表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神無き世界  作者: ヤング丸
第一章 広がる世界
23/31

第一章 第十七話 ツインラン


 どれくらいの時間が過ぎた?

 どれくらい意識を失っていた?

 ハクア村の皆は?


 何も守れなかった私には、あの後どうなったのかすら分からない。


「っ…!!」


 まだ傷で痛む身体を起し、目覚めたカルミリア。


 薄暗く、空間を照らす光は僅か。

 両手は壁に縫い付けるように縄で縛られ、不格好な鉄格子でできた牢獄に幽閉されている。


 この牢獄で過ごす分には、不便はない程度の拘束だが外へ動きは制限されていた。


「騎士様!!」

「貴方は…確か…ミネア」


 そう言って私の元に駆け寄ってきたのはミネア。


 酷く震えて、恐怖で息も荒い。


 一切警戒されていないのか私と違い、縄で縛られては居ないが代わりに動きを抑制する重りが両足に着けられている。


「大丈夫。私が付いてる」


 ここは十中八九、山賊のアジト。

 私ととミネアは人質といったところ。


 他に目的があったとしても可笑しくはないが妄想の域を出ない。


[監視役が一人も居ないなんて…舐められたものね]


 コープスとかいう男は、バカなのかしら。


 これだといざとなれば暴れられる。


「おー目が覚めたかぁ」


 暗闇で人影は見えないが響いた声。

 間違いなくコープスだ。


「早速だけどこの一か月、何をしていたのかしら?」

「牢屋の中だってのにまさかの尋問かぁ?村ではひでぇ有様だったてのに随分と肝が据わってやがる。『流石は騎士様』ってか」


 ようやく姿が見えたコープス。

 右手にはハクア村でも装備していた両手剣を携えている。


[油断は、していないわね]


 ハクア村で一度相まみえ、結果はカルミリアの惨敗。

 コープスにはどれほどの実力差があるか分かっている筈。

 おまけにカルミリアは拘束され、現在は牢の中。

 武器なんてあっても無くても関係ない。


 だがカルミリアは騎士。

 万が一を警戒しているのだろう。


「はぁ。なら私達をどうするつもり?」

「はっ!!言うかよ。お前らを奴隷として売るかもしれないし、殺すかもしれねぇなあ!!」


 どこまで行っても目の前に居るのはクズ。

 同じ人族(ヒューマン)として恥だ。


 騎士の誇りに賭けて、ミネアだけでも守り抜かなければ、我がレーディス家に泥を塗ることになる。


「とはいえ…早速一つ目の仕事かもなぁ」

「仕事…?」


 するとコープスは醜い笑みを浮かべた。


 この男が何をお求めか、何を要求してくるのか一瞬で分かった。

 息が荒くなり、視線は私の()()


 それは今も抱き寄せているミネアには、分からないことであり分からなくてもいい事。


「今ここから出してやるよ」


 ここで目覚めた瞬間から覚悟はしていた。

 だがやはりそう簡単には繕えない。


 カルミリアはまだ若い。


[父様、母様。申し訳ございません…!!]


