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10話 証人と証拠


この邪道小説の投稿を始めて今日で丁度1ヶ月ですって。

1ヶ月祝いでブクマとか感想書いてって下さい。


展開が遅ぇんだよバァカ! みたいな感想でも良いので。




馬車の荷台から躍り出た俺は、我ながら惚れ惚れする動きで野盗達の腹に拳や足を叩き込んだ。


文字通り血反吐を吐く様な訓練や、一瞬の気の緩みが死に直結する実戦で培った白兵戦技術は死して尚、しっかりと心の奥に記憶に刻み込まれていた。


体が覚えているとは違う。

俺の体は1度滅んだから。

それでも心は滅びなかった。

俺は生前の地獄の様な日々を、出来事を、経験を全て覚えている。


敵の目線や呼吸、位置や兵装、体格等。戦う上で重要な要素を瞬時に吟味し、誰を1番最初に倒せば混乱を誘えるか。脅威度の高い敵は誰か。どの様な攻撃手段が最も有効か。


戦場を生き抜く為に極限まで高めた見極めの技術。記憶に刻まれ、数多の戦闘で培った一種の戦略眼、戦術眼。


心に刻まれた記憶に習い、先ずは野盗の指揮官である頭の腹に拳を叩き込み、次に体格に恵まれている者、剣やナイフ等、乱戦で敵のみをピンポイントで攻撃出来る刺突武器を有している者、そして鉈や斧等、乱戦時に振り回せば仲間を攻撃に巻き込む恐れのある武器を持つ者の順で攻撃を見舞う。


その動きは体が覚えているというよりも、こうした方が最も効果的だと心が、魂が覚えていた故の動きだった。


「ゲホッ…… だ、誰だテメェ……」

「っと、手加減し過ぎたか」


男臭い風貌の野盗達が悶絶し地面に蹲る。

手加減というモノを殆どした事がない俺の裏拳や掌底突きは野盗数名の胸骨を砕き絶命させた。


俺は周囲に倒れている、もしくは蹲る野盗達を見て、改めて身に付けている防具の性能に感心した。


この世界の常識で言えば、たかだかレベル『48』の人間が大の男をたった1発の拳で絶命させる事は不可能だ。

これがレベル『100』とかになれば話は変わるが、少なくとも今の俺では不可能だ。


それなら何故ガルドレの部下や目の前の野盗達を一撃で殺す事が出来たのか。


それは今身に付けている防具に秘密がある。


俺が身に付けている『真王の籠手(ガントレット)』や『真王の脛当(グリーブ)』には、ある効果(・・・・)があり、この効果のお陰で攻撃力が向上しているのだ。

その為防具を纏った俺は、加減を間違えると野盗程度なら簡単に殴り殺せてしまう程になっていた。アンリエッタをボコった時以上に注意が必要で手加減が難しい。実際野盗の半分はうっかり殺してしまった。


それでも最初に攻撃した頭は出来るだけ殺さない様にと意識し加減したお陰で、蹲ってはいるものの命に別状はないみたいだ。


正直手加減せずにぶっ殺した方が余計な事を考えなくていいので楽っちゃ楽なのだが、今後は手加減しなければならない場面も出てくるだろう。これは手加減する練習の良い機会だと割り切ろう。


「こ、答えろ!お前は誰だ…… 何の目的でこんな!」


襲われた頭はえづきながら地べたに這い蹲っている。この頭はガルドレとは違い部下が殺されても戦意が萎える事はない。やはり多少は抵抗してもらった方が此方としてもやり甲斐がある。


此奴等は俺を第2の魔王として貶めた訳ではない。だが今回の復讐には此奴等の存在が必要不可欠。


直接復讐には関係なくとも、間接的に復讐に役立つならば人柱になって貰う。

復讐を誓った奴等を苦しめるのに役立つなら、もしくは復讐を邪魔する様な奴等なら殺す事は厭わない。躊躇わない。


今回はどちらかと言えば前者に当たるが、命まで奪う事はない。いや、むしろ殺してしまってはダメだ。此奴等には後々重大な役を担って貰う必要がある。


それでも流石に手加減し過ぎたか。


「誰が教えるかよ馬ぁ鹿!」

「がっ……」


頭の顔には怯えや恐怖、混乱が滲む。歪んだ顔を向けられた俺は口角を上げ、仮面の下で笑みを浮かべながら頭の顔を蹴り飛ばす。

その一撃で軽い脳震盪を起こした頭は、パタリと地面に伏せた。


「証人確保だ。ガルドレ此奴等を縛り上げる。手伝え。ベルゼは周囲を警戒しろ」

「は、はひぃ!」

「かしこまりましたライ様」


裏切り者の鍛治職人ファブロを地獄の底に叩き落とす為に思い付いた計画。

その計画を成功に導くには、ファブロの悪事を語る証人が必要だった。証人は多ければ多い程良い。


ガルドレから他にも複数の野盗がファブロ指示の下で商人を襲っていると聞いた俺は、ファブロの悪事に加担していた野盗達を証人として、悪事の証拠として、ファブロを断罪する為の材料として確保する為に今回の行動に出た。


