第一章 第二十話 山賊長コープス
この場に居る人間は、全員で9名。
山賊長コープスとミネア。
【プランセル・オーダー】の騎士5名。
そしてイルファルドとヴェイエ。
しかしシェル、ミリアーデ、クデア達は痛々しい傷跡を負い、地面に伏している。
「村でやっりあった騎士様もまたあったねぇ」
きっとわざとだ。
カインさんに対しわざと挑発的に話しているのが分かる。
騎士としての誇り、二度目に及ぶ仲間の傷ついた姿。
「あー安心してぇ。彼等は生きてるよぉ。ははっ殺す訳にはいかないからねぇ」
「そうか…」
ドンッ!!と音を立て、地面を抉った。
それも二つ。
「あなたを倒して皆を助ける!!」
「ここで終わらせる!!」
この空間に入った時にはあった僅かな恐怖心は既に消え、代わりに巻き込まれた人全てを助けるために勇気を燃え上がらせたイルファルド。
仲間を傷つけ、村人を危険に晒し続けた山賊に全ての罪を清算をさせようと、怒りの炎を燃え上がらせたカイン。
2人は、ほぼ同時に攻撃へ移った。
「きひっ!!いいねぇ!!」
今日一番と言っても良かった攻撃。
だがそれを難なく防いだコープス。
しかしジリジリと力で押しているのはイルファルドとカイン。
[このままいける!!]
イルファルドが心の中で呟いた時。
「それ大丈夫ぅ?」
「ッ!!イルファ!!」
力を最大限使い鍔迫り合いを弾いて解除したカインさんは、僕の首根っこを掴み後方へ投げた。
一瞬何が起きたのか分からなかった。
だが後方へ吹き飛びながら見えた左手に握られている長さ10cm程のナイフ。
今の一瞬でカインさんに、助けられた。
目立つ両手剣への綺麗な視線誘導とその動作を察知させない技量。
注意するのは高域という魔力総量だけではダメだ。
間違いなくコープスの技量は僕より何段も上。
「ごめん。今のは私の責任。あいつ私からは見えないようにする位置取りができるなんて」
間違いない。
コープスは自分の意のままに戦況を動かしたのだ。
「次からは気をつけます…!!」
「今度は守る。だから安心して」
「ありがとうございます!!」
コープスに対して、僕は正面から打ち合えない。
だからヴェイエさんと連携するしか方法は無い。
「まーた2人っきりだねぇ。騎士様ぁ!!」
「それはどうかな?」
コープスの両手剣を右足から放たれたサマーソルトで上へ弾いた瞬間、それを視界に捉えた。
飛翔し【フィア・ブリンガー】を背中の鞘に重ね、上段の構えを取っているイルファルドの姿が。
『【アンチビティ】』
直後魔法を発動させたヴェイエ。
するとこの世の法則が変わったようにイルファルドは、コープスの元まで猛烈な勢いで接近した。
顔の皮膚はやや引っ張られ、風を全身で受けているようだった。
「っっ!!」
『キャンセル』
風圧の影響で何も言葉を出すことができなかったイルファルドだが、確かな一撃でコープスを吹き飛ばした。
「イデッ!!」
「早速決まったな」
「は、はい…滅茶苦茶、身体が痛いですけど…」
アジトに乗り込む前に話し合っていた連携技。
『アンチビティ』
効果は重力の発生源を変化させる固有のデバフを付与する魔法。
一度に使う魔力が大きく、付与可能範囲も狭い為使いづらいのだが、それをあえてイルファルドに付与し、落下スピードというエネルギーを有効活用した。
「今のはかなり…」
カインさんの言葉はそこで止まった。
その視線からは、驚愕が見て取れる。
「たくよぉ。いってぇなぁ」
確かに攻撃が決まった。
しかもコープスを壁まで吹き飛ばす威力。
「な、なんで…!?手応えは確かにあったのに…!?」
特に軽減や威力を削るようなことはされていない。
なのになんで…
[無傷なんだ…!?]
「ちょっと舐めてたわぁ。3人は持って行ったでしょうなぁ」
ぶっつけ本番の技。
だとしてもあの攻撃でダメージが無い?
