24話 自由職業別組合
説明文が多くてごめんなさいね!!それでも良いよって優しい人はブクマとかしてってください!!読みにくいとか意見も頂けると改善します!!(改善出来るとは言ってない)
あとのじゃロリ好きな人も居てくれて僕ぁ嬉しいです!!
「チッ、五月蝿ぇな……本当に此処がギルド支部か?ただの酒場じゃねぇのか」
「す、凄い活気ですね」
「騒がしいの……」
ミラに教えてもらったイルザール自由職業別組合が拠点を構える屋敷にベルゼ、ディーネ両名を引き連れて足を踏み入れると、乱雑で粗暴な喧騒が俺達を包み込んだ。
屋敷内部は『スカビオサの館』の倍以上の広さを有し、入り口の正面に依頼等の受注をすると思しきカウンター式の受付が幾つか設けられている。受付席では自由職業別組合の紋章をあしらった帽子を被る女達が業務に励んでいた。
一瞬此処は本当は大衆酒場か何かなのではと思ったが、自由職業別組合の支部で間違いない様だ。
ちなみに此処は酒場か?と思った理由だが、喧騒と共に酒の匂いがしたからだ。それ等諸々の出所と思しき方に目線を向ける。この喧騒と酒の匂いの出所は受付から見て右手側にあった。
室内の右手側には酒場が併設されており、まだ日が昇っているにも関わらず種族や性別を問わず多くの人々が酒を飲み、怒号に等しい声で騒いでいる。
喧騒と酒の匂いはこの酒場から漏れ出していた。余りにも騒がしいので騒いでいる奴等全員を皆殺しにしたくなったが、舌打ちするだけで我慢した。自制出来る俺、偉い。
そして室内の左手側には護符やマジック・ポーション等、様々な道具を売る売店や巨大な掲示板、大量の本が収納された本棚や休憩所と思しきスペースも有ったが、此方は余り人が居らず静かだった。
といった具合で室内を眺めつつ主に酒場から聞こえる騒音に軽く目を顰めていると、幾つか並ぶ受付に居た女の1人がチョイチョイと手招きしている事に気が付いた。
「ようこそイルザールギルド支部へ!本日はどの様なご用件でしょうか!?」
「……ギルドに加入しに来た」
「やっぱり!私の勘も捨てたもんじゃないですねぇ〜!かっしこまりました〜!お連れの方々もギルドに加入希望という事でよろしいですか?」
その手招きに誘われる様にカウンターを挟んで女の目の前に立つ。彼女は喧騒に負けず劣らずの大きな声と満面の笑みを持って俺達を出迎えた。
営業スマイルもこのレベルまで達すれば尊敬に値する。
もしかしたら営業スマイルをしているつもりは無いのかも知れないが、少なくとも俺は他人にこんな笑顔を向ける事は出来ない。
自然な笑顔に陽気な雰囲気。外見はやや幼い印象を受けるがハキハキと淀みなく喋る姿は接客業のプロと言って差し支えない。
それはさておき…… 五月蝿い。此奴はまるで自我がある拡声器だ。
「……あぁ」
「お〜!ありがとうございます!では此処じゃ狭いので彼方に行きましょう!」
頭にキンキンと響く声に目を顰めそうになるが、懸命に無表情をキープする。そんな俺の気遣いを知る由もない受付の女は、ピョコンと跳ねている赤茶色の髪を揺らし紙の束を抱えてカウンターから出てくると、鼻息荒く俺達を椅子やソファ、机が置かれた休憩所へと誘う。外見等も相まってその姿が好奇心旺盛な子犬みたいに見える。
「よいしょ!それじゃ改めて……初めまして!私当ギルドの受付を担当しているジェナと申します!本日は加入の申し出ありがとうございます! 」
「おう……」
「では、まずは皆さんのお名前を教えてくださいますか?」
「ハデスだ」
「は、初めまして。ベルゼと申します」
「……ディーネじゃ」
「ハデスさんにベルゼさん、ディーネさんですね!よろしくお願いしまぁぁす!!」
机を間に挟み対面に座った子犬…… もとい受付の女はジェナと名乗り、机にぶつかるギリギリまで勢いよく頭を下げる。ジェナの見た目は大変幼く言動も子供っぽいが、歴とした自由職業別組合の職員らしい。
