表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神無き世界  作者: ヤング丸
第一章 広がる世界
27/32

第一章 第二十一話 円卓十二席


 戦場に居る全ての視線がイルファルドへ向いた。


 収束する魔力。

 空間を漂う雄々しき光。


 その輝きがコープスに警鐘を走らせる。


「先に止めるか」


 異常事態(イレギュラー)に成り得ると判断した。

 故に獣が捕食対象を見つけたが如く猛る。


『【テラ】』

「近づけさせるかよ!!」


 それは逆もしかり。

 カイン、ヴェイエは、仲間を護る為に全力を尽くす。


 まるで親が子を護る様に。

 絆が最後の防衛線となって立ち塞がる。


「こっちは気にするな!!行かせない!!」

「待ってるよ」


 その想いに答えるのがイルファルド。

 今は護られていても次は、自分が仲間を護る。


『並びて十二 優劣はあらず』


 【ライフツリー】で初めて見る表記に目を疑った。


 冒険者試験の前夜に開花した【メルティス・グレイム】の時と一緒だ。

 あの時は目一杯喜び、その後落胆するという結末を辿ったが。


 しかし今回は違う。


『円卓に集いし 勇猛果敢な勇たる者よ』


 そこに喜びの感情は確かにあった。


 だがそれ以上に心を揺さぶる存在が身体を突き動かした。

 それは決意であり()()


 無慈悲な悪からハクア村の皆を開放したい。


 すると光は次々に形を作り、僕を囲うように十二の玉座が展開された。


『汝らに力の加護を求める』


 詠唱が完結すると十二席の内一つだけが砕け、イルファルドの身体へ吸収された。


「剣を握るんだ」


 勇者のように。


「あれがイルファの…」

()()


 カインもヴェイエもコープスも攻撃を止め、イルファルドへ視線を集めた。

 彼らの視界に入っているイルファルドからは、特段の変化は感じられない。


 それどころか魔法特有の魔力の収束も感じられない。


「何かと思えばただのハッタリかぁ?それじゃあ決めるよぉ!!」


 脅威ではない。

 そう判断した瞬間にコープスは、勝利の笑みを浮かべたが。


「二人共!!」


 そのイルファルドの掛け声に呼応するようにヴェイエとカインが後方へ飛んだ。


 何をしようとしているのかコープスに分かる訳もない。

 正真正銘の切り札なのだから。


『【第十二席(トゥウェルフス)】!!』


 単語(ワンワード)の直後、イルファルドの身体から大量の煙が立った。

 立ち込めて行く煙は時間が経つに連れ、広がりを見せ僅か数秒で空間全土に渡った。


[これがあの冒険者の魔法。正直あっけない]


 攻撃魔法でもなければ回復やバフ、デバフを付与する魔法でもない。

 勇逸の強みと言えば視界の制限のみ。

 しかし状況は、コープスだけではなくカイン達も同様と言える。


「まさかよぉ!!逃げる気かい!!もしもそうならよぉ…お仲間がどうなるかわかるよなぁ!!」


 コープスは声を上げた。

 目的は他でもないイルファルド達への警告と脅し。


 逃げることに対してリスクを突き付ける。

 特に騎士であるカインを逃がさないために。


 だが同時にコープスは違和感を感じた。


[自分の声が遠い…?]


 本来なら何よりも近くで聞こえる自分の声が、他人から出た言葉ように遠く小さかったのだ。


 その時更に別の観点にも違和感を持ち始めた。


 それはイルファルド達の魔力が一切感じられない。

 匂い、音、感覚といった五感が狂っていると気づいた。


 僅かな油断。


 それが消えようとした頃には、もう手遅れ。

 煙が揺らぎ背後からカインが現れた。


「っ…!!」


 防御は既に不可能。

 コープスのできる行動は回避のみ。


 しかしそれも完璧とは言えない。

 【穿牙の大剣】がコープスの背中を大きく斬り裂いた。


[やはりこれではダメか…!!]