ベルゼが荷台の上から周囲を警戒し、その下ではガルドレが手を震わせながら、気絶している野盗達を麻縄で縛り荷台に積み込んでいる。



この調子なら最後の準備も直ぐに片付きそうだ。



縛り上げられ荷台に詰め込まれていく野盗達の姿を見ながら、俺は仮面の下で笑みを浮かべた。



▼▼▼▼▼▼▼▼



「これでファブロ配下の野盗グループは全てで間違いないか」

「は、はぃ! 間違いありません!」


ガルドレのグループから数えて4グループ目。俺はガセナール商国連邦付近の林道や小道に屯し獲物が来るのを待っていた野盗達を壊滅させた。


4つ目のグループの野盗数名を気絶させ馬車の荷台に積み込み、疲れ切った様子のガルドレを睨む。事前にガルドレから4つの野盗グループがファブロの下で働いていると聞いてはいたが、念の為確認した。


今のグループでファブロ子飼いの野盗グループは全て壊滅した様だ。


「おめでとうございますライ様。これで計画の最終段階に進めますね」

「あぁ。後は隠し倉庫を確認するだけだ」

「ガセナール商国連邦に来てまだ1週間も経っていないのに流石ライ様です。素晴らしい手際に感服しました」

「そりゃどうも」

「これでファブロが死ねば、ライ様の心を多少でしょうが癒す事が出来ますね」

「そうだな。だが多少だ。俺の心が完全に癒えるのは憎い奴等が全員死んだ時だ」

「まだまだ復讐の旅は終わらない…… ライ様、私に出来る事があれば何でもお申し付けください! お食事の準備だけでなくライ様が望むなら拷問のお手伝いからそ、その…… 夜伽のお相手まで……ふ、ふふふ……」


仲間を手に掛け惨めに震えるガルドレとは打って変わり、ベルゼは小さな微笑みを俺へ向けてくる。


『復讐ノ誓イ』で俺が体験した地獄を垣間見たベルゼは、元神という立場でありながらも俺の行いを容認し、この復讐の旅に付いて来た。


それはベルゼの望みである『死』を叶える為でもあったが、ベルゼの心には手を差し伸べてくれた俺の力に、新たな名を与えてくれた俺に尽くしたいという健気な想いもあるらしい。


それ故にベルゼは笑みを浮かべる事が出来る。


冥府(ヘレ)を出た瞬間から、否、『復讐ノ誓イ』で俺の復讐を共有し改めて約束を交わした瞬間から、ベルゼは俺と共に大団円(ハッピーエンド)とは程遠い結末を迎える為に身を捧げた。


此処まで献身的な想いやストレートな好意を向けられた事がない俺の心に、久しく感じた事のない小っ恥ずかしいという感情が広がる。


「ベルゼ」

「あ……ら、ライ様?」

「行くぞ」

「は、はい!」


とりあえず妙な世界にトリップしているベルゼに声を掛けて現実世界に引き戻し、俺は無邪気な笑みを浮かべる物好きな少女の頭を数回撫でた。



▼▼▼▼▼▼▼▼



「此処が隠し倉庫か。倉庫と言うよりも洞窟だな」

「は、はい。事実此処は洞窟だった場所を倉庫に改築した物になってますから」

「そうか。ガルドレ、内部の様子を見てこい。急げ」

「わ、わかりました!」


野盗のグループを壊滅させ頭他数人を拘束、荷台に詰め終えた俺は、強奪した積荷を一旦保管しているという隠し倉庫へ向かう様ガルドレに指示を出した。


林を抜け池を迂回し獣道を進む事数十分。


目の前に現れたのは地面に口を開けたやや勾配がある直径10m程の洞窟の入り口。何処となく冥府(ヘレ)の入り口を思わせる此処が、件の隠し倉庫への入り口らしい。


目的地に到着した俺は、早速ガルドレに洞窟内部を索敵する様に命じた。


「す、すみませんお待たせしました!」

「『晒せ 真実を 晒せ 偽りなき言葉を 晒せ 偽りなき本心を 真実証明』」


数分後、額に汗を滲ませるガルドレが肩で息をしながら洞窟から駆け出してくる。

俺はそんなガルドレに労いの言葉すらかけず『真実証明』の呪文を呟く。


俺はこの洞窟内部の事を全く知らない。内部にガルドレの仲間が……ファブロの手下が居て俺を待ち構えているとも限らない。用心するに越した事はない。


今ではレベルが『48』まで上がったとは言え、これは一般男性と比較するとやや腕っ節が強く耐久力がある。やや魔法攻撃力が高く魔法攻撃に対しある程度の防御力がある。その程度のモノでしかない。