あと、やはり五月蝿い。
ジェナといいミラといい酒場の奴等といい、イルザールには五月蝿い奴しか居ないのかと疑いたくなる。
「……そんなに大声で話さなくても聞こえてる」
「あ、失礼しました!コレは癖みたいなモノなので気にしないでください!」
「いやそうじゃなくて…… もう良い。で、俺達はどうすればギルドに加入出来るんだ?」
もしかしたら彼女がこの室内に居る奴等の中で1番五月蝿いかも知れない。端的に言ってウザい。
割とオブラートに五月蝿いから声のボリュームを落とせと伝えてみたが、俺の意図は通じなかったので諦めて話題を変えた。
「加入自体は直ぐに出来ますよ〜! ですが最初に此方をご一読ください!」
「『ギルド規約』……これは?」
「この束には我々ギルドが定めている規則やギルドに加入を希望される方へ向けた心構え等が書かれてます! ギルドで働く事を希望されている様でしたら、此処に書かれている規約は絶対遵守でお願いしますね!」
「成る程」
ジェナは受付を出る際に抱えていたそこそこ分厚い紙の束を3つを、其々俺達の前へ置く。1番上の紙には自由職業別組合の紋章と『ギルド規約』という文字がデカデカと書かれていた。
『ギルド規約』と呼ばれているらしい紙の束には、自由職業別組合で働く上で覚えておく必要がある規則や心構え等が書かれているとの事。
試しにパラパラと巡ってみる。其処には自由職業別組合が設立された経緯や依頼の受注の仕方、その他様々な決まり事。果ては依頼に関するQ&Aも書かれていた。
規約に書かれている事の大半は既にガンダス達から聞いていた為知っていたが、復習には丁度いい。ディーネにも自由職業別組合の事を知って貰わなければならないし。
「それでは……ゴホン!既に他組員さん等から聞いていらっしゃるかも知れませんが、今一度ギルドについて簡単に説明させてもらいますっ!我々ギルドの主な役割は魔王アスラゴートに征服された北方地区の復興です!最近は需要もあって北方地区以外にも支部は進出してますけど…… あ、何か質問があれば言ってくださいね?」
「大丈夫だ。質問があればするから話を続けてくれ」
「かっしこまりました〜!で、一言に復興と言ってもやる事は沢山あります。瓦礫の撤去や道路整備、城壁の強化や建物の建造。他には各国から届けられる各種生産品の供給や治安維持ですね〜。ギルドに加入した組員の皆さんにはこれ等のお仕事を手伝って貰って、復興に貢献してもらうって感じです!」
「あ、あの質問よろしいでしょうか?」
「はい!何なりと!」
「ギルドは北方地区以外にも支部が進出していると仰いましたが、1度ギルドに加入すれば他の支部でもお仕事は受けられるのですか?」
「受けられますよ〜!その流れも含めて加入までの流れを説明させて頂きますね!」
「は、はい。よろしくお願いします」
つらつらと言葉を並べるジュナにベルゼは控え目に質問をぶつけ、ディーネは興味なさそうに目を瞑りソファに身を沈めている。
今の所特に気になった点が無い俺は、規約を流し読みつつジェナの話に耳を傾ける。
「まずギルド加入希望者の方には先程お渡ししたギルド規約に目を通して頂き、規則等を覚えて貰います!もし規約に不満が無ければこの登録用紙にお名前を記入して、加入料金5000ミルをお支払いして貰います!あ、この金額はお1人の料金なので、皆様全員が加入される場合の金額は1万5000ミルになりますのでご注意を!」
「では、その加入料金を支払えば私達はギルド組員になれるのですね」
「その前にあと1つの手順があります!加入料金のお支払いが済んだ後は、皆さんにはギルドの正式な組員になった証明となる『ギルド登録証』をお渡しします!このギルド登録証を受け取って、初めて正式な組員として認められるのです!