 傷は一切残らず身体が吹き飛ぶだけ。

 両腕には斬った感覚がしっかりと残っており、それは硬く弾かれたというより一瞬で再生した、という言葉の方が最適かもしれない。


「やっと姿を現したねぇ!!」

「残念だけど…また御暇するよ」


 しっかりとカインを視界に捉えたコープスであったがその直後、2人の間を遮る様に地面が盛り上がった。


「あの魔法使いか…」


 そこで更なる違和感に気づいた。


 それはカインが背後から斬りかかった事実と視界を遮った魔法。

 コープスが感じられない人の気配をカイン達は、()()している。


「だがどうやって…」


 結論には至らない。


 だがコープスが考察するその瞬間も攻撃は止まない。

 今度は煙の中から豪火球が計四発コープスを襲った。


「何が起こってるの…?」


 少し離れていたカルミリアは、何が起こってのか分からない。


「カルミリアさん!!」

「あなた…魔力の使い過ぎよ」

「あ、あはは。まだ消費が激しくて」


 慣れない魔法のせいだろう。

 少し身体が重い。


 でもまだ動く。


「今はここから動かないでください」

「わかった。あと一つだけ」


 カルミリアさんは一つ前置きをした。


「騎士として情けないのは自覚している。でも言わせて。勝って」


 本当に初めて会った時に比べて状況が変わったな。

 今はほんの少しだとしても僕を仲間として見てくれている。


「はい!!それじゃあ行ってきます!!」


 イルファルドは再び煙の中に消えてゆく。


 まだ頼りない存在なのは分かっている。

 それでも役に立ちたい。


「ヴェイエさん!!」

「要望通り。イルファの指定した方向に魔法を何発か。それと私はいつでもいいよ」


 やはりコープスは、あの場所から動いていない。


 警戒しているのだろう。


「今も見えるの?」

「はい。多分この魔法の効果…なんだと思います」


 〇〇魔法

 【ラウンズ・オブ・トゥエルブ】


 僕がこの魔法を開花させた今でも不明なことが多い。


 そもそも魔法の概要を見ようにもほとんどの枠が空白であり、分かっているのは詠唱と【第十二席(トゥウェルフス)】【第一席(ファースト)】の存在だけ。


 それに驚いたのは、【第一席(ファースト)】だ。

 魔法のようだ、とは思っていたが本当に魔法だったとは。

 だが何故、冒険者試験で魔法が開花する前に【第一席(ファースト)】を使うことができたのか。


「ほらカインも来たわよ」


 再び3人が集まった。

 これで出来る。


「煙が少しずつ晴れてきてる。急いだほうがいい」

「はい。いつでも行けます」


 そして【第十二席(トゥウェルフス)】。


 魔法の属性は無し。

 効果は周囲にありとあらゆる感覚を狂わせる煙を放出する魔法。

 その上で使用者のみ、煙の中での動きを察知できる。


 しかしそれも煙が晴れれば無意味になってしまう。


 ある程度ヴェイエさんの場所が分かっていたカインさんだからこそ、ここを特定できたがあと少しもすれば魔法の効果は薄れ、コープスにも居場所が知られてしまう。


「それではカインさん。さっきの作戦通りにお願いします」

「了解」


 僕の提示した最後の賭け。

 これが失敗、もしくは見当違いだった場合、僕達の負けは決定する。


「二人共。気を付けて」


 カインさんはそのまま一直線で走り出し、僕は迂回するように別の方へと進む。


 コープスが煙に戸惑っていたあの瞬間に伝えた作戦。

 作戦に自信が無いというわけではないが、緊張で思わず息を吞んでしまう。


「はあああああああっ!!」

「そんな大声を出して…騎士様も必死だねぇ」


 煙越しに光となってカインさん達の居場所が見える。

 僅かだが音だって聞こえる。


 このタイミングしかない。


『【ホーンヘイム】』


 またしても煙の中から飛び出してくるヴェイエの魔法。

 今度は方向指定の連射となり、カインとコープスに見境なく牙を剥いてくる。


「全く危ねぇなぁ」

「かなり荒くれ者なんだ。でもそれでいいんだよ」


 するとカインはコープスを蹴り飛ばし、本来は当たらなかった豪火球に無理やり命中させた。


 今のコープスにダメージがない事は分かっている。

 重要なのは命中させること。


 ヴェイエの魔法を欠片でも意識させる。


 今は限りなく不死身に見えるコープスでも、つい意識してしまう。

 しかし前提としてカインにも危険が生じる。


「っ!!」

「まぁ騎士様も当たったら不味いよねぇ」


 咄嗟の守りでダメージは受けなかったが攻撃は止まってしまう。

 結局何も状況は進まない。


 だがだからこそコープスに一つの謎を残していた。


[通用しない事は分かっている筈。なのに何故、煙まで炊いて状況を変えた…?]