「確かに強烈だった。それは間違いない」
「カインさん…」
カインの中でようやく合点がいった。
ハクア村での防御をしようとしないコープスの違和感、シェル達が負けた理由、先ほどの連携技。
「ただ奴には何かがある。それは確か」
魔法なのかスキルなのかそれ以外なのか、まだ分からない。
だが何らかの方法で、ダメージを無くしている事だけは確定した。
「最初はただ硬いだけの奴だと思ってた。だが違う」
「ほう。何故そう思ったのぉ?」
「決まってる。俺はイルファの攻撃が当たる瞬間を見ていた…!!」
カインは記憶を遡りイルファルドとヴェイエの攻撃を思い出す。
あの時、一瞬ではあったが【フィア・ブリンガー】が皮膚を斬り裂く瞬間が見えた。
流石に血液までは見えなかったが、そもそも肉体的に硬いのであれば刃は通らない。
「斬り裂いた瞬間を見ていたからこそ、ダメージが入ったと確信したが…すまない。俺の判断ミスだ。追撃をかけていれば」
「大…丈夫です!!もう一回…!!」
まだ少し痛い身体を起したがカインさんは、僕の動きを止めるように手で遮ってきた。
「それはやめておいた方がいい。恐らく次は決まらない」
「!!なん…」
一瞬何故だか分からなかったが直ぐに理解した。
あの連携技は全てが噛み合っていたのだ。
カインさんの体制崩し。
それを可能なタイミングでの魔法の使用。
何よりコープスの意識外からの攻撃。
言うなれば奇襲だった。
だがそんな技も警戒されては、もう決まらない一度きりの技。
「ちぇー。もう1回打ってこればよかったのにぃ。まぁ想像通り今度はカウンターしていたけどね」
「せめて魔法が使えたら」
カインの切り札【グランテス・ホーリー】は、契約の効果で24時間の間、使用することができない。
まだ森で使用して15時間程。
故に使用できなかった。
「ほーらぁ。後ろの騎士様も待っててねぇ。直ぐにこいつらを倒してまた閉じ込めるからぁ」
「っ!!」
「ガハハハッ!!!」
カルミリアはまるで血の気が引いたように顔色が悪くなり、シェル達がやられているという事実から今にも恐怖で顔が歪みそうだった。
そんなカルミリアを見て嘲笑うコープス。
正に外道だとカインは更に怒りを強めた。
だがいくつか不明点がある。
だからこそ一時的に感情を抑え、問いかけた。
「ハクア村を襲い何をしたかった。目的を言え」
「はぁぁ。言う訳ねえだろ…といつもなら言うが今は気分がいい!!騎士を3人もぶっ倒して、そして今君達もこの俺に負ける!!あーそういえばもう1人…シュルトって言う騎士も居たっけなぁ!!」
「「「!!!」」」
昨日僕達が奇襲された大滝付近で合流を予定していた騎士だ。
状況的に捜索はできず合流できなかったが先に山賊と戦闘していたとは。
「シュルトはどこだ!!無事なのか!!」
「あぁ。生きてるよ。ただちょーと目的の為に移動したけどねぇ」
「その目的はなんだ…!!」
カインさんからはどんどん余裕が無くなっていくのを感じる。
だが無理もない。
もしもカインさんの立場なら僕は、怒り狂って攻撃をしてしまう、というのが分かる。
「うーんまぁ簡単に言えば俺は最強になりたいんだよ」
「最強だと?貴様程度で何を…」
「あぁそうさ!!俺程度さ!!だがいくらでも強くなれる!!この武器を手に入れてそう思っちまった!!」
ずっとカイン達が気にしていた毒々しい色をした両手剣。
確かに業物だ。
しかし武器だけで最強になれるほど甘くはない。
「だがその為には金が必要だ。だから村を襲ったんだよ」
するとコープスは両手剣を地面に突き刺し、おもむろに語りだした。
「元々俺達は一月前のあの日、村からガキだけを連れ去るつもりだったのよ。それまでは食料だけだったがもう萎れたからなぁ」
「な、なんで子供を…!!」
「奴隷…か。子供の奴隷は高い」
「っ!!」
僕も聞いたことがある程度だが人攫いというやつだ。
今やほとんどの国で奴隷は禁止されているが、それでも裏社会を通して流通していると聞く。
かく言う天空大陸でも【翼の守り人】の監視を搔い潜り、発生していた。
「男は戦士に!!女は娼婦に!!ドラグマ大陸はいつだって戦士を欲しがるからな!!」
「外道がッ…!!」
「だが目的は変わったのがちょうど一月前…今の目的は…!!」
