不便な捜索隊(3)
「それって、犯罪ですよね」
「しかし、商工ギルドの為なんだ、頼むよ」
僕に依頼の話しをしたのは、冒険者ギルドの所長ガルドスさんだ。
依頼の内容は、昨日の夜に商工ギルドの所長バザロさんが、領主と揉めて投獄された、そのバザロさんと連絡を取る為に、牢屋の窓へ矢文を射ってほしい。
という内容だった。
「もっと、良い方法があると思いますけど」
「今日の夕方までに、確実に金庫を開ける方法があれば、是非!賜りたい」
「面会は」
「申請を出して、翌日だ、申請が通る保証もない」
「・・・・・」
「考えうる事は、既に試している、直接連絡を取るしかないのだ」
バザロさんが投獄され、ギルドのお金を入れている金庫が開かなくなった。金庫の鍵は所長が管理する決まりで、保管場所はバザロさんしか知らない。
さらに、今日は領主へ税金を支払う日で、夕方までに納めないと未払いになり、滞納税が上乗せされてしまう。
「今は衛兵の詰所にいるが、移送されたら手が出せなくなる、領主はわざと投獄期間を延ばして、滞納税をたんまり払わせるつもりだ」
「僕の安全の保証は?」
「私が保証する、いや、ポルトトのギルド全体で保証する」
「・・・・・わかりました、やります」
「恩にきる!」
さっそく、総合能力値の測定が始まる。
測定が無くても依頼は受けると言ったが、無料にすると言われて従った。
報酬は10G、ありがたい報酬だが、下手をすれば僕が投獄される危険な依頼だ。
「登録名、ショウ、年齢、15歳、男性、職業、弓術士、レベル25、体力」
登録名 ショウ
年齢 15歳 男性
職業 弓術士
レベル 25
体力 84
魔力 89
武術スキル
弓術 74
魔弓 42
剣術 38
体術 38
魔術スキル
光魔法 65
闇魔法 22
火魔法 31
水魔法 28
風魔法 53
土魔法 45
学術スキル
言語 58
数学 85
化学 89
天文学 69
地質学 51
「以上、総合能力値ランクC」
ランクが上がっていた。錬金術のスキルは無かったのが、残念だった。
スキルとは関係ないのかな。
「信じ難いスキルだな、君は何者なんだ」
「錬金術師見習いです」
「錬金術師!見習いで、このスキル」
「ショウさん、すごい人なんですか?」
「お嬢さん、ランクCは中堅冒険者だよ、すごい人だよ」
「真ん中ですごい?」
「15歳で中堅冒険者は、普通では考えられないよ」
「そうなんだ」
「この魔弓とは、どんなスキルかな」
魔弓とは、エミリさんが洞窟で使った技だ。
初歩は錬金術で作った矢を射る技だが、極めれば魔力を矢に宿して、通常よりも強力な攻撃が可能だ。
「ガルドスさん、急いでるんじゃ」
「そうだ、後でゆっくり教えてくれ」
こうして、商工ギルドの所長バザロと連絡を取り、金庫の鍵の保管場所を聞き出す、矢文作戦が始まった。
矢文作戦の内容は簡単だ。
まず、商工ギルドの職員が、所長に会わせろ!と衛兵の詰所に押しかける。
衛兵達の注意を引き付けている隙に、矢文を牢屋の窓へ射る。
バザロさんが鍵の保管場所を書いて、矢文を外へ投げる。
それを回収して、鍵を手に入れ、金庫を開ける。
僕とガルドスさんは矢を射る場所へ行き、待機する。
「高い塔ですね、距離も遠い」
「バザロは頑丈な奴だ、矢が当たっても平気だ」
「大丈夫です、先は丸めてます」
「準備が良いな、塔の最上階、鉄格子のある窓だ」
「はい・・・・・」
「頼むぞ!君の腕にかかっている」
「・・・・・」
「見ろ!詰所前に人だかりが出来たぞ!」
「・・・・・」
「見張りの注意が」
「ガルドスさん、集中させて下さい」
僕は今まで、弓術士には魔法は必要ないと思っていた。
しかし、風を感じ風を読む力は、魔力が上がると高くなっていった。強く矢を射るだけでなく、風の中へ矢を流すイメージが生まれた。
風の中を漂う木葉
連れ去られて行くのかい
連れて行って貰うのかい
大きなうねりの中
ヒラリと舞う姿は
悲しいの 楽しいの
目的地はここ
高く舞い上がった矢は、窓の鉄格子の隙間へと流れて行った。
「見事だ!」
「ふぅー」
「あとは、バザロの手紙を受け取るだけ」
しばらく待つ、動きがない。
僕としては、早く現場から立ち去りたいが、ガルドスさんは固唾を呑んで見守っている。
ガルドスさんが走り出した、鉄格子の隙間から矢文が落とされた。
「バザロは鍵を持ち歩いていた、自宅やギルドを探しても見付からない訳だ」
「上手くいって、良かったです」
「この町の商人、全部の税金が滞納になるところだったよ」
「全部の税金?」
「あ、いや、助かったよ」
安心して、うっかり口を滑らせた様子だ。
商工ギルドが税金を集めて、領主へ支払う仕組みだったら、滞納税はすごい金額になると想像できる。
冒険者ギルドに着くと、ガルドスさんが右手のこぶしを高く上げる。
職員全員から大きな拍手が起こる、事情を知らない冒険者達も、つられて手を叩いている。
英雄の凱旋のようだ、この人は何もしていないが。
「報酬を用意します、少々お待ち下さい」
「くれぐれも今回のことは、内密に頼むよ」
「もちろんです」
ガルドスさんは、そう言ってギルドの奥へ消えた。
受付の女性から報酬をもらい、待たせていたリコちゃんと・・・。
「すみません、一緒に来た女の子は?」
「さっき、男の人と出て行きましたよ」
「・・・・・」
ダリルと悲恋のヒロイン両方を、探す破目になってしまった。




