ドラゴン襲来(3)
「お~い、ショウ!おまえも来たのか」
パストーレに着いたのは日が暮れてからだった。何度も馬車が穴にはまって、予定より遅くなった。
食事に出かけると仲間達がいた、既に出来上がってる。
「討伐には行ってないね、良かったよ」
「なんで、行ってないって、わかる?」
「ヴァンが生きてるから」
「ショウちゃん、それ正解」
「大変だったのよ、見るだけとか言って」
「遠くからは見たけどな」
偵察と称して、ドラゴンに近づこうとするヴァンを、みんなで止めたらしい。
僕はドラゴンとの交渉の経緯を話し、必要があれば逃げる為に戦うと伝えた。
「戦わないのか」
「数を考えてよ」
「また数が増えて、今は15体だ」
「え!増えたの」
「きのう、飛んできたよ」
パストーレに現われたドラゴンは全て、全体的に黒い色をしていて腹部は白っぽい、背中から羽が生えている北欧神話に登場するタイプだった。
同種族が同じ場所に集まるのは、何か理由があるはず・・・。
「ねえ、ショウ君、何かあったの」
「ん、なに、考え事してた」
マナが心配そうに話す。
「ショウ君の魔力が前に会った時より、強くなってるの」
「修行の成果かな、でも最近、疲れが取れなくて」
最近の修行の内容を話した。
やはり耐性を高める訓練の話しは、みんな驚いていた。
「イイなぁ、美人とSMプレイか」
「サイテー」
「変な言い方するなよ」
「ショウ君、魔力の話しだけど」
マナは僕の魔力が強すぎる、と指摘した。
平常時なのに多量の魔力が外に出ている状態で、以前会った魔族みたいで気味が悪いらしい。
「無駄使いが多いって事?」
「そんなに出し続けたら、疲れて当然よ」
「どうしたら、いいの」
「それはね、魔力のコントロール、人それぞれ違うけど」
魔力は出したり、引っ込めたりするもので、必要な時に必要な量を出す練習をする。羽など軽い物を息で吹いて浮かせる時、強くても弱くてもいけない。
自分で試行錯誤してコントロールする感覚を身に付ける。
「私は、お料理の塩加減に似ている、と思うの」
「女の子だね、料理で例える」
「私は、ポテチの袋を開ける時の力加減、と思ってるの」
「普通に開くだろ」
「弱すぎると開かない、強すぎると中身が・・・。ごめんね、僕はルキアの例えが分りやすい」
「大丈夫、人それぞれだから」
他にも瞑想をして心を見つめるなど、練習方法を教えてもらった。
「基礎練習をしないで、耐性強化とかしたから、バランスが悪くなったのかな」
「耐性は興味あるけど、鍛え方が怖いよね」
「火傷って、回復魔法でも治りにくいよ」
「あ!リコちゃんが、料理してると熱い物を持っても平気になるって言ってたな、弱火から始めても効果があるかも」
「リコちゃんって誰だ」
会話に入れなかったヴァンが突っ込んできた。
「隣の道具屋さんの娘」
「可愛いのか」
「うん、まぁ、付き合ってるから」
「え!」
「おい、ショウ、ちょっと待て」
さっきまで黙って酒を飲んでいたテルが立ち上がった。
「それは、彼女が出来たって意味か」
「そう、そうだけど」
「なんでだよ、ショウばっかり」
今度は頭を抱えて座った。
「テルちゃん、フラれたの」
「そう、なんだ」
心中お察ししますと言いたいが、今はそっとしておこう。
「俺も彼女欲しいな」
「風俗でお金使いすぎて、人から借りる人は、一生無理ね」
「完全に話しが脱線してるけど、明日の事を話していいかな」
話しを変えたかったが、リコちゃんの事や、結婚するのかなど、質問攻めになってしまった。
「ショウちゃん、ロリコンなんだ」
「なんとかワイセツ罪で逮捕されろ」
「この国では15歳で結婚するし、エッチはしてないよ」
「キスもしてないの」
「それは、したけど」
「なんだ、そっちの方は俺が先輩だな」
「サイテー」
ヴァンは王都の風俗の良さを語り始めた。
ルキアの右ストレートが鮮やかに顎をとらえた。
「おはよう、は、腫れてるよ」
「ショウ、回復薬くれよ」
僕はヴァンに回復薬を渡した。
この国では、朝食を食べる文化がない、昼と夜の2食だけで生活している。しかし、今日はドラゴンと戦う可能性もあるので、宿の主人に朝食をお願いした。
「スープとパンなら用意できるって」
「なんで昨日、頼まなかったの」
「ヴァンとテルを運んだら、忘れてた」
「すまん」
ヴァンは気絶して、テルは酔い潰れて、不機嫌な女子達は放置して帰った為、僕が2人を宿へ運んだ。
王都に住んでから男子達の素行が目立つと、女子達の愚痴を聞かされた。
「交渉は僕1人で行くから、みんなは離れた所で待ってて」
「1人で大丈夫」
「大勢で行くと、警戒されるよ、きっと」
「防御魔法、かけてあげるね」
ルキアもいつの間にかスキルが上がっているようだ。
「で、ドラゴンはどこにいるの」
「直ぐ近くよ、町の外れから見える」
「・・・近いね」
ドラゴンの群は町の外れの牧草地にいた。
約1㌔ぐらい先に集まっている、時々飛び立ったたり、力比べをしているのか組み合ったり、見ていて飽きない。
「観光の目玉になりそうだね」
「下手したら食われる観光地って」
「人間が食われた報告は聞いてないよ」
「食べられたのは家畜だけよ、戦いを挑んだ冒険者は黒こげにされたらしいけど」
「やっぱり、炎、吐くんだ」
「見てみたいな」
縁起でもないと思いながら、仲間を残してドラゴンの元へ行く。
「ほんとに大丈夫なの」
「ああ、危なそうだったら逃げるよ」
上手く交渉する自信はあった。
セシリアさんから竜族の基本情報は聞いている、まだ肌寒い早朝ならドラゴンの動きも鈍いはずだ。
遥か上空を元気に飛び回るドラゴンを見ながら、高まる不安と共に歩いて行く。




