不便な捜索隊(4)
「はい、すみません、僕の不注意です」
「で、リコはダリルと一緒なんだな」
「ギルドの受付の人の話しだと、間違いないと思います」
「思いますじゃ、困るんだよ」
「はい、すみません」
リコちゃんの家出が発覚して、トーマスさんがアルストリアを探し回った。疲労と心労で寝込んでしまい、エミリさんがポルトトへやってきた。
僕の出した手紙は、あと2日で届く予定なので、心労の回復になるはずだ。
しかし、現場の状況は最悪で、リコちゃんを見失ったのは昨日、今は夕方だ。
「ギルドの人にダリルの居場所を聞いたのか?」
「それが、居場所はわからないです。冒険者に連れられてダリルが来て、リコちゃんと出て行ったらしく、依頼完了になっていました」
「その冒険者は?」
「それも、わかりません、常連の冒険者ではなっかったそうです」
「手がかりなしか」
「はい、すみません。昨日の夜遅くまで、必死に探したんですけど」
別々の受付の人が対応したので、正確な情報ではない。
リコちゃんが知らない人について行くはずがないので、ダリルで間違いないと思う。あの子を信じるしかない。
「宿に荷物を置こう、リコの部屋はそのままなのか?」
「昨日、戻ったら荷物がなくなってました。部屋は継続で取ってます」
「よし、リコの部屋は私が使う、まずは夕食だ」
宿に荷物を置き、エミリさんが調べたレストランへ向かう。
以前に行ったエミリさんおすすめの店と違い、メニューを見ている間も、美味しい香りが空腹の体を刺激している。
「ご注文は、お決まりですか?」
「注文は私に任せてくれ」
「どうぞ」
「名物の貝料理を3種類、単品で、ポルトト海老の姿蒸し、それと・・・」
すべて単品で9種類、パンとワインも頼んでいた。
エミリさんは普段、たくさん食べる人ではない。観光ガイドブックに載っている料理をすべて注文して、写真を撮るしあわせ者に見えてきた。
「そんなに食べられます?」
「ショウが頑張ってくれ」
「そ、そんな」
「支払いも頼む」
「そ、そんな」
「レストランでは、男が払うのが常識だぞ」
どこの世界でも常識だが、注文の仕方が気に入らない。
案の定、エミリさんは出てきた料理を少しずつ食べて、残りは僕の所に送ってきた。
「海は貝料理だな、次は貝のスープかな」
「まだ、注文するんですか」
「いや、次の店だ」
「リコちゃん探しは、どうするんですか」
「探す必要がない」
「?え?」
リコは宿に荷物を取りに戻って、自分の意思で出て行っている。もし、誘拐ならそんな事は出来ない。リコの目的はダリルと結婚すること、両親の許しをもらうため、アルストリアへ帰るはず。
これが、エミリさんの予想だった。
「お金が足りなかったら、帰れないですよ」
「何の為に、おまえがここに来たんだ」
「あ、そうですね」
「おまえは、勘が冴える時と、抜けてる時の差があるな」
明日、船着場で2人の情報を聞いて、船に乗っていれば任務完了、乗っていなければ観光をしながら捜索すると決まった。
不便な捜索がエミリさんのおかげで、気楽な捜索に変わった。
「次は、上等のワインを出す店だ」
「まだ、行くんですか?飲みすぎですよ」
「ショウちゃん、こういう時は、楽しまないと、損だぞ」
「次で、最後ですよ」
長年、同じ町に住んでいると、知り合いが多くなってしまい、羽目を外してお酒が飲めなくなる。旅行先で無茶をする人が多いのは、そのためだ。
このエルフも同じ状態だ。
「いいワインだろ」
「いい香り、フルーティーな香りですね」
「来て良かった?」
「最高です」
「なぁ、ショウ、何日か遊んでから、帰えろっか」
キャンドルが揺れるカウンター、まったりした時間がワインと共に流れていく。
「ショウ、起きろ、朝だぞ」
「うーん、おはよう、ございます」
「寝ながら言うな、起きて」
「はい・・・あれ?エミリさん?」
「鍵をかけないなんて、無用心だぞ」
昨日は遅くまでお酒を飲んだため、鍵も着替えもしないで、そのままベッドへ直行して、寝てしまったらしい。
僕は財布を確認した。
「大丈夫です、あります」
「しっかり、してくれよ」
「あれ?お金がかなり減ってます」
「早くしないと船が出るぞ」
お金が減ったのは、エミリさんのせいだ。昨日、いくら使ったか覚えていない。
船着場へ行き、2人の情報を聞いた。
僕は船員に聞き込み、エミリさんは乗船手続きをする列を捜索した。
「いないな」
「昨日も乗ってないそうです」
「そうか、昼に行く店は決まっている」
「僕のこづかいが・・・」
「10Gも稼いで、しみったれた事を言わない」
昼間では時間があるので、観光をしながら捜索する。
商店街を食べ歩きをしていると、人だかりを見つけた。
「なんだ?」
「掲示板に張り紙が出てるみたいです」
「ショウ、持ち上げてくれ」
エミリさんのお尻を肩に乗せ、ゆっくりと立ち上がる。
「うーん、子供、人さらい、3から、拘束、注意、自警団か」
「エミリさん動かないで下さい」
「もういいぞ、わかった」
掲示板の内容は、
『ポルトトに子供をねらった人さらいがでた、犯人は3~5人で1人は拘束したが、残りはまだ町にいる可能性があるため、注意するように 自警団』
と言う内容だった。
「あ、自警団にダリルを捕まえてもらう依頼、出したままだった」
「おまえ今回は、ぬけてるなぁ」
急いで自警団の詰所へ向かった。
詰所の周りには、臨時の対策本部が出来ていて、捜索エリアを支持する人、武器を持って整列して作戦を聞いている人達、他にも多くの人が話し合いをしている。
「これは、ダリルどころでは・・・ないですね」
「・・・・・」
「明日にします?」
「・・・・・」
「エミリさん・・・?」
「・・・・・ショウ、すまない、ぬけていたのは私だった」
「?え?」
エミリさんは対策本部へ歩き出した。
途中、団員の人が止めようとしたが、かまわず進んで行く。団員の人はおびえて何も出来ない、怖い方のエルフになっている。魔力が怖い。
対策本部の人達も警戒し始めた。
「ダリルに会わせてくれ」
「急にどうされましたか?エルフのお嬢さん」
「ここに、ダリルという男が捕まっている、彼と話しがしたい、会わせてくれ」
対策本部の人達は顔を見合わせている、周りの団員も注目している。
「すみません、この男を探してまして、ここにいませんか?」
僕はダリルの人相書きを、見せながら言った。
「君達は、こいつと知り合いか?」
「ダリルは店のお金を盗んで逃げたんです。主人に連れて来るよう言われて」
「あれ、君はあの男を探していた」
ダリルの人相書きを渡した団員が出てきた。
「この少年です!間違いありません!」
「やはり仲間だったか!捕まえろ!」
武器を持った団員に囲まれた。
僕達は観光気分だったので、武器は宿に置いている。あっさり逮捕され、地下の牢屋へ連れて行かれた。
『やはり、ショウは冴えている』
エミリさんは、そう言って笑っていた。