このギルド登録証は各ギルド支部共通の物となってますので、他のギルド支部に提出すればどの支部でも依頼を受ける事が出来ますよ〜」
「分かった。所で、此奴も登録出来るんだよな?」
一通り規約を読み終え、今度は登録用紙に目線を向ける。登録用紙には名前や性別、年齢を書き込む欄があった。
ギルド規約には特に不満な点や不明な点はない。後はこの紙に名前やら何やらを書き込めば加入はほぼ終わった様なもの。
意外と誰でもあっさり自由職業別組合に加入出来るらしい。そこで俺は黒い角を生やす少女も自由職業別組合に加入していいのか、ディーネに目線を向けながらジェナに質問した。
「えっと、ディーネさんは奴隷……ですか?」
「あぁ、さっき買った」
「成る程。問題ありませんよ〜。自身で購入した奴隷をギルドに加入させている組員の方も居ますし、ギルドが雇っている奴隷も居ますから!」
ジェナは興味深そうに、かつ小首を傾げながらディーネを見つめ確認を取る。ディーネは人間ではない証拠となる角こそ生えているが、奴隷にほぼ例外なく付けられている『隷属の首輪』や『隷属の印』は付けられていない。その為ジェナは少々言葉に詰まったのだろう。
奴隷奴隷と連呼されている当のディーネは面白くないという雰囲気を撒き散らしているが、今は無視する。
「分かった。なら特に問題はない」
「では此方の登録用紙にご記入をお願いします!」
「ほら、コレでいいか」
「ふむふむ、はい!大丈夫です! では此方で少々お待ちくださ〜い!」
俺はジェナが差し出してきた羽ペンと黒いインクが入った小さな小瓶を受け取り、登録用紙にサラサラと偽名やその他情報を適当に書き込む。
ベルゼもディーネも続けて記入をし、ジェナの前に置く。計3枚の記入済み登録用紙を手にしたジェナは二パッと微笑むと、用紙を手に受付の奥へと向かい走って行った。
「おい汝、流れで妾も記入してしまったが、何故妾もギルドとやらに加入せねばならんのじゃ」
嵐の様に騒がしい女が消え、休憩所は束の間の静寂を取り取り戻す。尚も酒場の方からは耳障りな喧騒が聞こえてくるが、耳が慣れて来たのか最初ほど気にはならない。
あとはジェナが持ってくる登録証さえ受け取れば、合法的に戦闘経験を積む準備が整う。
あと数時間で夜になるから、今日は宿でゆっくり休むとして…… 依頼に取り掛かるのは明日からだな。
そんな事を考えていると、ディーネが気怠そうな声を此方に向けた。
「あ、そう言えばお前にゃまだ言ってなかったな。俺達が此処に来たのは戦闘経験を積んで、互いの連携を高める為なんだよ。復讐の為にな。で、予想外に活きの良い奴隷が手に入ったから一緒に戦って貰おうと思ってな」
スカビオサの館に到着した直後の俺は奴隷を購入するにあたり、『暗視眼』や『篝火』といった補助魔法が使える奴隷が欲しいな、程度にしか考えていなかった。外見や性別はもとよりどうでも良かったし、最悪戦闘能力がなくても構わないとさえ思っていた。
俺が奴隷に求めていたのは単純な労働。馬車の手綱を握ったり、魔法が必要な場面で俺の代わりに魔法を使ったり、雑務をこなしてくれさえすればそれで良いと。
だが売り物の多くが『生』を諦め半生半死の人形と化していたのは流石に予想外だった。
理不尽と不条理に屈服した人形なんてとても買う気になれなかった。
その後の行動が結果としてより良い方に転び、俺を仇敵と怨むディーネと再開した事で考えを変えた。
ディーネを捕らえた『剣聖』の異名を持つ彼奴は、今では魔王アスラゴートを倒した8英雄の1人としてその名を世界に轟かせている。
そう、『剣聖』は俺の復讐の標的。俺を裏切り見殺しにした憎むべき相手だった。