 これならばイルファルドの魔法が無かった方がいくらか状況が良かった筈なのだ。


 そのような愚策をカイン、ヴェイエ、そして誰よりも諦めた目をしていなかったイルファルドが実行するとは思えない。


「はああああああああっ!!」


 果敢に斬りかかるカインの命運。


『【ホーンヘイム】』


 仲間を信じて魔法を打ち続けるヴェイエの命運。


 全てをイルファルドに賭けた。


「おい。山賊」


 2人の縦斬りが交わり動きが硬直した。


 剣の技量はカインのほうが上。

 そして力は()()


「スキルの効果…もう切れてるだろ」

「!!」


 ジリッ、とコープスが押された次の瞬間。

 カインの【穿牙の大剣】がコープスの両手剣を横へずらす様に軌道を変えた。


 そしてそのままぐるりと身体を捻り、全身全霊を込めて斬り上げた。


[まさか]

「オオオオオオオオオ!!!!」


 人技流 両手剣アーツ

 【流天(るてん)


 全身の力、捻った勢い、身体強化。全てを上乗せした斬り上げ。

 そんな一撃を軌道が変わったばかりの両手剣が止められる訳がなく、見事コープスの両手剣が腕ごと上へ弾かれた。

 全身のバランスは崩れ、踏み込みは効かない。


[こいつらの目的は…!?]

「イルファアアアアアアアアアアッ!!!」


 バッ!!とイルファルドが煙の中から姿を現した。

 既に抜剣し狙いも定めている。


「ああああああああっっ!!」

両手剣(こいつ)か…!!!]


 キィィン!!!


 鉄がぶつかり合い、火花が散り、鳴り合った金属音。


 カインさんとヴェイエさんがコープスを越えて作り出した一瞬の隙を見逃しちゃいけない。

 残り少ない魔力を動力源に身体強化を施し、反動とばかりに全身に蘇った痛みを全て無視する。


 そして。


 それぞれ握っている【フィア・ブリンガー】【フィア・ナイフ】で斬り払った。


「この…ガキッ…!!」


 コープスの握力を上回る一撃。

 スポン、と手から抜け落ち、大きく吹き飛んだ両手剣。


 初めてコープスの顔から焦って言うのが分かる。


[成功…した…]


 煙は消えていき、ヴェイエさんが目視で見えた。


 まだ勝利ではない。

 ここからだ。


 だが身体は一向に動かない。

 痛みで全身が鉛のように重く、全感覚が動きを止めるようにストップをかける。


 ダメだ。

 終わっていない。


[動け…!!止まるな!!]


 心の中で悲痛な叫びを上げた。


[弱くても足搔くのが僕の取り柄だろうが…!!]


