不便な捜索隊(2)
港町ポルトとは、活気のある町だ。
漁を終えた漁師達が、昼間から酒を飲み。交易の仕事を終えた商人達が、夕方から酒を飲む。
「日が暮れる前に、宿を探そう、ダリルさんを探すのは、明日にしよう」
「はい、宿代は持ってきました」
「僕が出すよ、後でトーマスさんに請求するから」
「そうですか」
リコちゃんは、銅貨を何枚か持っていたが、足りるはずがない。
宿屋で個室を2部屋とり、食事に出かける。
「ダリルさんは僕が必ず連れて帰るから」
「いえ、私も一緒に探します」
「トーマスさんが心配しているよ」
「嫌です」
船の中でも言ったが、答えは変わらなかった。
食事を終え、宿に戻り、リコちゃんが部屋に入ったのを確認して、再び外へ、漁師が酔いつぶれ、商人が盛り上がる夜の町を、ダリルを探して歩いく。
ダリルは胸元を大きく開けた派手シャツを着て、貧相な胸板を強調して歩くので、人混みの中でも目立つはず。
船の中で計算したら、明日までに見付かれば、3人分の船代がギリギリ足りる。
まずは、自警団の詰所へ向かう、自警団とは警察と消防の機能を合わせた民間の警備団体で、地元の有志で構成されている。揉め事を起こした人を逮捕、拘束する事もあるので、ダリルがお世話になっている、可能性がある。
「知らないなぁ、そんな派手な奴、いやでも目につくが、見てないなぁ」
「そうですか、もし見付けたら、捕まえてください」
「何かやったのか?」
「店のお金を盗んで、逃げたんです」
「それなら、衛兵の詰所へ行きなよ」
「主人が事を大きくしたくない、と言ってまして」
「若いのに大変だね、仲間にも伝えておくよ」
「ありがとうございます」
人相と特徴を書いた紙をわたす。ダリルに悪いかなと思ったが、実際に店のお金を盗んでいるし、自警団に捕まれば、こちらの仕事が早く終わる。
衛兵の詰所へ行き、同じように特徴を書いた紙をわたす。衛兵には、母が病に倒れたので、急ぎ探していると伝えた。
その後、町を歩き回ったが、見付けられず宿に戻った。
捜索2日目。船は朝、出港するため早起きして船着場へ、アルストリアへ行く商人のおじさんに手紙を渡す。
「お金は魔女の薬の店主にもらって下さい」
「かまわんが、困っているなら、船に乗せてあげようか」
「セシリアさん、あ、店主に頼まれた仕事があるので」
「そうか、若いのに大変だね」
商人のおじさんはリコちゃんをチラ見しながら、心配してくれた。
河を上るため、帰りの船は5日かかる。
リコちゃんの家出が発覚して、すでに4日目、トーマスさんが心配して、こっちに向かっていれば、今日の夕方か明日の夕方、到着するかもしれない。
電話がないと不便だ。
冒険者ギルドへ行き、登録と依頼を出す。
「証明書の有効期限が近いですね、再測定されますか?」
「いえ、人探しが終わったら帰るので」
「かしこまりました、発見者への報酬は1Gで、本当によろしいですか?」
「はい、お願いします」
「では、報酬と手数料で120Sです」
手数料は20%上乗せなんだ、初めて知った。
同じ依頼を商工ギルドにも出すため、歩いているとリコちゃんが遅れ始めた。
「大丈夫?」
「はい、すみません」
「商工ギルドに依頼を出したら、休憩しよう」
商工ギルドは流石、港町!と思わせる、でっかい碇のマークが書かれた看板をかかげていた。職員も多く、みんな忙しそう。忙しすぎるのか、受付に人がいない。
「あの!すみません!」
「悪いが明日にしてくれ!」
怖いくらいの勢いだ、仕方なくギルドを出て、喫茶店へ。
オープンテラスの喫茶店は見晴らしも良く、人探しには最適だ。
「ハーブティーをお願いします」
「あの、クッキー頼んでいいですか?」
「滞在費が増えたから、駄目」
「ご注文、なさいますか?」
「ハーブティーだけで、お願いします」
僕はリコちゃんには、わざと冷たく接している。
もちろん、『もう、帰りたい』待ちだ。
しかし、悲恋のヒロインは頑固なようで、意地でもダリルに会うつもりらしく、今も待ち行く人の流れから、ダリルを探している。
見た目は大人しい印象で、紺色のワンピースが学校の制服に見えてくる。こんな清楚な子が男を探して、家出をするなんて・・・・・
「リコちゃん、学校は?」
「?学校?王都にある?」
「あの、読んだり、書いたりを学ぶ場所」
「父や母に教わるので、貴族の子供なら、教育係りがいますけど」
「大勢で集まって、学ぶ場所はないの?」
「ギルドで、してますよ。でも、あれは小さい子用です」
「そうなんだ」
世間話が出来るほど、この世界の常識を知らない。
普通の中学生とも、会話が続くはずがない、どんな質問をしたら良いのか。
「ショウさんは王都出身ですか?」
「王都には、いたけど出身ではないかな」
「王都って、どんな所ですか?どんな物が流行ってますか?」
「いや、そんな、長くいなかったから」
話しを誤魔化しながら、変な汗を掻く。
生まれたのは王都だから出身地でいいのか、そもそも外に出てないから、詳しく聞かれたら答えられない。出身地を聞かれたら、アルスウエストと答えよう。
「あ、いた!君のこと探してたんですよ」
「え?僕ですか」
「証明書をもう一度、見せて下さい」
「はい、どうぞ」
冒険者ギルドの受付にいた女性が、僕を探していたようだ。
女性は証明書の弓術スキルを指差しながら言った。
「すみません、このスキル、上がってないか、確認してもらえます?」
「えっと、今、74です」
「すみません、ギルドで証明書の再測定をしてもらえませんか?」
「あぁ、今、持ち合わせが、少なくて」
「依頼を受けて下されば、報酬は測定料より高いですよ」
「どんな、依頼ですか?」
詳しくは冒険者ギルドで話すと、強引に連れて行た。
冒険者ギルドに着くと、奥の部屋へ通された。赤い絨毯、立派なテーブルとソファーがある、応接室だろう。
しばし待つと、立派なヒゲをたくわえた男性が入って来た。体格も立派で、見るからに強そうだ。
なんだか、嫌な予感がする。