ファブロとは違い、常に先陣を駆り魔物達を斬り伏せてきた強者。挙げた首級は数知れず、敵に打ち勝ち、更なる高みに行く事こそ我が天命と言って憚らなかった戦闘狂。弱い敵には見向きもせず、強敵目掛け一直線に突き進む戦闘馬鹿。猪突猛進な猪武者。
同じく常に先陣を駆り、度々強敵を打ち倒してきた俺に対抗意識を持っていたのか、事ある毎に突っかかってきた酒好きの粗暴者。
コレが『剣聖』に対する俺の印象。
そんな戦闘狂で戦闘馬鹿な猪武者相手に戦闘が得意だと言わしめたディーネを雑用係として遊ばせておくのは勿体無い。なので俺は彼女にも武器や服を買い与え、自由職業別組合にも加入させる事にしたという訳だ。
「妾も共に戦えと申すか。……面倒じゃの」
「巫山戯んな。契約を反故にするつもりか」
「……妾の復讐の為ならば致し方あるまい。そういう契約じゃしの」
「やはりライ様は彼女にも戦闘経験を積ませるのですね」
「あぁ、此奴を捕まえてスクラフに売った『剣聖』様の話が確かなら、此奴は戦闘が得意な様だ。雑用だけじゃなくて戦闘でも役に立って貰う。今考えうる中で最悪の事態も想定してな」
ちなみにディーネを捕らえてスクラフに売った『剣聖』様は大の酒好きであると同時に、大の女好きであらせられた。
夜にフラッと消えたかと思うと、酒の匂いを撒き散らしながら大量のキスマークを付けて朝帰り。なんて事はザラにあった。
負けたとはいえ魔族のディーネが生かされているのは、『剣聖』様の女好きな性格あっての事か。
その『剣聖』様がディーネをスクラフに売ったのは『先日』らしい。この先日が1日前なのか1週間前なのかはたまた1ヶ月前なのか定かではないが、確かなのは最近『剣聖』はこの街に来ていたという事実。
そう言えば…… イルザールに来た直後、街の自由職業別組合組員が『剣聖』の事を喋っていた様な気がする。
俺達がイルザールに来たのは、戦いの糧になりそうなネタが豊富にあると思しきイルザールで戦闘経験を積み、互いの連携を強化する為。そしてある程度の熟練度アップと連携の強化を済ませたら、そのまま隣国のドラゴニアス帝国に居る彼奴へ復讐する為。
イルザールはそういう立地的な意味でも都合が良かった。だから俺はイルザールに来た。……のだが、やはりディーネが売られた時期から考えると、『剣聖』はイルザールの近くに居る可能性が高い。
となれば今の俺が取れる手段は1つ。最悪な事態を想定して一刻も早く戦力を強化しなければ。
「あと、此奴も一緒に戦わせるのはベルゼの負担を減らす為でもある。2人の英雄を同時に相手取る事になるかも知れないからだ。ドラゴニアス帝国に居る英雄と、ディーネを捕まえた英雄とな。分かってくれるな?」
「……はい」
「おっ待たせしました〜!はい、此方が皆さんの登録証になります!無くしたりすると罰金ですので大切に保管してくださいね〜! ……って、どうかしましたか? 少し空気がギスギスしてません?私の気のせいですかね?」
尚もやや不満そうなベルゼであったが、2人の英雄を相手取る事になるかも知れない状況と、『復讐ノ誓イ』の効果で2人の戦いぶりを見ていたベルゼはそれ以上反論して来なかった。
ベルゼがやや不満そうに返事をした直後、手にドックタグの様な楕円形の登録証を持ったジェナが戻って来た。この登録証を紛失させると罰金が発生するらしいから後で『恒久の皮袋』に収納しておこう。
「気のせいだろ。さて、ジェナ。これで俺達は正式なギルド組員になったんだよな?」
「あ、はい!ハデス様方は無事に『コパー階級』のギルド組員になりましたよ〜!」
「なら早速依頼を受けたい。どんな依頼があるか見せてくれ」
登録証を受け取った俺は早速明日からでも戦いに臨める様に、ジェナに現時点でどんな依頼があるのか見せてもらう事にした。
「かっしこまりました! え〜っと…… 現時点でギルドが掲載している依頼はこちらになります!」
