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神無き世界  作者: ヤング丸
第一章 広がる世界
24/31

第一章 第十八話 猛攻


「奴らを殺せえええええ!!!!」


 模擬戦じゃない真剣勝負。

 命が取られるかもしれない戦い。


 今度は村の時のように避けるのだけに徹していてはダメだ。

 大丈夫。

 ここにはカインさんもヴェイエさんも居る。


「はあああああッ!!」


 守る為の戦い。

 何も失わない為に。


 しかし根底にあるイルファルドの戦い方は()()


 殺すことができない甘い考え。

 だからこそ不殺でしか戦うことができない。


 結果その考えは、自分を苦しめる鎖にも成り得る。


 それに本来は実力差が開き達人のような腕前があってこそ初めてできる芸当であり、未だ弱きイルファルドには使いこなせない武器。


「イルファ!!半歩下がって!!」


 被弾寸前。

 残り数瞬でも遅れていたら僕の足に山賊の矢が命中していた。


『【ウォタ】』


 僕の左右にそれぞれ回り込んだ山賊をヴェイエさんが壁になる様に割り込んだ。

 数的不利を作らないための処置。

 後衛であるヴェイエさんが前衛に出た理由だ。


「後ろは私が。だからそっちはお願い」

「気を付けてください」


 僕とヴェイエさんは背中を預けた時間は、本当に僅か。


 それぞれ目の前の敵に集中する為、直ぐに疾走した。


「っ!!」

「この…ガキ…!!」


 僕のステイタスはしっかりと上がっていた。


 ステイタスポイントの総獲得数。

 24p


 ステイタス

【力】  22p

【生命力】22p

【敏捷】 22p→32p

【器用】 20p→34p

【幸運】 20p


 世界的に見たらそこまで大きくはないかもしれないが、僕にとっては大きな助けになる。

 特に今回に至っては【敏捷】と【器用】だけに割り振った。


 おかげで山賊と戦うための最低ステータスはあるはず。


「フッ!!」


 【フィア・ブリンガー】で牽制をしつつ、【フィア・ナイフ】で攻撃。

 それは以前の対人スタイルと変わらないが、上がった【敏捷】による不規則な連撃。


 今はとにかく攻めまくって隙を作る。


「ちょこまかと…!!」


 どうにか行動不能にする。


 人を殺せない僕ができる倒し方。


[攻め続けろ…!!]


 何度もぶつかり合う刃の甲高い金属音は、次第に感覚(スパン)が短くなる。


「イルファ。やるじゃないか」


 それは自分も戦っている最中だったカインの言葉であった。


 彼が見た景色はイルファルドが圧倒している姿。

 攻撃を叩きこんだ直後には、次の攻撃に移れるように間合いを管理しながら決してペースを持って行かせない。

 右上から袈裟斬りを仕掛けた次の瞬間には斬り上げ、と攻撃が絶えない。


 猛攻(ラッシュ)というステイタスを振り回した攻撃。


[今までの戦闘経験を…モンスターで得た技術を生かせ]


