宝石泥棒は恋敵(5)
式典終了まであと少し、玉座の間の入り口で待機する。
「え?マナは別行動?」
「そうなの、ドレーゼン閣下から直接指示があるらしいの」
本物のティアラの警護かな。
僕達の警護は陽動になっている、本命は宝物庫の厳重な警護の中にある。今回は魔族は関係ないと思うので、本物さえ無事なら問題ない。
ドアが開いて、ドレーゼンさんが出てきた。
「全員いるな、来賓が退出しだい中へ、あとは打ち合わせ通り頼みます」
「了解です」
「マナと私は城内の監視だ」
「はい」
2人がいなくなると、ド派手なドレスを着た貴族達が出てきた。
殆どが女性だ、女王の儀式だからなのか、この国が女系の血を継承する文化なのか、どちらにしろ濃い香水の臭いで頭がクラクラだった。
「さて、そろそろ入って、いいかな」
「入ったら窓、開けようぜ」
「サンセー、あ、私、お姫様見てない」
「そんな美人いなかったぜ」
お姫様が美人かどうかは置いといて、女王が高齢で王位を譲るのだから、お姫様はそれなりの年齢だと思う。
「すごい、窓が光ってるよ」
「上のシャンデリアもだ、どうなってんの?」
「魔導具じゃよ、魔法陣で光るように出来ている」
「じゃあ、あの大きい石が魔石ですか?」
「そうじゃな、しかし随分、大きい魔石じゃ」
「どこで採れるのですか?」
「作るのじゃ、魔力を集めて結晶化させる。そなたの師匠の得意分野じゃろう」
「そうですね、まだ教えてもらってないので」
まだまだ勉強不足、魔力を結晶化させるって事は、魔力でダイヤを結晶化させる事と似ていると予想は出来る。
「夜と言っても長いぜ、どっから来るか分らない敵を待つのか」
「ここにいる兵士は定期的に交代をする。その時におかしな魔力をした者がおれば、わしが指を差す」
「あとは、窓を割って侵入するかな」
「アレクはそんな侵入方法はした事ないですよ」
出入り口は正面のみ、窓は換気が終わり中から鍵を掛けている。
玉座に置いてあるティアラは偽物なので、なんだか気合が入らない。
ガッシャーン!!
ガラスが割れる音が響く、男が窓のガラスを割り侵入した。
白い髪に灰色の肌、大剣を持っている。ハイドに似ているが別の魔族だ。魔族?
「ほう、初めて見る魔力の流れじゃの」
「師匠、あの人アレクじゃないです」
現われた魔族に全員が警戒する。
魔族はゆっくりと顔を横に振り、周りの状況を確認している様子だ。
「思ったより少ないじゃん、予告状の効果なしか、まいっか」
魔族は近くにいたヴァンに襲い掛かった。
ヴァンも剣で応戦するが、大剣と片手剣では分が悪く押されている、僕とアグレイさんが弓で援護、魔族は矢をかわす、エミリさんが長剣で切りかかる、ヴァンも隙を狙い攻撃を仕掛ける。
魔族は飛び、シャンデリアにつかまる、僕は矢を放つも、素早く飛び移り僕の後へ、僕は剣を抜き振り返る。『後にはリコがいる』
「凄いじゃん、ヒヤッとしたぜ、見ての通り休憩だ」
魔族はリコの腕を掴み剣を突き付けている。
震えるリコを見ながら僕は後悔した。
僕は完全に調子に乗っていた、自分が成長して強くなり大抵の敵は倒せると思い込み、自分の推測で勝手に敵が魔族でないと判断して、自分の大切な人を危険にさらしてしまった。
「その子を離せ、卑怯だぞ」
「月並みなセリフだな、大勢で待ち構えるのは卑怯じゃないのか」
「それも月並みなセリフだけど、僕と一騎打ちで勝ったらティアラを渡すよ」
「タイマンか悪くない」
「ショウ!勝手に決めるな、相手は魔族だぞ」
僕の暴走を止めようと、エミリさんは僕の横に駆け寄った。
ヴァン、テルも近づき魔族を包囲する構えだ。
「僕の名前はショウ、おまえは?」
「ブロッケン、外野はさがりな、タイマン始めっぞ」
卑怯でも何でも構わない、リコが助かればそれでいい。その後で全員で戦えば必ず勝てる。
「さがってください。エミリさんは弓をお願いします」
僕は弓と矢筒をエミリさんに渡した。
剣での戦いに集中させる、隙を突いて弓で攻撃すれば・・・。
「おっと、弓は捨てろ、特に後の男エルフ!弓の弦を外せ」
「皆さん、僕の一族の誇りにかけて、手出し無用でお願いします」
「ハハハ、ウソが上手いな、残念だがお前達が異世界人だと知ってるよ」
「!・・・・・」
リコの腕を強く引き、リコを盾にするように立たせた。
ブロッケンの後には出入り口のドアがある。今は閉ざされているが、用事がある時はノックをしてドア越しに会話をする約束になっている。
一瞬でも隙が出来れば・・・。
「やれやれ、精鋭が警護をするって聞いたから、のぞきに来たのに」
1人の兵士が鎧を外しながら、魔族に近づいて行く。
「何だ、キサマ、状況が見えてないのか」
「見えてないのは君だよ、僕の事を忘れたのかい」
兵士は兜を外した。
黒髪のロングヘアー、切れ長の目、整った容貌、どこか冷たい印象がする美少年が現われた。
「誰だ、キサマ、会った覚えは無いぞ」
「僕のお宝を横取りしたのは君だろ」
「そうか、おまえがアレクか」
「泥棒として、横取りは許されない。他人の名前を語るなど以ての外」
アレクは正体を明かしながら魔族に近づいて行く。
突然アレクの姿が消え、ブロッケンの後に現われた。
「・・・何だ、何をした・・・ぐっ」
「女性には優しく丁寧に、無骨な君にはお仕置きが必要だね」
「・・・クソ!・・・ぐっ」
アレクが近づくとブロッケンが苦しみだした。
誰もが状況を理解出来ず立ち尽くす中、ルキアが僕の後へ来た。
「あれは『拘束の魔法』あいつは動けないから、助けるなら今だよ」
僕が前に出るとアレクがブロッケンの大剣を奪い、リコを解放した。僕はリコの手を引き後へさがる。
「さてと、お仕置きと言っても僕は泥棒、何を盗もうかな、目と鼻と耳、どれがいい?」
静まり返った大広間、廊下を走る足音が次第に大きくなる。