ジェナは近くにあった巨大な掲示板に手を向ける。大小様々な紙が貼られた掲示板。この全てが、現在自由職業別組合で請け負っている依頼らしい。
此処でギルド規約に書かれていた依頼を受注し、報酬を得るまでの流れを思い返してみよう。
依頼を受注する流れとしては、まず受付横に置かれた掲示板に貼られている依頼の中から、自分がやりたいと希望する依頼を受付に伝え、其々の依頼に定められた額の契約金を支払う。そうすると依頼の受注書が授受される。
この受注書は、その人が自由職業別組合の依頼を受注した正規の組員である事の証明になり、受注書が有って初めて『自衛以外の戦闘は認めない』という面倒な規約を気にせず戦う事が出来る様になる。
戦闘の必要がない依頼……城壁内での道路整備等もあるが、そういった依頼にも受注書は授受されるらしい。
そして依頼を達成(不達成の場合も含め)すれば受注書を返却し、依頼に応じた報酬を受け取る。なお契約金は依頼不達成の場合は勿論、達成の場合でも返金はされずに全額徴収される。徴収された契約金は自由職業別組合の活動資金として使われると、規約に書かれていた。
つまり依頼を達成出来れば契約金こそ返ってこないが報酬は貰えるので儲けが出るが、依頼を達成出来なければ報酬を得る事が出来ず丸損となり、組員は契約金という無駄金を浪費しただけに終わるという感じか。
以上がギルド規約に書かれていた依頼を受注してから報酬を得るまでの流れである。
「やけに獣や魔獣の討伐依頼が多いですね……」
依頼の受注の仕方、その後の流れ等を思い返している俺の横で、ベルゼが掲示板を見上げ呟いた。
やはり俺が睨んだ通り、イルザールは争いの種が豊富に有った。ちなみに今更だが……【獣】とは『静狼』や『飛び兎』、『鎧豚』等、魔王軍とは関係のない野生動物の事を指し、【魔獣】は『ゴブリン』や『オーク』等、魔王軍に属していた人語を解さない獣の事を指す。
更に補足すると、魔王軍にはディーネの様に人語を解し操れる者達が居るのだが、其奴等は魔獣より高位の存在……『魔族』と呼ばれている。其奴等は知能や腕力、魔力等によって幾つかの階級に分けられ、主に魔法軍の部隊長、将軍として度々俺の前に立ちはだかった。
掲示板にはその魔族の討伐依頼こそ無かったが、獣や魔獣の討伐依頼で溢れかえっていた。
「えぇ、何故か最近多いんですよね〜。その所為で組員さん達に怪我人が続出ですし、組員さんの安全の為に質の良い武具を仕入れて格安で売ってを繰り返したりと、色々対処しないといけない事態も増えてちょっと困っちゃってます。うわぁぁあ〜って状態ですよ〜!」
「あ、あははは」
「んじゃ治安維持に協力してやるよ。そうだな…… コレとコレと、あとこの2つも受注しよう。2人共イケるよな?」
「と、はい。私は大丈夫ですよハデス様」
「問題ない」
「よし、んじゃ受理頼む」
「こ、こんなにですか!? 我々としては嬉しいんですけど……」
「今の『コパー階級』でもこれなら受注出来るだろ?」
とりあえず目に付いた魔獣の討伐依頼を何枚か指差す。依頼内容が書かれたそれ等の紙には、『黒狼』の討伐。『オーク』の討伐。『ゴブリン』の討伐。『コボルト』の討伐と書かれていた。
これ等の依頼は全て、自由職業別組合が定めた階級『コパー階級』でも受注が可能な討伐系の依頼だった。
ギルド規約を読む限りでは、自由職業別組合は独自に組合に対して【コパー】【シルバー】【ゴールド】【プラチナ】【ミスリル】【オリハルコン】という6つの階級に属する様定めており、自由職業別組合に加入した新人組員は例外なく『コパー階級』となる。
この階級が上がれば上がる程、より強い敵に挑む事が許される。ギルド規約によれば、この階級制度は新人組員が己の実力を過信し、強敵相手に無謀な戦いを挑ませない様にする処置らしい。
