第7話 保健室の緊縛指導(感度3000倍の服装検査)
【完全体サキュバス:レディ・ドロップ形態】
世界から、一切の色彩と音が消え去っていた。
朝の眩しい太陽の光は、怪しく蠢く深紫色の魔力の霧へと取って代わられ、登校中だった生徒たちの姿も綺麗に消失している。
私が展開した、現実世界から隔離された固有結界——
『閉鎖空間』。
その妖しい霧の中心で、私はいつも通りの地味で冴えない姿ではなく、肌を大胆に露出した妖しい光沢を放つ漆黒のドレスと、顔を覆う艶やかなバタフライマスクを身に纏っていた。
「な、なんなの、これ……っ! 離しなさいよ、あんた誰なわけ!?」
私の腕の中で、クラスのトップギャルである軽井沢莉愛さんが、見たこともないような怯えた表情で暴れている。
そう、私は今、莉愛さんを横抱き——いわゆるお姫様抱っこの状態で、無重力のように軽々と抱え上げていた。完全体となったサキュバスの筋力は、女子高生一人を運ぶなど造作もないこと。
「おとなしくしていなさい、可愛い迷子の子猫ちゃん」
自分の口から出たとは思えない、低く、気だるげで、それでいて鼓膜を甘く震わせるような大人の女性の声。
内面の私は(ひえええ! 私、今ものすごい恥ずかしいセリフ言ってますよぉ!?)と大パニックを起こしていますが、表に出る『レディ・ドロップ』の肉体は、どこまでも冷徹で妖艶な支配者の微笑みを崩さない。
「っ、あんた……っ」
至近距離で見つめ返すと、莉愛さんは私の圧倒的な美貌と、身体から溢れ出る濃厚なサキュバスのフェロモンに気圧されたように、カッと頬を赤らめて言葉を詰まらせた。
彼女は、目の前の漆黒の美女が、まさか自分がいつも「ジメ子」と呼んで見下している「潮見雫」だとは、微塵も気づいていない。
私はそのまま、無人の保健室へと足を踏み入れ、莉愛さんを真っ白なベッドの上へと優しく投げ出した。
* * *
「ここ、保健室……!? 一体何をする気よ……っ!」
ベッドの上で身を硬くする莉愛さんを見下ろし、私は指先を優しく不気味に突き出した。
「これより、不純な身なりで学園の風紀を乱す不届きな生徒への……『服装検査および指導』を行います」
「はぁ!? 服装検査ぁ!? あんた先生でも何でもないじゃん! 冗談じゃないわ、アタシ帰る——」
「逃がしませんよ?」
私がパチンと指を鳴らすと、背後の虚空から、赤紫色の妖しい光を放つ「魔力の縄」が、蛇のように這い出てきた。
私のサキュバスとしての具現化能力だ。
「いやっ、何これ、動けなっ、ひゃんっ!?」
莉愛さんが悲鳴を上げる間もなく、魔力の縄は彼女の細い手首と足首に絡みつき、ベッドの四隅にある金属製のパイプへと引き絞った。
ガシャリ、と冷たい音が響き、莉愛さんの身体は完全に大の字の形でベッドの上に拘束されてしまう。
短いスカートが捲れ上がり、健康的な太ももが露わになった。
【現在の残量リビドー:65%】
(うわあああ! 本当に縛っちゃいましたよ! 紡ちゃんが見たら『シルエットが最高にエモいですぅ!』とか言って卒倒しそうな、ものすごいハレンチな光景です……!)