 身体をステイタスで動かし、思考は経験で補強。


 なまじ常に上と戦う機会が多かったイルファルドの経験が生きている。


 だが決して羨まれるものではない。

 わざわざ危険を冒してまでその道へ行く人が稀である。


 命を危険に晒したくないのならば、自分より弱い存在と戦うのが最善作。

 安定した戦い。

 しかし得られる経験は少ない。


 それに比べ命を危険に晒し、強き存在と戦うというのは、安定はしないが得られる経験は大きい。


 更には今ではこれまで程、ステイタスに差が無い。

 ならば互角以上に戦えるのは必然である。


 ガキィン


 そんな音が鳴った。

 打ち合いでなる甲高い音よりも少し鈍い音だった。


 下から上へ【フィア・ブリンガー】の切り上げで山賊の【ククリナイフ】を弾いたのだ。


「ク…ソッ!!」


 山賊は体制を崩し、次の防御は間に合わない。


「はああっ!!」

「ガッ!!!」


 イルファルドは大きく身体を捻り、【フィア・ブリンガー】の側面を山賊の顔面目掛けて振るった。


 山賊は大きく吹き飛び、白目を剥いている。

 気絶したのだ。


「な、なんとか…」


 まだまだこのアジトには山賊が居る。


 たった一回。されど一回だ。


「し、死んでないよね…?」

「死なないわよ。それぐらいで」


 ヴェイエさんも戦闘を終えたようで僕の肩を、ポン、と叩きながら「おつかれ」と一言だけ呟いた。


「二人とも。休んでいる暇はない。先へ行くぞ!!」

「はい!!」

「分かってるわよ」


 カインさんの言う通り今は急ごう。

 この場所は山賊の身体の中と考えてもいい。


 地理的状況は絶対に有利に傾かない。


「イルファ」

「どうかしましたか?」


 一旦余裕ができた。

 だからカインさんは僕に話しかけたのだろう。


「分かっているとは思うが()()は大事な時まで取っておけ。いざという時までだ」

「はい。そのつもりです」

「使わなくてもいいように俺達も戦う。安心しろ」


 何を指しているのか。分かっている。

 使うような危うい状況が来ないことが一番だ。


 でもいざとなったら。

 皆が危なくなったら僕は使う。


「並びて十二…」


 守られるのでなく僕も守るんだ。

 それが大きな一歩になると信じて進む。


────────────────────────────────────


 イルファルド達の反対側の通路。

 そこではシェル達【プランセル・オーダー】が追跡魔法を頼りにコープス達の元へ駆けていたが…


「こいつら…!!」

「とうとうモンスターまで投入してきたか」


 イルファルド達陽動パーティーよりも戦力が高く、増援が呼ばれるよりも先に倒すことができてしまう程。


 そんな事を繰り返していると明確に居場所が分かる陽動側に戦力が偏っていたが、山賊はまさかの手に出た。

 捕まえたモンスターのみを徘徊させたのだ。


「しかもこの数どうやって…?」

「まさか山賊に調教師(テイマー)でもいるのか…?」


 調教師(テイマー)は貴重であり、生物学のスペシャリストでなければならない。


 山賊にここまで優秀な人物が揃っていたとは。


「お、おい!!あれって…!!」


 モンスターの群れに囲まれる男の子の姿が見えた。

 何故このようなところに?


 疑問が浮かぶがそれどころではない。

 事態は一刻を争う。


「シェルはあの子の盾に…!!私とクデアで散らすから頼んだわよ!!」

「分かったておるわ!!」


 まずはモンスターに囲まれている男の子を避難させなければクデアとミリアーデの魔力にあてられて魔力酔いをおこしてしまう。

 だからここは一度、敵視(ヘイト)を取るしかない。


「己らああ!!その子が危ないだろうがああああ!!」


 誰よりも大きな声を上げ、突っ込んで行ったのはシェルだった。

 モンスターを体当たりで押しのけ、気が付けば男の子の前へ。


 その迫力はモンスターも僅かに慄いてしまう程であるのだが、ミリアーデとクデアは同じことを思った。


[[あれじゃ男の子も怖がらせるだろ…]]


 声が大きい、身体も大柄、鬼の形相と。

 同じ騎士としてそれはあまりにも品がないと思ったのだが。


「思ったより怖がっていない…?」


 案外視界の先に居る男の子はケロッとしている。


「シェル!!今の内だ!!」

「うおおおおおおおおおおおおおっっ!!!!!」


 ミリアーデとクデアが切り込み、僅かにできた隙。

 そこへシェルと男の子に非難を誘導した。


 今度はただ走るだけとなったシェルは男の子を抱え込み、群れの外側へ出る為に咆哮を上げた。


「「うるさい!!!!」」


 せっかく取った敵視(ヘイト)がシェルに向いたらどうするんだ!!という感情からミリアーデとクデアは叫んだ。

 それにここは山賊のアジトだ。今の咆哮を頼りにここまで来たらどうする。


 陽動部隊の意味がなくなる。


「はぁ…速攻で片付けよう」

「そうね。一分よ」


 モンスターが例え多くともここでの最高怪物等級(モンスターランク)は、良くてEと言ったところ。


 これならば高域であるミリアーデとクデアを止められない。


「おお。やっとるやっとる。坊主は大丈夫か?」

「う、うん」

「よう耐えた!!強いぞおお!!」


 男の子を降ろすと勢い良く頭を撫でた。


 本当に強い。良くモンスターに囲まれて泣かずに居られた。


「そ、そうだね!!ありがとう!!」

「お礼も言えて偉いぞ!!」


 戦闘は全て任せ、男の子に付いたままのシェル。

 これで一先ずは大丈夫だ。


 時期に戦闘も落ち着く。

 男の子の避難を優先すべきだ。


『これはこれはぁ…騎士様がわざわざ出向いてくれたぁ』

「「「!!!」」」


 その声は反響しているが前方の通路から聞こえた。

 コツ、コツ、とブーツの足音。


 ()()()()()()


「シェル!!一度その子を…!!!」

「おいおい。逃げるような真似は許さないぜ」


 騎士達の動きよりも先に天井が、ボォン!!と音を立て爆破した。

 それも一つではない。複数回の爆破。


 更には騎士が来た後ろ側だけではない。

 前方の声がする方からも爆破音が聞こえる。


 どうにかこの場を抜けようにもあまりにも危険だ。

 上からは岩が降り注ぎ、洞窟自体も爆破により酷い揺れ。


「まさか…!?」

「このエリアごと崩落を…!?」


 道を塞ぐ為にここまでするかと。

 洞窟全体の崩壊が起こってもおかしくない。


「安心しろぉ。ウチの参謀がその辺きっちり調整済みだぁ」


 計30回の爆破。


 その全てが終わった。


「まさか…私達を逃がさない為にここまでするなんて…」


 前方は真っ暗で見えないがほぼ間違いなく前後の通路が()()()()


