでは大量の肉や魚、麺類やスープなど多種多様な料理が調理され、テーブルにつく客はそんな料理を心待ちにしていた。


「テュル!!そのゴミを出してきて!!」

「はーい!!」


 ベテランだらけの酒場で店員としての経験が少なくまだ若い、テュルという名の看板娘はパンパンに膨らんだゴミ袋を持ち、少し遠くにあるゴミ捨て場を目指し外へ出た。


 外には飲み屋街の夜ということもあり、酒の匂いが漂う大人ばかりで間もなく開催される、年に一度のお祭り。

 その前夜祭とばかりに騒ぐ人だらけ。


[まだ一週間も先なのに、こんなに騒いで…しかも臭いし]


 未だ酒が飲める年齢ではない彼女は、酒の匂いがそこまで好きではなかった。

 だからこの日はいつもと違う道を選んだ。


 大通りを避け、真っ暗な路地裏へ。

 

「はぁ…何でこんなにゴミ捨て場から離れた位置に酒場なんて作ったんだろう…」


 自分が勤務する酒場に文句を垂れながら、誤って躓かない様に慎重に足を進める。


 あまりの暗さに目を凝らしながら進んでいると、曲がり角から一つの影が視界に飛び込み、ついぶつかってしまった。


「あっ!!すみません!!」


 まさかこんな路地裏を通る人が自分以外に居ようとは。

 そんな驚きを胸に謝った。


「こちらこそ、ごめんね」


 真っ暗な闇に隠れているような漆黒のコート。


 少し高い男性の声に高身長。

 そして何よりもテュルの興味を引いたのはその顔付き。


[イケメンだッ!!]


 フードで顔は隠れていたが大通りの光が僅かに届き、男のご尊顔が見える。


 物静かそうな落ち着いた表情で、とても優しそうな男性。

 高身長のイケメン。年頃の女子ならば気になって当然だった。


「それじゃあ僕は行くね」


 そう言って男は、闇に溶けるように更に奥へ足を進める。


「イケメンだったな…」


 既に見えなくなった男に対し、テュルは惚けたように呟いた。


 きっとこの時には既に手のひらの上だったのだろう。

 唾を飲み込み、進行ルートを変える。


「少し…追いかけてみよ」


 より深く、より暗くなっていく。

 注意深く慎重な足取りは消え、やや駆け足で男を追いかけた。


 あまり通ったことも無いような道。

 普段の彼女なら絶対に通らないであろう。


 まるで魅了され、本能のままに動いた結果、既に見えない男の足取りを正確に辿った。


 それは探検をする子供のような無邪気さを纏い、()()()来てしまったのだ。


「こ…こ…?」


 地下に続くトンネル。

 奥にはうっすらと紫色の光が見えるが、とても不気味で身体が赴くままに動いていたテュルでも流石に歩みを止めた。


「やっぱり戻ろう…」


 身体を180度回転させ、元居た場所に戻ろうとした時。


 コツ、コツ、と何者かの足音近づいてくる。

 しかも一つではない。


[や、ヤバい…!!誰か来る]


 ここは大通りから外れた場所。


 冷静になって考えればゴロツキの溜まり場と言ってもいい。


「隠れる場所は…」


 周りを見渡すが人一人が隠れられそうな物陰は無い。


 そこで彼女の取った行動はトンネルの中へ入ることだった。


「どこか…どこかに…!!」


 恐怖にかられ必死に走る。

 トンネル内の淡い光に吸い込まれるように。ただ真っ直ぐに。


 そして、()()へ迷い込んだ。


「何か…隠れられる場所をっ!!」


 秘密基地のような部屋には、大きな木箱や鉄製の檻などが置かれ、とても普通の空間ではないが、後ろから聞こえる足音がゴロツキだったらと考えるとそれどころではない。


 咄嗟に隠れた入り口近くの木箱。


 時期に足音の主もテュルの後を追うように部屋へ入ってきた。


「…?なにか?まぁ別にいいか。」


 男はどこか違和感を覚えたらしいが、どうにか気づいてはいないようだった。


「大変だね。下請けの俺らも」

「そうか?結構楽しかったけど」


 謎の男達は肩に担いだ大きな袋を持ち、部屋の中央で袋を降ろした。


「いやーご苦労様です」


 次の瞬間どこからともなく聞こえてきた声。


[この声って…]


 聞いたばかりの声だ。

 記憶に新しく鮮明に覚えている。


 部屋中の光が揺れ、空気が震えだす。


「うっ…!!」

[急に眩暈が…]


 突如どうしようもない吐き気に襲われるがどうにか口を押え、必死に声と気配を押し殺して蹲る。


[今の声って…さっきの…]


 空間に浮かぶ魔力の粒が弾け、黒い霧が現れた。


「どうもー。これ。言われてた()です」


 袋を持ってきた大柄な男はそう言うと袋の紐を緩め、中にある何かを取り出した。


 大きな手でしっかりと中身を掴み地面へ、ゴトッ、と何かを落した。

 それは()()生物だった物。

 温もりを感じさせない真っ白な足が何よりの証拠。


「ひッ…!!」


 甲高い震えた声が部屋中に響く。

 必死に隠れ続けたテュルは、とうとう恐怖に耐え切れなかった。


「今の…」


 袋から手を離し、ゆっくりと歩み寄ってくる。


 このままでは見つかる。

 見つかったら無事ではすまないかもしれない。


[逃げないと…!!]