 両目を強く閉じ、唇から血が溢れ出る程強く嚙んだ…


 次の瞬間。


 カルミリア達が居る空間全体に、ゴオオオオン!!という轟音が鳴り響いた。


「な、なにっ!?」


 ミネアは謎の轟音に恐怖を強め、パニック状態に陥いった。


「っっ!!何故…ここが分かった…!?」


 コープスの反応から異常事態(イレギュラー)であることは明白。


 ならばこれが何かカルミリアには、分かった。


────────────────────────────────────


 時間は僅か数分前に巻き戻る。

 場所は山賊がアジトとして使用している洞窟の入り口。


「大滝のトラップが反応するかね~」

「さぁ?まだあいつ等は村から出ていないんだからゆっくりしとこうぜ」


 時刻は早朝前。

 ハクア村を襲撃してから半日が経過した時刻であった。


 山賊側の準備は満タン。

 村から出たという報告も未だにない。

 だから油断していたのだろう。


 上空から降ってくる存在に気づけなかった。


『【スタバン・インパクト】』


 魔法が炸裂し入り口周辺にいた山賊は、全て吹き飛ばされ一掃された。


「ナイス!!」

「馬鹿力ね」

「ガハハハッ!!来てやったぞ…山賊!!思いの他すぐに入り口が見つかったわい!!」


 山賊を吹き飛ばしたシェルを筆頭にカイン、ミリアーデ、クデアといった騎士団員も続く。


「私達も行こう」

「はい!!」


 イルファルドとヴェイエも走り出す。


「くっ!!止めろおお!!」


 既に敵の懐に潜りこんだ。

 山賊が対応するよりも先に倒すことができる。


「分かってはいたが歯ごたえがないな」


 瞬殺。

 その言葉通り決着が付き、圧倒した。


「それじゃあ作戦通りに!!」


 するとそこで二つの部隊に別れた。


 一つはイルファルド、ヴェイエ、カイン。

 もう一つはシェル、ミリアーデ、クデア。


 作戦名『ツインラン』


 どうやって現在に至るのか、この数時間の間に何があったのか。


 それを語るには更に時間は遡り数時間前。


────────────────────────────────────


 一つの部屋にヴェイエと【プランセル・オーダー】が集まっていた。


「ミリアーデとカインの情報を聞く限り、コープスという男は相当の手練れという事か」

「しかも無駄に手下も多いと来た」


 この中でクデアとシェル、ヴェイエはコープスと接敵していない。

 だからこそ情報の共有を図っていた。


 業物の両手剣とミリアーデを倒す実力、カインと打ち合うことができる剣技。

 間違いなく最大の障壁。


「だからパーティーを2つに分ける。コープスを叩く本体と陽動が目的のパーティー」

「分けるって言うけどそもそもコープスの居場所が分からないんじゃ意味が…」

「あら。舐めないで。それとも忘れた?追跡魔法を」


 他の【プランセル・オーダー】メンバーと一線を画す程、ミリアーデの調査任務適正が高い。

 その全てが彼女の追跡魔法。


 アイテムではバレてしまう場面でも微量の魔力をつけるだけの追跡魔法であれば、気づかれるリスクが少ない。


「コープスに付けておいたの。だから奴の居場所は分かる」

「なるほどな。こんな状況じゃなかったら意気揚々と攻め込むが…」

「人質。カルミリアにミネアは確定的、消息を絶ったシュルトも可能性がある」

「しかも皆既に感づいていると思うが、俺達を誰かが監視している」


 森でのカイン達の行動もこの一か月間、一切遭遇(エンカウント)が無かったのも恐らくこれが原因。


「魔力や気配なんて感じなかったのにな」


 もしも感じ取れれば強硬的に動くこともできるが監視がどこに居るか分からない現状では、どうしても後手に回ってしまう。

 それは人質が取られている現状では、致命的な弱点に他ならない。


「やはり明日の深夜まで待たないといけないのか」


 そんなカインの言葉通り最もカルミリア達に命の危険が及ばないのは、約束の時間を待つこと。


「向こうは万全の準備を整えていると考えた方がいい」

(トラップ)や下劣な作戦も覚悟しなければ」


 物資の差を含め、地理的有利は取られていると考えた方がいい。


 山賊はありとあらゆる手段で仕掛けてくる。


 戦においてそれは正解であり、状況が違っていたら【プランセル・オーダー】だって躊躇せずに行っていた。

 生死を分けた戦いに卑怯も下劣も関係なく、そこに秩序はない。

 このままでは圧倒的不利。


「それに関しては少し報告」


 ヴェイエは一人窓際に移動しそのまま窓を開けた。

 肌を撫でる夜風と月光の光。


 それと飛翔しながら近づいてくる黒い影。


「何を…?」

「私の仲間に調査を頼んだの。信頼できるかは微妙なラインだけど」


「カカカ。マッタク タノンデオイテ ヒドイイワレヨウダ」


 少し遠くから聞こえた片言な言葉。

 この場に居る者ではなく明らかに外から聞こえた。


「あら。あなたの行動に振り回されてるのよ。当り前じゃないカラスさん」

「コウロウシャダゼ イタワッテクレヨ」


 帰還したカラスはヴェイエの右腕に乗りながら、乱れた羽根を整え直している。


 何をしに外へ出ていたのか聞かずとも分かった。


「なるほどな。カラスに頼んだのか」

「知能がここまで高い動物なんて普通いないでしょ。ならどこかで監視している山賊の目も誤魔化せる」


 調査の目的地は大滝。

 コープスが指定してきた場所でもある。


「オオカタ ヨソウドオリ ワナダラケダッタヨ」


 カラスが確認できただけで(トラップ)の数は20以上。