 目的は間違いなく騎士達を逃がさずに戦場のステージを用意すること。


領域(フィールド)を作ったのか」

「ピンポンピンポ~ン!!正解~!!」


 ようやく姿を現した両手剣を担いだ男。


 ミリアーデが村での戦闘を思い出し、シェルとクデアはその容姿と毒々しい両手剣で目の前の山賊がコープスであると察した。


「まさか一人で相手する気か?」

「その通ぉり!!てか君達の作戦的にそのつもりだったでしょ?」


 男の子を守りながらこの空間で戦う。


 まだモンスターの処理も終わっていないのにだ。

 だが作戦の半分は成功した。

 部分的にではあるが好都合。


「シェルはその子を守るのに集中してくれ!!」

「おう!!」

「ここで終わらせる!!」

猛攻(ラッシュ)を仕掛ける」


 一月に渡った山賊の調査。

 元凶を叩く時が来た。


「来いよぉ!!騎士様ぁあああ!!」


────────────────────────────────────


 もう一つの通路でコープスとの戦闘が開始したのと同刻。


「爆破音…?」


 反対側の爆破音はしっかりとイルファルド達の耳にも届いていた。


「それに今の轟音と揺れ、崩落でもしたのか?」


 この短時間で山賊との遭遇(エンカウント)は6回。

 ちょうど戦闘が終わった頃に聞こえたのだ。


「はぁっ…はぁっ…大丈夫でしょうか…?」

「あいつらを信じよう。それにイルファは一度、呼吸を整え直せ。少し速度を緩める」

「分かりました。ありがとうございます」


 少しは強くなったとはいえまだ弱い。

 カインさんとヴェイエさんは息一つ乱れていない。


「それにしても…ここは全然アジトという感じがしないわね」


 確かにヴェイエさんの言う通り、ほとんど洞窟。


 置かれている物資は、ほとんどなく不自然なまでに自然の面影を残しているようだった。


「仮説…だが山賊はこの一月、移動しながら生活をしていた。実際に俺達は一度この洞窟の調査したんだが、その時は何も変哲のないただの洞窟。それが今ではアジト」


 カインの仮説ではこうだ。


 1.【プランセル・オーダー】が動くと監視が報告。

   その際に動きや調査する地帯も報告する。


 2.動向が近くなら移動。


 3.新たな洞窟に住み着く。


「そんな鬼ごっこみたいなのになるかしら?それに山賊の数。あれ程の動きを貴方達が気づかない訳がない。砂煙や足跡は消せないわ」

「その通りだ。だから仮説の域を出ない。確信に至らない」


 全く別の動きを山賊は取っていたのか、それとも魔法や強力なアイテムの恩恵なのか。


「どの道、捕まえてから尋問…」


 言葉が不自然に途切れた。


 何かが近づいてくる…?

 気づいたのはカインだけではない。

 暗闇の奥に何かがいる。


()()じゃない?」


 数は2つ。

 獣のような本能的殺気を放っている。


 するとバシンッ!!と何かが右側の壁に叩きつけられた。


「ッッ!!!」


 それは腕が捥げ、下半身の無い山賊の死体。


 全身から血の気が引き、死をその身で感じられる。

 人のこんなにも惨い姿を見るのは初めて。


「構えろ!!」


 何か良くないものが近づいてきている。

 それは僕にも分かる。


 滴る水滴のような音。

 香る鉄のような鋭い匂い。


 ズシンッッ!!


 それが現れた。


「イルファ!!気を付けて!!」

「こいつら…!!狂気の猟犬(パラフロス・ハウンド)…!?」


 怪物等級(モンスターランク)D。


「それに…最悪」

「二…匹…」


 完全に予想外の出来事。

 明らかに大きい障壁。


「クッ!!」


 武器を持つ手が僅かに震える。

 強敵なのもそうだが山賊のあの姿を見たせいだ。


 ()()


 目の前のモンスターが。

 試験での【モルディル・キメラ】を思い出す。


「倒しましょう…!!」


 イルファルドは振るえる身体に鞭を打ちながら。

 武器を構えた。

 これを越えなくてはミネアとカルミリアは助けられない。

 その想いを宿し、折れないように。


「攻撃は俺が!!二人は回避に専念してくれ!!」

「冗談でしょ?それ?私も後衛として…やるわ!!」

「僕もです。皆で超えましょう!!」


────────────────────────────────────


 次回 狂気の猟犬


────────────────────────────────────


調教師(テイマー)


 モンスターをテイムし、共に戦うといった芸当を可能になるがかなり珍しい。

 理由は単純に危険が伴うという事と専用のスキルが必要になってくる為である。


 ちなみに怪物等級(モンスターランク)が上がれば上がるほどテイムの難易度が上がる。


────────────────────────────────────


 あとがき


 今回も最後まで読んでいただきありがとうございます。

 次回の更新は3日後の予定ですが、少し忙しいので遅れるかもしれません。

 申し訳ございません。


 それでは今回も誤字、脱字など気兼ねなくご報告ください。


 またブックマークやフォローなどとても励みになります。


 何卒お願いします。


 それでは失礼します。


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