しかしそれ相応の実力があると認められれば、階級が上がる。階級を上げるには自由職業別組合が提示する指定の依頼を達成する必要があるらしいが。
「確かに受注は出来ますけど、加入初日にこんな量の依頼を受けようとしたのは『剣聖』様以来ですよ〜!?それに私達としては、『コパー階級』の新人さんが討伐依頼を受ける時は最低でも10人以上でって勧めてるんですけどぉ……」
「……なら尚の事負けてられねぇじゃねぇか」
「ん、何か仰いましたか?」
「いや何でもねぇ。『剣聖』っていう前例があるんだから問題ねぇだろ。それに10人以上でって勧めてるってだけで、必ず10人以上で受けなきゃダメな訳じゃねぇよな?」
「わ、わかりましたよ〜! も〜!それでは4つの依頼しめて2万ミルの契約金と、ギルドへの加入料金3人分の1万5000ミル!合わせて計3万5000ミルのお支払いをお願いします!」
「ほれ、丁度だ」
兎も角として、俺は現時点での階級でも受注出来る依頼をとりあえず4つ受理して貰った。
今更ゴブリン等の雑魚を狩って経験値をチマチマ稼ぐつもりはない。
連携強化の為の下地としては最適かも知れないが、近くに8英雄の2人が居るかも知れない状況下では一刻く俺自身の熟練度を上げる必要がある。
此処は自由職業別組合に少しでも早く俺の実力を認めさせ、より経験値の足しになる奴と合法的に戦える様にしなくては。
「全く、困った新人さんですね〜。それじゃ受理書を書いてくるので少し待っててくださいね!」
眉を下げ仕方ないという様な声色でそう言ったジェナは、俺が支払った計3万5000ミル分の金貨を受け取り受付へと向かう。
数分後、ジェナが持ってきた4つの依頼の受理書を受け取った俺達は、早速明日から依頼に取り掛かる為イルザール自由職業別組合支部を後にした。
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ライ一行がイルザール自由職業別組合支部を後にした丁度その頃……
「大層なご活躍のようですね『剣聖』さん」
「あ?今はリフレッシュ中だ。サインなら後にしな……って、よぉ〜『龍槍』じゃねぇか!久しぶりじゃだなぁおい!あ、そう言えばお前ってドラゴニアス帝国の侯爵だったっけな」
武を尊ぶ風潮が強い列強の一国に1人の男が居た。
広大な領土と精強な軍隊を有し、かつては侵攻する魔王軍の最前線にある国として、同盟軍の最重要拠点と位置付けられていた龍の名を冠する帝国。
その帝国でも屈指の高級娼館【ブバルディア娼館】に、『剣聖』と呼ばれる世界最強の剣士は居た。
淡い桃色の花の名を冠する娼館。その内部に設けられたバーカウンター。このバーカウンターは娼婦との一夜を楽しむ予定の男が、同時に各国の多種多様な美酒を楽しむ為に併設されたもの。
カウンターに座り深紫色の酒を嗜んでいた『剣聖』の背中に、別の男が声を掛ける。
声を掛けられた『剣聖』は一瞬怪訝な顔を浮かべたが、其処に居た声の主が、かつて共に戦い『龍槍』の異名で知られる英雄の1人であると分かると笑みを零した。
「はぁ、やはり貴方は私がこの国の侯爵だと忘れていたんですね」
「まぁそう言うなって、俺が物覚え悪いのお前も知ってんだろ?てかよく此処に居るのが分かったな」
「先日貴方が西方のギルド支部からイルザールのギルド支部へ出向いたと、私の部下達が教えてくれたのですよ。物覚えが悪く、戦いと酒、そして女性にしか興味のない貴方なら此処に来るだろうと思っていました。貴方がお越しになったら連絡する様にと、支配人に伝えておきましたから」
「そんなに俺に会いたかったのかよ。悪いが男を抱く趣味はねぇぞ」
「此方もです。帝国に来たのなら、せめて挨拶くらいはしに来てくださいと言いたかっただけです」