保有魔力(マジックポイント)のみ常人とは比較にならない量こそあれど、それ以外の基礎能力はそこいらに居る一般人と大差ない。仮に今のレベルで本職の兵士や荒事に慣れた無頼漢と戦闘になれば、魔力にモノをいわせた攻撃魔法を使うか、習得した知識と技術で対抗する他なく、最悪死ぬ事になるだろう。


真王の籠手(ガントレット)』や『真王の脛当(グリーブ)』、『真王の胸当(ブレストプレート)』等、現在俺が身に付けている防具や剣、衣類には古から存在する魔法……【加護】と呼ばれる能力が付与(エンチャント)されているが油断は出来ない。


ちなみにこの加護と呼ばれる魔法(スキル)の一種は、古から現在に至るまで数多くの種類が生み出されてきたのだが、その中には装備している者の『生命力(ヒットポイント)』や『基礎攻撃力』『基礎防御力』を向上させるモノがある。


そう、先程俺が言った【ある効果のお陰で俺の攻撃力が上昇している】という言葉。その【ある効果】とは加護の持つ効果の事を指す。


改めて俺が身に付けているモノを全て挙げると、『真王の籠手(ガントレット)』、『真王の脛当(グリーブ)』、『真王の胸当(ブレストプレート)』、『真王の覇道の剣』そして白いシャツや黒の乗馬ズボンなのだが、俺が蘇った時の為にベルゼが用意していた肌着以外……分かりやすく言えば骸の王から拝借した装備品には、漏れ無く全てに装備している者の『生命力(ヒットポイント)』を増やす『生命力(ヒットポイント)向上加護』や、『基礎攻撃力』を上げる『基礎攻撃力向上加護』、『基礎防御力』を上げる『基礎防御力向上加護』等、様々な効果を齎す加護が付与(エンチャント)されていたのだ。


しかも加護の効果は重複する。この加護の重複があって、俺は野盗達を一撃で殴り殺せた訳だ。


それでも、以下に性能の良い防具を纏い剣をぶら下げているとはいえ慢心は身を滅ぼす。だから俺は用心に用心を重ねて『真実証明』を使い、内部の状況を聞き出すことにした。


「『内部にお前の仲間は居るか』」

「『いえ、居ません』」

「よし。ベルゼは此処で待ってろ。内部を見てくる」

「かしこまりましたライ様。お気を付けて」

「あぁ。『灯せ 篝火』。ガルドレ、来い」


己の知る真実を喋らせる『真実証明』。このスキルで喋らせた言葉に嘘はない。


内部に敵が居ない事を確認し『真実証明』の効果を解除した俺は、主にガルドレの視界確保の為『篝火』を使用し、ガルドレに先導させ洞窟の緩やかな坂を下る。

俺1人ならば冥府(ヘレ)で『熟練度』を『300』まで高めた魔法(スキル)……闇夜や暗い洞窟内部がまるで昼間の様に明るく見える様になる『暗視眼』を使うのだが、これは俺にしか効果がないので今回は使用しない。


暗闇の中で事故でも起こされれば、俺がその対応する。そんな事は絶対に御免被る。不測の事態に備えるなら、俺がこの奴隷のレベルに合わせる他ない。


ガルドレは手軽な奴隷として使っているが、労働にしか使えない奴隷ではストレスが溜まる。もし新しい奴隷を用意する時が来たら、その時は『暗視眼』や『篝火』等の補助魔法が使える有能な奴を選ぼう。


「つ、着きやした旦那」


そんな事を考えながら歩いていると、目の前に木製の扉が現れた。この洞窟は勾配こそ緩やかだが迷路の様に複雑に入り組んでおり、道も幾つか枝分かれしていた。内部構造を熟知していない一般人が入っても確実に迷子になるだろう。


盗品の隠し場所にはうってつけであった。


ファブロは他の商人達から奪った品々を一旦この洞窟に運び込ませ、ほとぼりが冷めるまで保管しているらしい。つまりこの洞窟にはファブロの悪事を証明する物的証拠の品々が多数ある筈。