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アリシアが村を守った数時間後。
「コープス様!!ゆ、勇者姫が!!」
道中で何人も偵察役がやられ、いつこの場所がバレても可笑しくない。
そんな状況。
このままでは高域以上が何人もいる【プランセル・オーダー】に瞬く間に引き潰される。
「撤収だ!!逃げるぞ!!」
だから撤収しようとしていた。
荷物をまとめ、部下を犠牲にしても逃げ延びる…筈だった。
「安心なされ」
「取引は中止だ!!今すぐに…」
この日山賊と取引予定だった商人が、積み荷から布に包まれた巨大な何かを降ろした。
「目的は変わった。今からこいつを置いてゆく。そいつの指示に従え」
常に商人と一緒に居た謎のエルフの老人。
そいつを置いてゆくと。
「よろしくお願いします」
そいつは名をデウスと言った。
かなり老いぼれでエルフの中では、数百歳は生きているであろう見た目。
「今更何を言って!!」
「これを見てください」
そういって突き出したのは水晶。
しかしただの水晶ではない。
映し出されているのは、【プランセル・オーダー】の騎士。
それがもう間もなくここに辿り着こうとしていた景色だった。
「これで位置が分かります。そして…」
次の瞬間デウスは水晶を落した。
すると水晶がものの見事砕け破片になると一瞬でアジト中を魔力の光が包んだ。
「これで転移いたしました」
「な、なにを言って…」
周りを見渡すコープス。
しかし言葉通り全く別の場所へと転移していた。
しかもコープスだけではない。
洞窟内にいた山賊全員が転移されており、それどころか物資まである。
「これで痕跡も残りません」
新たにもう一つ取り出した水晶に移っていたものは、騎士とアジトが存在していた場所。
そこはまるで自然の状態に戻っていた。
「コープス。しばらくはデウスの指示に従えば全部上手くいく。そしてこれを」
それはつい先ほど。
商人の積み荷から降ろした何か。
「そいつは業物だ。使い方はデウスから教えてもらえ」
布を取ると中からは一振りの両手剣が出てきた。
コープスでもそれがただの武器ではないと。
だがこの時はそれ以上に恐怖心を抱いていた。
こんな代物を用意する商人に。
ここまでする目的は何なのか?
「ま、まってくれ!!ここまでして何をしてほしいんだ!!」
まるで悪魔と話すように、まるで悪魔と契約するようにコープスは膝を突いた。
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「勇者姫を売ることだよォ!!」
「「「っ!!」」」
驚きを隠しきれなかった。
当然だ。
お姫様を売る。
しかも勇者姫とまで呼ばれる存在を。
「そしたらよぉ!!金をもっと多く!!今よりも強力な武器を手に入れられる!!」
「貴様程度に!!主君を捕まえられるとでも思っているのか!!何より貴様程度に時間を割く程、暇ではない!!」
「それはどうかなぁ?知ってるよ。大のお人好し、仲間思い。それに人質も…こぉんなに居るじゃん」
コープスはそう言うと僕達を指さした。
ようやく納得した。
そこまで村人に被害が無かった理由を。
なぜ危険を冒してでも騎士を攫ったのかを。
「こんな武器まであるんだ。だからさぁ。大人しくしてもらうよぉ!!!」
「来るぞ!!」
今度は攻守が反転したかのように僕達の元へ、コープスが単身で突っ込んできた。
速度は僕の反応では、やや間に合わない程早い。
「まずは!!お返しぃ!!」
『【アニマ・ヴェール】』
僕を守る様に展開された【アニマ・ヴェール】をパリィン!!と音を立てながら砕け散り、僅かに威力は削れたが、それでも僕の身体を大きく吹き飛ばすには十分。
「がっ!!」
【アニマ・ヴェール】でタイミングが遅れたおかげで、ギリギリでガードすることができた。
しかしそれでも僕に与えるダメージは大きく、悶絶するような痛みが全身を襲う。
コープス以外の全員が吹き飛ばされたイルファルドに、意識を向けさせられるが攻めは絶えない。
「危ない!!」
間一髪。
ギリギリのところでヴェイエをカインが守ったおかげで、致命傷は無かったが威力は殺しきれずにヴェイエは吹き飛ばされ、カインはあまりの力に膝を突くことでようやく攻撃を受け止めた。
[こいつ…!!さっきより力が強く…!!]