 いよいよ男の手が伸ばされた瞬間。


「っっ!!!」


 手に持っていたゴミ袋を捨て、なりふり構わず走り出す。


「なんか変だと思ったら女が居たのか」

「アニキ。俺が追いかけるよ」

「いや。2人共。大丈夫」


 黒い霧の中から姿を現したもう一人の男。


 フードを降ろし、黒紫のコートが揺れた。


「はぁっ!!はぁっ!!誰か!!誰かぁっ!!!」


 恐怖で涙を浮かべ、助けを求める。


 しかしその声は届かない。

 闇に吸い込まれるように、街の騒音の一部となり誰も耳を貸さない。


「助けッ…」


 身体が止まる。


 思考が、息が、声が、止まる。


『xxxxク』


 後ろに降り立った存在はテュルの意識を刈り取る。

 眩暈だった身体のダルさは次第に、身体の主導権を奪い取った。


 これは圧倒的魔力の差から生まれる【魔力酔い】。

 しかも意識を刈り取れる強大な魔力。


「まだ完成はしてないんだけど…」


 男はおもむろに語りだした。


「あと少しだよ。大昔から目指していた兵士の誕生がね」


 我が子に対し、愛情を持っている。

 形は歪み、普通では理解できないような考えを持ち笑いだす。


「ぅぁ…」


 口が酷く痺れ、何一つ喋ることのできないテュルが最後に視たのは漆黒の悪魔。

 人の形をしテュルを掴むその手は、間違いなくモンスターの物ではない。しかしそれでも尚分かるのは異形の怪物だということ。

 これではモンスターなのかすら分からない。


「楽しみだなー。カハッ!!ハハハハハハハハハ!!!」


 高らかに笑った。


 夜の闇の中から悪魔が覗くように、我が子の成長を観察しながら延々と笑い続けた。


────────────────────────────────────


 また今回の戦闘が終わる。


 この道は順調な事だけではなかった。


 モンスターの群れが現れた結果、僕だけが分断されかけ死にかけたこともあった。


 時には魔法の詠唱を失敗し、追い詰められたこともあった。


 騎乗しようやく楽に進めると思った矢先、目の前の山が崖崩れを起こし、結局徒歩になったり。馬車や荷車が通れるように道の整備をするという、想像もしていなかったアクシデントだらけ。


 その度に協力し合い、考えを絞り、最善策を取る。


 僕は弱くて、知識も経験ない存在だったが、

 旅の経験も僕よりずっとある、カルミリアさんはパーティーを支え続け、

 誰よりも前線で導いてくれた、カインさんに何度も助けられ、

 朝から夜まであらゆる魔法を使える、ヴェイエさんに守られ続け、多くの経験を得た。


 すると次第にそんなアクシデントも楽しくなり、見えてくるものも変わる。


 問題なんて起こらない方がいい。


 それは不変の結論であり、そうであるなら一番ベスト。

 しかし思い出がそこに生まれ、記憶に刻まれるんだ。


 そうして百回以上にも及ぶ戦闘を乗り越え、ロムレス山脈は間もなく終わる。


 進み続ける事、四日。

 ようやくという気持ちもあるが、道中で見てきた景色ともお別れか、と思うどこか寂しい。


「あそこを越えたらいよいよだ!!」


 その言葉通り、目の前の丘を越えたら…


「ここが…!!」


 エムロット領。


 木々と平原が広がり、農業も盛ん。

 更に領地内には沼地、山脈、鉱道にダンジョンと多くの働き口があり、多種多様な生活を送れる。


 そして、何よりも有名な闘技の街【グランゼッタ】。


 ありとあらゆる娯楽があり、闘技と付いてはいるが、それと同時に遊戯の街とも言われるほど。

 競馬やカジノ、闘技場での観戦。


 現在も多くの人が行きかい活気ある街。


「やっと…見えた!!!」


 まだまだ距離はあるが、視界の奥にうっすらと闘技の町(グランゼッタ)が見え、目的地はもう目の前まで迫っている。


────────────────────────────────────


 この時には既にハクア村から出てから2週間、冒険が始まってから1か月半が経過しようとしていた。


 まだ旅の一部が終わるだけ。

 だがあと少しで節目(チェックポイント)


────────────────────────────────────


 次回 グランゼッタ


────────────────────────────────────


 【エムロット領】


 【メルティシア王国】の最大領地が一つ。

 過去から現在に至るまで王族であるエムリット家が領主であり、そんなエムリット家は多くの趣味を持っていることで有名。

 その為、領地にも強く反映され数多くの娯楽、施設、料理が揃っている。


 ちなみにキャラクタル大陸内、一の作物の生産量を持つ。


────────────────────────────────────


 あとがき


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 次回のタイトルから分かる通り、グランゼッタ編が本格始動です!!


 現在の見立てでは、次回の二十九話は前半後半に分けるかもしれません。

 どうか楽しみに待っていただけると私としては嬉しいです。


 更新は3~5日と変わらずです。


 今回も誤字、脱字など気兼ねなくご報告ください。


 またブックマークやフォローなどとても励みになります。


 何卒!!


 それではまた!!


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