俺がこの隠し倉庫に来たのは、その物的証拠を押収する為だった。


「ほう、これはこれは……」


盗品を視界から隠す為に作られたのだろう扉をガルドレに開けさせると、空気の流れが変わった事で土埃が舞い上がり、カビの香りが拡散される。


扉の向こう側は骸の王の玉座の間程ではないがそこそこの広さを有しており、木箱が其処彼処に山積みにされていた。よく見れば木箱には所有者を示す商会の名や紋章が描かれている。大きさも手の平サイズの物からひと抱えもあるサイズと様々だ。


「よくもまぁこんなに集めたもんだ。感心するぜ」


見た所食品関係らしき物は見当たらない。食品は日持ちしないし、そもそも保存状態が悪ければ売り物にならないから、此処に保管されていないのだろう。いや、そもそも食品は奪わない様にしている可能性の方が高いな。


「ガルドレ、幾つか箱を開けろ」

「は、はい。わかりました」

「『見定めよ 秘めし力 見定めよ 鑑定眼』」


一頻り内部を眺めた俺はガルドレに命令し、命令を受けたガルドレはいそいそと箱を開けていく。その光景を横目に、俺は『鑑定眼』を使い此処にある物はどんな物なのか調べる事にした。


「『対魔獣攻撃向上加護』の付いた剣に防具。こっちは宝石に装飾品…… 家具や農業道具、建築素材にドレスまであるな」


木箱に詰められていたのは各国に売りに出されたのだろう武具や装飾品その他諸々。食品関係が無い事を除けば、此処は小さなガセナール商国連邦と言っていい程様々な物があった。

そしてそれは同時に、ファブロが見境なく野盗達に商人を襲わせ、商品を奪っていたという証拠に他ならない。


そこまでして金が欲しいか。守銭奴め。


と、内心でファブロを侮蔑した。


ファブロがどういう人生を歩んで来たかなんて興味はないし、別に知りたいとも思わない。だが短い付き合いの中でファブロが金に対し、異様に執着していたのを俺はそれとなく知っている。恐らく幼い頃、金に対する何かしらの劣等感(コンプレックス)を持ったのだろう。


ファブロは何事も損得で考えて動く奴だった。


あの時俺を見捨てたのは、そうすれば自身の得になると判断したからか?


『鑑定眼』でそれがどういう物なのか。どういった効果が付与(エンチャント)されているのかを確かめながら、ずる賢そうに目を細めて笑うファブロの顔を思い出す。


「ん? 何だこれ」


唾棄する裏切り者に対しメラメラと憎悪と怒りの炎が燃え上がる。

そんな中、俺の目はある物に止まった。


それは透明な袋…… 【スライム】の皮を加工して作られたと思しき袋に入れられた粉末。小麦を粉末にした様な白い粉。

一瞬こういう粉末状にした穀物は長期保存が効くから別に此処にあっても不思議ではないかとスルーしかけたが、網膜に浮かんだ詳細に目が止まった。


「『リフレクト』…… 麻薬か!」


網膜に白い粉が『リフレクト』という名の粉末だと浮かび上がる。その下の詳細画面を見て、思わず声のトーンを上げてしまった。


『リフレクト』

鼻腔から吸引する事で強い陶酔感を齎し、中枢神経を活性化させる粉末。効果が切れると脱力感、疲労感に襲われ常用すれば幻覚作用が現れる。


詳細画面にはそう書かれていた。


「はは、良いねぇ、こうでなきゃな」

「ファブロの旦那、麻薬にまで手を出してたのか……」


ガルドレもファブロが麻薬にまで手を出しているとは知らなかったらしく、震えた手で袋詰めされたリフレクトを持ち上げる。


ガセナール商国連邦に限らず、人類諸国は麻薬の使用を禁止している。国によっては麻薬を所持しているだけで処刑となる国が存在するくらいだから、麻薬の使用・所持がどれ程重罪かが分かる。だが反面需要は少なからずある様で、犯罪組織の資金源の1つになっていると聞いた事がある。


ガセナール商国連邦の麻薬に対する処罰はどうなっているのかまでは知らないが、少なくとも投獄か国外追放程度にはなるだろう。


ファブロの新たな弱みを握り、計画も最終段階を迎えた。後はファブロを地獄の底に叩き落し、責めて責めて責め抜いて苦痛と絶望の沼に沈めるだけ。


ヨウヤク、ヨウヤク復讐出来ル。


「『ライ様!』」


これからファブロに訪れる地獄を想像すると笑みが止まらない。どんな顔で絶望してくれるのか考えただけでも心が躍る。絶望のどん底でどんな言葉を漏らすのか早く聴きたくてしょうがない。


意識しても心の奥から湧き上がる笑みを堪える事が出来ず、仮面の下で口角を緩めていると洞窟内にベルゼの甲高い声が木霊した。




投稿を始めて1ヶ月で累計PVが5800を超えるなんて思ってなかったッス。


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