「スキルか…!!」
「正解。【無傷力上】っていう普段は使いづらいスキルなんだけど…」
「ぐっ!!」
「こいつのおかげで!!」
コープスの力は見る見るうちに大きくなり、とうとうカインだけでは抜け出せない状況になった。
「もっと強くなれる!!」
コープスの力は最早、高域のレベルではない。
力だけなら間違いなく聖域クラス。
『【ホーン…】』
「おっと!!それ…騎士様にも当たっちゃうよぉ!!」
「チッ!!」
どうにかして魔法を打とうにもコープスと一緒にカインを巻き込んでしまう。
普段のカインならば迷わず打て、という場面でもコープスでそれはできない。
またダメージを与えられず、カインだけが怯んだりしたら終わりだ。
前衛は崩壊し、後方のヴェイエは勿論、イルファルドも一瞬で倒される。
だから動けるのは、一人しかいない。
「っ!!」
腰の辺りに武器を構え、普段よりも体制を低い状態でコープスの右後ろに現れた。
魔翔斬り、魔翔閃どちらも打つことができる。
だがそんなイルファルドをコープスは視界の端に捉えていた。
「奇襲は見え見えだぜぇ」
「分かってます。だから!!」
攻撃の姿勢を直前で崩し、コープスの拳をギリギリで避けカインの真横まで滑り込む。
[予測してギリギリ…!!身体も痛いせいで視界もグラつく!!でも!!]
イルファルドは【フィア・ブリンガー】と【フィア・ナイフ】を二本とも使い、コープスの両手剣、その側面を下から打ち上げるように叩いた。
そしてこの瞬間を待っていたようにカインも雄叫びを上げる。
「ああああああああああああっ!!」
「うおおおおおおおおおおおっ!!」
イルファルドはあらん限りの力で切り上げた。
力は僅かに張り合えた。
その反動とばかりにコープスの両手剣が宙に舞ったのと同時にカインの手からも【穿牙の大剣】が抜けた。
しかし僅かだがコープスの肌を僕の剣先がなぞる。
「ク…ソ…!!」
状況は大きく動く。
それぞれの両手剣が宙を舞い、地面に突き刺さる。
これを神の悪戯というのだろうか。
2本ともコープスの近くに突き刺さっており、先にカインの両手剣【穿牙の大剣】を奪えば確実に戦力を削れるという状況。
直後イルファルド、カイン、ヴェイエが敗北を悟る。
「ッ!!!」
だがそれでも最後まで諦められないカインは走った。
奇跡を願って。
するとコープスもワンテンポ遅れて走り出す。
「え?」
そんな僕の呆けた声。
理由はコープスの進行方向。
【穿牙の大剣】の元ではなく自分の武器へ走ったのだ。
[ここで判断を間違えた?僕だって気づいたのに]
兎も角好都合であるのは間違いない。
無事に【穿牙の大剣】を回収できたカインさんは、一度体制を立て直す為に後衛まで下がった。
僕もカインさんも大きく息を切らしている。
「はぁ…はぁ…すまなかった。ありがとう」
「いえ…このぐら…っ!!」
なんとか興奮状態で立てていたイルファルドは、そこで地面に倒れかけた。
原因はさっきの一撃。
低級のイルファルドには、致命傷一歩手前。
全身から発せられる痛みの信号に眩暈が収まらない。
痛みだって骨まで伝わっている。
「イルファはポーションで回復をしていてくれ」
「で、でも…っ!!」
「安心しろ」
カインさんはどこか覚悟を決めたように僕の背中ををポンと叩いた。
また僕が弱いから。
強くないから。
「ヴェイエ。頼めるか?」
「分かってる」
僕だけが地面に伏し、戦力になれない。
再開された戦闘を見ている事しかできない。
「イルファルド…でしたね。今はカイン達を信じましょう」
僕に声をかけたのは、今もミネアを抱えるカルミリアさんだった。
そして気づく。
カルミリアさんの手が震えていた。
それでも僕を落ち着かせようと背中に手を置いている。
「カルミリアさん…」
僕の問いかけにほほ笑むだけ。
[きっとこの人だって不安なんだ。武具が無い現状で自分では戦えず、見守っていることしかできない。悔しい筈だ]
なら僕はどうだろうか?