 潜伏する山賊の数は、20を超える。


 特に危険なのは、魔法に反応する感知型トラップや古典的な落とし穴、モンスターを捕えてある檻も複数存在していた。

 騎士達との戦力差を埋めるどころか上回ることができる。

 それほどまでにあの空間は完成していた。


 今や大滝は引っかかった獲物をゆっくりと苦しめることができる。


「まるで蜘蛛のよう…か」

「追跡魔法も無駄だったわね」

「俺達の取れる行動は…」


 そんな地獄と分かった場所に行くしかない。

 だからこそ言葉を詰まらせた。


 するとその時、部屋のドアが、ギィィ、と音を立てて開かれた。


「たとえ無謀な戦でも僕は行きます」


 立っていたのはイルファルド。


 右手には魔法の刻印が焼き切れた布を持っている。


「終わったか」

「はい。ありがとうございます」


 前回から数日ではあるが、イルファルドは沢山の戦闘と強敵に出会った。


 その経験値を生かすステイタスの更新。

 たとえ僅かな成長だとしても、勝敗を変えることだってあるのだから。

 いざという時に、全てを出し切れるように。


「ミネアとカルミリアさんを…助けます」


 イルファルドには確かな勇気があった。


 だからこそ


「俺もそのつもりだ!!」

「臆しはしない」

「鬱憤晴らしにはちょうどいいもの」


 一度は緊張で張り詰めた空気もイルファルドの言葉で元に戻り、改めて戦士達を奮い立たせる。


 この場で一番経験が少なく弱いイルファルドが行くのだ。

 強き者がその後ろから見ているだけでは面目丸潰れ。

 玉砕覚悟で戦いに挑む。


「ソウカ…!!ソウカ…!!コレハオモシロイ」

「…?急にどうしたのよ」


 ここまで興奮するカラスはヴェイエ自体、見るのが初めて。


 明らかに視線はイルファルドに注がれているが、何を見てここまでテンションを上げているのか見当が付かない。

 こんなカラスを見るとまた何かを企んでるよ…と内心思ってしまいヴェイエは、冷たい眼差しを注いでいるのだが。


「カアアカッカ!!!」


 突如大声というより鳴き声を上げたカラス。


 声だけではなく動きも煩い。

 何故なら部屋中を飛び回っているのだから。


「ヒトハダヌゴウ!!」

「急にどうしたんですか?」

「シイテイウナラ イルファルドノ オイワイダヨ」

「は、はぁ…?」


 何のお祝い?


 急にお祝いされても何が何だか。

 それに今はそれどころじゃないのに。


 僕だってついさっきステイタスの更新を終えたばっか。

 もしかして僕が居ない間に何かあった?


「特になにも」

「は、はは」


 何故かヴェイエさんには、僕の考えてることが読まれてるし。


 つい乾いた笑いが出てしまった。


「それで?何をするのよ」

「ナーニ イマイチバンジュヨウト マッチシテイルマホウダヨ」


 カラスは魔力を次第に膨らませていき、気が付けばこの場で最大の魔力総量になった。


「こ、こいつ…一体何者なんだ…!?」


 あまりにも当然すぎてカインは動揺を隠せていない。


 この時のカラスは、間違いなく聖域。

 カラスが発する魔力だとしたら常軌を逸している。


「だから知らないわよ。素性について何も」


 魔力の嵐が起こっているような状況。


 幸いなことに村人は周りに居なかったが、もしも居たら間違いなく魔力酔いまっしぐら。


「す、凄い…」


 天空大陸で会った時から魔力総量が多いという事は、分かっていたがいたがここまで巨大だったなんて。


「ソレジャア ヤルヨ ツカッタラ ソッコウジュンビシテ イクトイイ!!」


『【デセプション・ワールド】』


────────────────────────────────────


 そうして時間は戻り現在に至る。


 魔法【デセプション・ワールド】について、カラスさんは説明してくれなかったがヴェイエさん曰く


「魔法の性能は一級品。しかも村周辺を包む幻惑魔法なんて。馬鹿げてるわ」


 と悪態交じりの感想が出る程。


 魔法に関して知識不足だがそれでも分かる、圧倒的性能を持った魔法だった。


「来たぞ」

「僕も前に出ます!!」


 カラスさんの魔法にミリアーデの追跡魔法。


 おかげで僕達は大滝での戦闘を避けることができた。


「アシストは任せて。だから…!!」

「「了解!!」」


 今は前に進むんだ。

 勇者のように前へ。


────────────────────────────────────


次回 猛攻(ラッシュ)


────────────────────────────────────


【アーツ】

 戦闘においての技術の総称。


 身体強化で強化した攻撃や魔法もしくはスキルと絡めた必殺技など使用者の切り札。

 勿論アーツに関しては、魔力使用量によって性能が変わる為、同じ技でもあっても使用用途は複数ある。


────────────────────────────────────


あとがき


 遅くなり申し訳ございません。


 書きたいことは決まっているのに、中々執筆に時間がかかってしまいました。

 文字数も少なめで面目ない…


 次回も3日前後ですが間に合うように努力します!!


 それでは今回も誤字、脱字など気兼ねなくご報告ください。


 またブックマークやフォローなどとても励みになります。


 何卒お願いします。


 それでは失礼します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