2人の英雄は明るく雑談に興じる。
自身の好きな事以外には無頓着でやや軽薄な『剣聖』。眉目秀麗という言葉を体現したかの様な外見で敬語を話す『龍槍』。
1年程前まで共に幾度とない視線をくぐり抜けてきた彼等は、生まれた国や性格、考え方こそ違えど互いに英雄と呼ばれる者同士。軽口を言い合える程度には友好的な関係にあった。
「貴方の活躍は帝国にまで響き渡っていますよ。ギルドの特別顧問に就任されてから、狩った獣や魔獣は数知れず。先日は魔王軍の元幹部と思しき上級魔族を捕らえたり、オーガ50匹を討伐された様で」
「へっ、上級魔族だろうがオーガだろうが俺様にかかればチョロいチョロい!」
「しかし貴方が捕らえた上級悪魔を売るとは意外でした。その上級魔族は女だったのでしょう?てっきり慰め物にするのだと思ってましたよ」
「女なら誰でも良い訳じゃねぇんだよ。ましてや魔族の女なんか抱きたくもねぇ。穢れちまうわ。ま、今晩の酒代と女達を買う金の足しにさせて貰ったがな。魔族とは言え女だったからな〜 良い金になったぜ」
「ふふ……」
「あ?何が可笑しいんだよ」
「いえ、彼奴が死んでから随分と明るくなりましたね」
「…… おいテメェ、俺の前で彼奴の話題を出すんじゃねぇ。酒が不味くなる」
何気ない会話が続く中、優男の発言を聞いた軽薄な男は眉間に皺を寄せ、一気にグラスに残っていた酒を煽った。
「おっと、失礼しました。貴方は彼奴に並々ならなぬ敵愾心を持ってましたっけ」
「俺より強い奴がこの世界に居ちゃならねぇ!」
ガン!
空になったグラスがカウンターに叩き付けられ、鈍い音を発した。軽薄男の体は怒りで小さく震えている。その様子を優男は少々冷ややかな目線で見つめていた。
「結局、お互い最後まで彼奴を超える事は出来ませんでしたね」
「……本当は処刑なんかじゃなくて俺がこの手で直接殺してやりたかったぜ。そうすれば俺が世界最強だって、お前や彼奴等にも認めさせられたものを」
『龍槍』の言葉を受け、『剣聖』は立ち上がると吐き捨てるに言葉を呟き、数枚の金貨を乱暴にカウンターへ叩き付ける。
「何方に行かれるので?」
「女だ女!こういう気分の時は女を抱くに限る!おいマスター!金はここに置いとくぞ!」
「全く……壊さないで下さいよ。この娼館に居るのは我が帝国でも指折りの美女達なんですからね」
「わーってるよ!うっせぇな!」
これ以降2人は言葉を交わさなかった。
女達が待つ待機室へと向かう『剣聖』の背に、『龍槍』は再度冷ややかな目線を向け、溜息をついた。
「やれやれ、英雄色を好むとは言いますがアレには困ったものです…… 5人で済めば良しとしますか。……マスター、支配人は何処に居られますか」
『剣聖』が待機室の向こうに消えたのを確認した『龍槍』は、バーカウンターに居たマスターに語り掛ける。
2人の英雄の再会は何とも後味の悪い別れとなったが、『龍槍』はそんな事を気にする様子はない。『龍槍』はマスターが呼んできた支配人と数分程会話をした後、1人娼館を立ち去った。
そして後日。
『ブバルディア娼館』でも五指に入る女達が、娼館内で無残に殺されていたという事件がドラゴニアス帝国の新聞を賑わせた。
その記事の最後には、「娼館内で5人の美女を殺害した犯人の足取り、人物像は未だ明らかになっていない。手掛かりとなる様な物も存在せず、犯人を見つけるのはもはや無理であろう」そう書かれていた。
この小説の投稿を始めてから約5ヶ月が経過しました。
そこで現時点で掲載している全25話(プロローグ含め)の平均文字数を興味本位で調べたら、1話平均約8000字でした。
今後も文字数は増えこそすれ減る事はないと思いますが、お暇な時のお供として読んで下さると嬉しいです。




