不便な捜索隊(5)
エルフは目がいい、耳もいい、鼻は?と聞いたら、犬じゃないと怒っていた。人間には聞こえないが、地下にいるダリルの声を聞き取ったのだろう。
自警団は事情聴取もしないで、僕達を地下の牢屋へ入れた。
薄暗くカビ臭い牢屋は、半地下になっていて、壁の上部に小窓があり、鉄格子が掛けられている。そこから光と空気を取り入れている。
「まったく、こんな若いのが、人さらいの仲間とは・・・」
そう言って、団員は地下から出て行った。1人も見張りはいない、牢屋の中だが、安易に犯人を放置してはいけない。
「ダリル!いるんだろ、返事しろ」
「だ、誰?」
「薬局のエミリだ」
「え!エミリさん!」
「リコはどこだ?」
「・・・・・」
「答えろ、答えたら助けてやる」
「お、俺は悪い事はしてない・・・勘違いなんだ」
ダリルの説明は無駄に長かった。(以下要約)
ポルトトで知り合った冒険者と遊んでいた、冒険者から自分を探す依頼あると聞いた、見付かったふりをして報酬だけもらう予定でギルドへ行った、リコがいたので俺の女!的なノリで遊びに行った、冒険者から紹介された店に行った、怖い人達に囲まれてリコが連れて行かれた、自分は逃げた、店を出たら自警団に捕まり、事情を話したら人さらいと勘違いされて牢屋に入れられた。
つまり、リコちゃんは人さらいに連れて行かれ、現在の居場所は不明。
「ショウ、すまん、ダリルに会えばリコも見付かると思ったが」
「橋渡し役をした冒険者の、居場所はわかりますか?」
「冒険者?ナイスの事か?あいつはイイ奴だぜ」
僕とエミリさんは、思わず顔を見合わせた。
『ダリルって、想像以上の・・・』
『子供の頃から知ってるが・・・』
「そのナイスさんは、どこにいますか?」
「仲間は売れないよ」
『ショウ、無駄だ、あいつは馬鹿な上に頑固だ』
「ナイスさんを助けたいんですよ」
「え!あいつもヤバイのか?」
「はい、早く助けに行かないと、居場所を知ってるのは、ダリルさんだけです」
「そうか・・・でも、牢屋にいたら、助けれないぞ!」
「くっ・・・・・」
「エルフを甘く見るな、おまえも出してやるから、居場所を教えてくれ」
「さすが姉御!ナイスは冒険者をしながら、夢を追いかけてるんだ」
ダリルの説明はイライラさせられた。(以下要約)
ナイスとは飲み屋で知り合った、金持ちで酒にも女にも強い、俺もモテるがあいつはすごい、2人でナンパをすれば無敵、ナイスは領主に雇われているスゴイ奴、俺はスゴイ人と仲良くなるスキルがあるはず、(省略)
つまり、ナイスは領主に雇われている冒険者で、ポルトトの北にある領主の別宅に住んでいる、金のためなら何でもする奴で、人さらいの橋渡し役をした可能性が高い。
エミリさんは、ダリルが意味不明な自慢話しをする度に、知らない言葉で文句を言っていた。
エルフ語だ。今度、教えてもらおう。
「領主に雇われている、これは嘘だな」
「そうですね」
「あいつはウソは言わないよ、領主に逆らった商人を、捕まえたのは奴だぜ」
「本当ですか!」
「決まってるだろ、俺も手伝ったし」
僕とエミリさんは、思わず顔を見合わせた。
『これは、闇が深そうだ』
『リコちゃんを優先して、他には踏み込まない方が・・・」
『そうだな、深追いは危険だ』
「なぁ、そろそろ出してくれよ、知ってる事はしゃべったよ」
「わかった、今から開ける」
そう言って、エミリさんは小窓の鉄格子を両手でつかんだ。
「あ・・・、ショウ、おまえがやってみろ」
「?え?」
「鉄格子を壊して、逃げ道を作る」
「どうやって?」
「鉄格子は何で出来ている?」
「鉄、です。あ!わかりました」
僕は小窓の鉄格子を両手でつかんだ。
一昨日、矢の先を丸くした要領で、錬金術を使い鉄の棒を丸くする。丸と丸が接した場所は点、簡単に鉄格子が折れる。
鉄格子3本、6箇所に錬金術を使い鉄格子を折る。
「優秀だな、私が出る幕がなっかた」
「手が届かない、だけじゃ・・・」
「行くぞ、肩かせ」
エミリさんを肩に乗せ小窓へ送る、窓の外は裏庭で誰もいない。地下からダリルの声が聞こえるが、無視して塀を乗り越える。
「あいつ、リコの事を心配してなかった」
「彼を助ける必要が無いと思います」
「牢屋に何年いても、反省しない奴は反省しない」
宿に戻り、武具を装備する。
ダリルが言った領主の別宅の場所を聞く、領主の別宅は客人を招いてパーティーを開くための場所で、普段は警備の衛兵がいるだけで冒険者が出入りする必要はない、本邸の間違いじゃないかと、親切な宿の主人が教えてくれた。
「ダリルの言った事が間違いなかったら、衛兵も敵になるぞ」
「作戦を考える必要がありますね」
別邸の門の前には衛兵が2人立っていた、笑顔で近づき話しかける。
「こんにちわ、ナイスさんに言われてきました」
「ここは領主様の邸宅だ、子供が来る所ではない」
「ナイスさんが、ここにこの子を連れて来いって、領主様に雇われている冒険者のナイスさんですよ」
衛兵の1人が門の中に話しかけた、中にも1人いた。
エミリさんはフード付きのマントで、エルフのとんがり耳を隠している。誰が見ても人間の少女に見える。エルフの長剣は僕が持っている。
門の中にいた衛兵が奥に走っていく。
「確認する、しばし待て」
「はーい」
しばらく待つと、別の男がやってきた、用心棒ですと言っているような、強面の顔をしている。こいつがナイスか、女性にモテる顔ではないが。
「こんにちは、言われた通り連れて来ました」
「どうして、ここがわかった」
「地元で知らない人はいませんよ、領主様に雇われるって、あこがれます」
「そうか」
男は門に近づいて、エミリさんの顔を覗き込む。ニヤリと笑い、衛兵に耳打ちをした。
門が少し開き、入れと指示される。
「こっちだ、ついて来い」
男の後に続く。
別邸は豪華な作りで、庭も美しく整備されている、武具を装備した冒険者は、この場所にふさわしくない。
男は館の正面を素通りして歩いていく。
『ショウ、館の中には人はいない、裏手に数人と馬車がある』
男は館の裏手へ歩いていく。
大きな倉庫があり、その前に黒いホロの馬車が1台止まっている。馬の横に男が1人、奥に荷物を運ぶ男が1人見えた。
「ナイス、おまえのツレが上玉を連れてきたぜ」
「誰だ?そいつ等?」
エミリさんは僕が持っていた、エルフの長剣を抜き、男2人を峰打ちで叩き伏せる。
僕は荷物を運ぶ男の足元に矢を射る、男は驚いて尻もちをついた。
「動かないで下さい、次は当てますよ」
「外の奴らを見ててくれ」
そう言ってエミリさんは、馬車の荷台へ入った。
リコちゃんと女の子が2人、エミリさんと降りてきた。3人とも怯えた表情をしている。
「怪我はない、衛兵に気づかれない内に、早く帰ろう」
その時、倉庫の中から剣を持った男が飛び出してきた。
「エミリさん!」
僕は男に矢を放つ、矢は男の喉を射抜いた。男は膝から崩れ落ち、動かなくなった。
僕は人を殺した。