 ついには地面に倒れ込む。

 もう立てない。足に力が入りそうにない。


 それもそうだ。

 コープスの一撃をポーションで誤魔化しただけで、既に肉体は限界。


「ッ…!!」


 もう僕は動けない。察してしまった。


 悔しさで奥歯で噛みしめたその時。


「後は任せろ…!!」


 既に追撃へ移っているカインの姿が見えた。

 更に。


『【ホーンヘイム】』


「がっ!!」


 ヴェイエが回復した視界で見事に命中させる。


 肌はやけどを負い、僅かに焦げたような匂いもする。

 苦しんでいるのが分かる。


「クソッ!!」


 コープスは攻撃でも防御でもなく、行ったのは両手剣への全力疾走。

 再び回収するために。


 だが本調子ではないように走る速度が遅かった。

 何故そうなったか。痛みを感じたからだ。


「感謝する。推測は当たっていた」

「カイン…さん…」


 朦朧とする景色でイルファルドは見た。

 既に追いつこうとしているカインを。


「貴様の強さ。それはその武器だったか」


 魔力総量は、高域のままだが既に圧倒的耐久力は消えた。

 ヴェイエの魔法が有効打になったのが何よりの証拠。


『あのタフネス。恐らくは武器のせいです』


 具体的な仕組みは分からない。


 でも血液を一切見せなかった筈の身体で、何故か地面に滲んでいたコープスの血液。


 【穿牙の大剣】を奪えば終わっていた、この戦い。

 そんな単純な思考すらも鈍らせた存在。


 コープスの慢心から出た武器への執着とその言葉。


『これは失敗しても、僕の勘違いでもどちらでも負け。でももしもそうなら僕達の勝ちです…!!』


 あの十数秒の時間。

 イルファルドの策がコープスを嵌めたのだ。


「コープス。貴様の負けだ…!!」

「クソォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


 もう自分の両手剣を回収できない。

 だからコープスは何も持たずに襲い掛かった。


『【テラ】』


 しかしダメ押しとばかりにヴェイエがコープスを転ばせる程度の魔法を放った。


「全く。魔法は必要なかったのだがな」

「感謝してね。カイン」


 そのままカインは踏み込んだ。


 人技流 両手剣アーツ

 【飛天(ひてん)


 大きな横薙ぎ払い。


「ガッ…!!!」

「大人しく眠っとけ」


 殺しはしない。

 意識を刈り取り、足の筋肉を断った。


「この後。色々聞かせてもらうぞ」


 イルファルド達の勝利。

 そして山賊の敗北。


「よかった…勝て…た」


 今にも気を失いそうになりながら言葉が漏れた。


 もっと役に立ちたかった。

 強くなりたい。


 思いはより大きくなっていた。


「もう休んでいいよ。私達が守るから」

「でも…まだっ…ここから出ないと」


 コープスは倒した。

 でもその他はまだ居るはずだ。


 それに倒れているシェルさん達だっている。

 ここで止まってられない。


「クッ!!」


 痛みを再び無視しようとした時。

 何かが僕の頭に触れたのだ。


「頑張るのはイルファのいいところ。でも休むのも大事だよ」


 ヴェイエは自分の足を枕代わりにするようにイルファルドの頭を乗せ、優しく撫で始めた。


「まだ私は分からないことだらけ。君のことも…それ以外も」


 言葉の暖かさ。

 それに対して言葉が出ない。


「良く寝て起きたらまた話そう」


 不思議と瞼が重くなるのが分かる。

 分からないのに安心できる。


「おやすみ」


 イルファルドはゆっくりと目を瞑った。


 イルファルドの身体に疲れが溜まっていたのは事実。

 何より体力のほとんどを使い果たすほどの仕事をした功労者であることは間違いない。


「起きたら俺達全員で礼を伝えなければいけないな」


 カインは自分の頬を搔きながら問いかけた。


「一度帰還しよう」


 コープスの持っていた武器の出どころ、残党の居場所、シュルトの安否など。

 まだ終わっていないことだらけだ。


 だが約一ヶ月に渡る山賊との戦いは、一先ず終わった。


──────────────────────────────────────


「やはりか…分かっていたけど全く使えないね」


 それはどこからかカイン達を監視していた存在。


「でも面白いのは見つかった」


 闇の中小柄な身体をした何かが微笑んだ。


──────────────────────────────────────


 次回 Normal End


──────────────────────────────────────


 【物質系モンスター】


 他の種に比べて、数はそこまで多くない。

 そもそも岩や自然などなどに隠れており、見つかりにくい。


 代表モンスターで言うとゴーレムやトレントが該当する。


──────────────────────────────────────


 最後まで読んでいただきありがとうございます。


 間もなくゴールデンウィークですのでストックを作るチャンス!!と思っているのですが中々作れない…

 もっと早く出せるようにします…!!

 次回も同じペースでの更新になります。

 

 それでは今回も誤字、脱字など気兼ねなくご報告ください。


 またブックマークやフォローなどとても励みになります。


 何卒お願いします。


 それでは失礼します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