新人冒険者(5)
今日の報酬は、キズ薬2個と毒消し薬1個だった。
現金でくれないのは、ギルドを通さない依頼だから、ギルドは依頼の報酬から手数料を取っている。それがギルドの運営費になるため、個人的に依頼をする事は禁止されている。つまり、今日の報酬ではなくお土産だ。
「ただいまー遅くなっちゃいました」
「おかえり・・・なさい」
「まさか、おまえ、酒飲んでる?」
「タリムさんファミリーと打ち上げ、的な」
「はぁ、ありえねー」
「そういう時は誘ってよー」
怒られた、いつも冷静なテルにも怒られた、正座をしながらお土産のキズ薬と毒消し薬を渡すと、機嫌を直してくれたが。
「エルフにあった!」
「BBQ!」
「ビールにワイン!」
今日あった事を報告すると、また火が付いてしまった。
エルフのアグレイさんに自分達の正体を話した事は、完全にスルーされた。
ワサビの事は内緒にした。
「アグレイさんはまだこの町にいるから、今度、紹介します」
「BBQも紹介しろよ」
「それはちょっと、すみません」
正座のまま話しを進める。
食べ物の恨みは恐ろしいと言うが、まさにそれだ!ヴァンはかなり怒っていた。
「今日は私たち大変だったの」
「え?テルの槍?」
「槍は問題ない、前より丈夫になった」
「私が回復魔法を使ってたらー」
テルの槍は鍛冶屋で修理して、さらに焼きを入れて前より丈夫になった。
その後、森で怪我をしたので、ルキアが回復魔法を使っていたら、それを見た別の冒険者チームに、ルキアがスカウトされたらしい。
「それが、しつこくてな」
「そんなにスキル高くないのにー」
「しかも、同じ宿だったの」
聖術士は光魔法の上位、聖魔法が使えるレア職業だ。
しかしまだスキルが高くないため、キズ薬と回復魔法を併用している。
「相手は何人?」
「3人だ、3人とも男だ」
「ヴァンちゃんが怒って」
「ケンカを売って来たのは、向こうだぞ」
喧嘩になりかけたのをテルが止め、宿に戻ったら食堂でバッタリ出会い、また喧嘩になりかけたらしい。
「ヴァンちゃんは今日、怒ってばっかり」
「とにかく!無視することに決まったから」
「わかった」
「それと、明日はショウ君も一緒に行動して欲しんだけど」
「いいよ、あ、でも、タリムさんの依頼が・・・」
「その後でもいいから」
こちらの人数が多ければ、相手も仕掛けて来ないだろう。さすがマナ、頭の回転が速い。
ヴァンは自分のベッドで、ふて寝をしている。
久しぶりにチームに復帰できる、明日もいい日になりそうだ。
翌朝、ギルドに行き依頼を受ける。
午後から合流する場所を決め、僕は薬局へ行く。
依頼はいつもと同じなので、手早く済ませて昼前には合流場所に着いた。
僕が急いだのには訳がある、誰かに後を付けられている気がしたからだ。
「ショウ君!お待たせ!」
遠くからマナの声がする、かなり遠くから手を振っている。
4人と合流して、みんなでお弁当を食べる。
「後を付けられているの」
「え?僕もだよ、なんとなくだけど」
「え?ショウ君も!」
こちらの様子を窺っているのか、ギルドを出てからずっとらしい。
「今なら5対3だな!」
「念のために盾を持ってきた」
「ショウちゃん!いざとなったら、弓解禁だよ!」
「人を撃つのは、ちょっと」
「そうだよ、平和的に解決しないと」
3対2で好戦派が優勢、久しぶりのチーム復帰戦が対人戦になるかもしれない。
森の中にはイノシシ、シカ、ウサギの魔物が多く生息している。どれも肉と皮が売れる。
主にヴァンの剣とテルの槍で仕留める、マナとルキアは魔法でサポート、僕は弓禁止令が出ているので、構えるだけで撃たない。
経験値は戦闘貢献度で決まるらしく、戦わないとゼロだ。よって僕だけ経験値が入ってこない。
つまり弓術士は、戦うと矢が折れて赤字になり、戦わないと経験値ゼロで、もしも補助装備の短剣で、イノシシの魔物と戦ったら文字どうり骨が折れる。
ネットのゲームなら運営に文句を言ってるぐらい、弓術士は使えない職業だ。
「よし、そろそろ戻るか」
「おつかれーひさびさに5人で戦えたね」
「そうだね」
今日の成果はイノシシ1頭、ウサギ5羽、その内ウサギ3羽が依頼のあった魔物なので依頼主へ持っていく。
ギルドに報告に行き、残りの魔物を買い取ってもらう。これも手数料の都合で、直接お店に売ってはいけない。
手続きを終えてギルドを出ると、男達に囲まれた。
「随分シケた成果だな」
「・・・行こう」
「おい、待ちなよ、酒も飲めねー様な稼ぎじゃ、つまんねーだろ、こっちは心配してやってんだぜ」
「大きなお世話だ!」
ヴァンが食ってかかる、テルとマナがそれを抑える。
相手は3人、前に2人と後に1人、3人とも剣術士で強そうに見える。
僕は後を警戒して、ルキアを囲む様に立つ。
「俺たち今度、ブルーベアを狩りに行くんだ、そのときサポート役が必要でな、その子に手伝って欲しいんだ、もちろん報酬は山分けだ。」
「悪い話しじゃない、金貨5枚は堅いぜ」
ブルーベアは聞いた事のない魔物だが、おそらくクマの魔物だろう。クマと戦うなんて危険すぎるし、こいつ等が報酬を払う保証もない。
「断る!そんな危険な依頼は受けられない」
「光魔法が使えるだろ、そいつでベアの目を眩ませるだけさ」
「やらないつってんだろ」
ヴァンが剣に手をかけた、相手も臨戦態勢になる。
「随分、物騒な話しをしているね」
「?!」
僕が振り返ると、男達の後にアグレイさんが立っていた。
男達も振り返り、突然のエルフ登場に驚いている。
「ブルーベアは個体数管理のため、討伐が禁止されているはずだが」
「エ、エルフには、関係ねーだろ」
「聞こえてしまったから、仕方がない」
騒ぎを聞き、人が集まりだした。
男達は舌打ちをして退散、ひとまず危機を脱した。




