宝石泥棒は恋敵(4)
広間には赤い絨毯がしかれ、正面の階段状の台の上に豪華な椅子が1つ、明らかに玉座と分る。
「皆さん、ようこそ玉座の間へ、これから作戦を話す、こちらへ」
総司令官のドレーゼンさんが広間の横の部屋を指差した。
広間の両側に小部屋がいくつもあり、各種儀式や式典を進行する為の準備室になっている。今回は会議室として使うように、テーブルとイス、玉座の間付近の見取り図が用意されていた。
「まずは今回、宝石泥棒の予告状の説明をしよう」
予告は今日の夜、ティアラに付いている貴石ティアストーンを狙う内容だった。
現在、女王は高齢のため、王女に王位を継承する儀式の最中で、明日の戴冠式の為、今夜ティアラは玉座の上に置かれる。よって今夜が最も警備が手薄になる。儀式の内容を知る者は多く、また儀式の準備をする者も大勢いる。
「つまり、城内の誰かに入れ替わっていると考えられる」
見取り図には、侍女の待機室や警備兵の立つ位置まで、細かく書かれている。
「そこで、マナには外の見回りを担当してもらっている。彼女は魔力を見分ける能力があるからだ」
「ほう、魔技師に必要な能力じゃな」
「そう、トロア殿には玉座の間で魔族を見分けて欲しい」
「良かろう、こちらの希望は少数精鋭の警護じゃ」
「見取り図の位置に兵士を置かねばならない、これは伝統だ、変更はしない」
「兵士が20人、わしらを入れて30人ほどか、まあ良かろう」
「次に、冒険者チームには、各窓を担当して、侵入と脱出に備えて欲しい」
「私は戦闘できないよ」
ルキアの魔法は主に回復と防御で、直接戦う職業ではない。
「では、そこをアグレイ殿にお願いできますか?」
「ああ、構わないさ」
「ルキア殿は遊撃部隊として活躍してもらおう」
「は~い」
「助手の方々もルキア殿と同じく遊撃部隊、基本はこの形で宜しいかな」
「構わんが、もしティアストーンを奪われた場合はどうする」
「守るべきは貴石ティアストーン、他は壊れても修復可能、そこで」
ドレーゼンさんが宝箱を取り出した。
箱を開けると中にはティアラ、プラチナの装飾に無数のダイヤモンドが散りばめられ、中央には格段に大きなダイヤモンドが輝いている。
「ほお、これが貴石ティアストーン、見事な・・・」
「師匠、これは・・・」
「水晶じゃの」
「やはり、分りますか。危険を避ける為、偽者を作らせたのだが」
万が一の為に偽者と差し替える予定にしていた。しかし、ダイヤと水晶では簡単に見破られる為、中止になった作戦らしい。
「あっさり見抜かれては、中止して正解でした」
「あの、本物そっくりに出来れば、ダイヤを作れば、良いのでは?」
「ダイヤを作る?」
「はい、ダイヤモンドは炭素、木炭があれば作れます」
「錬金術はそんな事が可能なのか!」
「材料があれば、結晶化させられます」
直ぐに、兵士を走らせ、大量の木炭が届いた。
普通の木炭は炭素だけでなく、油分も含んでいる為、まずは油を分離して純粋な炭素を作る。錬金術で高圧力状態を維持し変形させる。
「この偽者のティアストーン、外して良いですか?」
「ああ、問題無い」
「この形と大きさを見本にします」
ダイヤモンドは固く割れ易いので、形を決めてから結晶化させる。こうして人工ダイヤのティアストーンが完成した。
水晶と比べれば格段の煌き、あとはティアストーンの台座に戻して固定をする。
「どうですか?本物と比べて」
「ああ、驚くほど遜色ない」
みんな驚いている。
簡単そうに見えるかもしれないが、高圧力状態を維持し変形させるのは、高度な技術を必要とする。修行の成果です。
「ショウちゃん、私と結婚して!チートな錬金生活のスタートだよ!」
「ルキア、何言ってるの?意味が分らないよ」
「ショウ君、エルフはいつまでも若い姿でいられる。娘を選んではどうかな」
「アグレイさんまで、何言ってるの?」
「ちょっと待って!私達、婚約してますから」
「それは、正しい」
「まだ正式な婚約では無いだろう、選ぶのはショウだ」
「エ?エミリさんまで!」
「静かに!」
ドレーゼンさんの声で混乱が収束する。
本物そっくりなティアラが完成したため、替え玉作戦が実行された。
「この作戦は他言無用で頼む」
「もちろんです」
ドレーゼンさんは宝箱にティアラ入れ部屋を出る。
僕達は近衛兵の案内で王宮の外、近衛兵の待機施設で夜を待つ、王位を継承する儀式の準備に多くの人が働いている。
「午後から式典だって、俺達は待つだけか」
「式典の最中は限られた人しか入れないらしい」
「その時、取られちゃったりして」
「マナが見張ってるよ」
「アレクは予告通り来ます。夜と言ったら夜です」
サンドラは過去のアレクの事件についてを話した。
武器を使わず、誰も傷つけず、目的の宝石だけを盗む姿を冒険活劇のように語っていた。トロアさんが不機嫌なのは分るが、ヴァンも不機嫌そうだった。
「ヴァンとテルも片手剣なんだ、いつもの武器は使わないの」
「宮殿内はルールがあるみたいで、ショウが弓を持ってる方が不思議だ」
「門で足止めされた理由がそれじゃろう、エルフは特別かな」
「ドレーゼンとは、彼が若い頃に縁があってね」
「へー、どんな縁ですか?」
「なに、さほど面白い話しではないよ」
遠くから、太鼓やラッパの音がする。
現在の女王が次の女王に席を譲る為、王を辞める式典が行なわれている。式典の最後に、ティアラは玉座の上に置かれる。
厳粛な式典が続く中、僕達は身の上話しをして仮眠をとった。
ショウの装備
鉄の弓
木の矢(10本)
黒い矢(1本)
片手剣(白夜)
短剣(補助装備)
布のシャツ
皮のベスト
七分丈ズボン
ぴったりしたソックス
鉄のこて(弓術士用)
皮の靴