まだ戦える。
最後まで抗える。
僕にはまだ…
「武器がある…」
「え?」
すぐに良くない考えが思考を支配する。
僕の悪い考え方だ。
最後まで諦めるな。
諦めてないからカインさんだって、ヴェイエさんだって戦っているんだろ。
なら僕も戦えるように。
「一つお願いごといいですか?」
「ポーション?」
「ポーションを僕にかけてください」
「…え!?た、確かにかけるだけでも効果はあるけど、今みたいな状況では飲んだ方が…」
「お願いします」
今この時間も有効的に使え。
その為に使うのは頭だ。
元々能力が足りていない。
頭を使ってなんぼ。
それぐらいしなければ僕は役に立てない。
「少し集中するんで。もう僕にバー!!ってかけてくださいッッ!!!」
「わかった…」
まずからくりを解かなければ。
何故ダメージが残らないんだ?
答えに繋がるヒントは出ている筈なんだ。
行動から言動から景色から組み立てろ。
その時僕はそれに気づいた。
[どこを見ているの…?]
そんなカルミリアの心の声。
イルファルドの見つめている先に何があるのか。
その視線を追うようにカルミリアもそこを見る。
「血液…?」
ほんの僅かだが地面が赤く滲んでいるのが分かった。
[あそこさっきまでコープスが居た場所だ]
それは2人の武器が宙を舞った瞬間にコープスが立っていた場所だ。
なんで血液があるんだ。
十中八九あれはコープスの血液。
連携技の攻撃で全く怪我をしていなかったのに。
今思えばコープスの足元、いやそれ以外でもいい。
何か怪我をしている瞬間があったか?
答えは否。
[そもそも今のコープスに傷はあるのか?]
どうにかコープスの動きを目で追うが目立つような傷はなかった。
一つを除いて。
コープスの二の腕付近の服が赤く滲んでいた。
「あの時の傷」
僕の剣先が届いたのもあの場所だ。
でもなんで?
あんなのは攻撃とは言えない防御策の名残。
「【フィア・ブリンガー】で斬れた…」
身体が熱くなるのを感じる。
カルミリアさんに振りかけてもらったポーションで、回復しているのもあるだろうがこれは違う。
答えに辿り着きそうなんだ。
連携技を含め通用しなかった攻撃と比べて何かがある?
スキル…?
魔法…?
違う。
そんな動作は無かった。
なら違った点は…
「カルミリアさん。行ってきます」
「まだ安静にしなければ」
「大丈夫です。負けません」
2人はそれ以上言葉を交わさなかった。
理由はどこかカルミリアから見た空気が変わったからだ。
最初は身体を慣らさせるようにゆっくりと歩き出す。
「大丈夫…使える…ずっと憧れていたじゃないか。その場面が今なんだ」
するとイルファルドは走り出した。
痛みはほとんど消え、絶好調とまでは行かずとも動ける。
「ヴェイエさん!!カインさん!!」
「っ!?」
立つ位置は後衛。
今の僕が前衛でそれを使えるわけがない。
棒立ちの僕をコープスが必ず狙ってくる。
「お願いします。僕を守ってください!!」
何をしようとしているのか直ぐに伝わった。
ここに来る前。
連携技ともう一つ。
これについて話していた。
「行きます!!」
【フィア・ブリンガー】を地面に突き立て、【フィア・ナイフ】を前に突き出し、紡ぎだす。
『【ラウンズ・オブ・トゥエルブ】』
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次回 円卓十二席
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あとがき
世界観解説はありません。
詰め込む描写が多すぎて遅くなりました。
誤字脱字がきっと多い…
今回も誤字、脱字など気兼ねなくご報告ください。
またブックマークやフォローなどとても励みになります。
何卒お願いします。
それでは失礼します。