「く、苦しくはないけど……なんなのよこの縄、全然力が入んない……っ。ねえ、離して、お願いだから……っ!」
いつもは強気で、私を顎で使っている莉愛さんが、涙目で私を見上げて懇願してくる。そのギャップが、私のサキュバスとしてのサディスティックな本能を、これ以上ないほどに刺激した。
「ふふ、そんなに怯えなくても大丈夫ですよ。……ただ、少しだけ『敏感』になってもらうだけです」
私は莉愛さんの胸元にそっと手をかざし、魔力を流し込んだ。
「——能力発動。【感度3000倍】」
「ひゃぅあッ!!??? な、なに、これ……からだ、が……熱っ……!?」
莉愛さんの頬が、一瞬にして林檎のように真っ赤に染まった。
空気の揺らぎ、ベッドのシーツの感触、そして私の視線——そのすべてが、彼女の脳内に3000倍の狂おしい刺激となって突き刺さる。
「さて、まずは制服の乱れからチェックしましょうか」
私はベッドの横に膝をつき、莉愛さんのローファーをそっと脱がせた。
ただ靴を脱がされただけだというのに、莉愛さんは「ひゃんっ!」と短い悲鳴を上げて、背中を弓なりに反らせた。
「あ、足の裏……さわら、ないでぇ……っ! お願い、ひぃ、くすぐったい、じゃなくて、なんか、変な感じがぁ……ッ!」
「おやおや、靴下を脱がせただけでそんなに声を上げて。次は、その短いスカートの奥……不純な下着のチェックですね」
「下着……っ!? なんで、そんなこと——」
「知っているんですよ? あなたが、その制服の下に……ピンクと黒の、とてもハレンチな『ゼブラ柄の下着』を着用していたことを――さて、今日はどんな柄なのか、確かめさせてもらいますよ?」
「えっ……!? な、なんで……それを……っ!?」
莉愛さんの目が驚愕に染まる。
昨日、写真部で暦さんから見せられた隠し撮り写真の成果が、ここで最高の精神的ダメージとして炸裂した。誰にも見せていないはずの秘密のパンツを言い当てられ、莉愛さんのプライドは完全に崩壊した。
「さあ、お仕置き(指導)の時間です」
私は莉愛さんのスカートの裾を、ゆっくりと、容赦なく押し上げた。
現れたのは、昨日写真で見た通りの、肉感的な腰回りを彩る派手なゼブラ柄の下着。
私はその布地の上から、莉愛さんの最も敏感な場所へと、容赦なく指先を滑らせた。
「——ッ!!!???」
莉愛さんの声が、あまりの衝撃に消失した。
感度3000倍に跳ね上がった彼女の秘丘に、サキュバスの極上の愛撫が叩き込まれる。
「あ、が……あ、あああーーーーーっ!!! ひゃぅ、無理、無理ぃぃぃ!!! 壊れちゃう、からだ、溶けちゃうぅぅぅ!!!」
「ふふ、まだまだこれからですよ? ほら、ここがとても熱くなっています。全然ギャルらしくない、可愛い鳴き声ですね」
「んぅぅぅーーーっ! 離し、てぇ……っ、もう、ダメ、おねがい、許してぇ……あ、あんっ!」
指先から微量の魔力を流し込みながら、布地の奥の柔らかい肉を、なぞり、弾き、執拗に弄んでいく。
莉愛さんは首を左右に激しく振り、おさげ髪のように結った髪を乱しながら、シーツをクシャクシャに掴んで悶絶した。
彼女の強気な瞳からは、ボロボロと大粒の涙が溢れ出している。
(ひゃはーーーっ! 指先から莉愛さんの甘いエネルギーが、そして極上の快楽が伝わってきます! ギャルをフニャフニャのトロトロにして泣かせるの、最高に気持ちいいです……!)
「あああーーーっ! くる、なんか、すごいの、きちゃうぅぅ! ゆるして、お姉さま、アタシ、もう、おかしくなっ——」
「イきなさい、良い子ですから」
私が最後に指先を強く押し込むと、莉愛さんは「ひゃああああああああーーーーーっ!!!」と、保健室の天井を突き破らんばかりの甘い悲鳴を上げて、激しく身体をビクンビクンと痙攣させた。
ガシャガシャとベッドが激しく音を立て、莉愛さんの身体から、目に見えるほどの真っ白な快楽のエネルギーが霧となって立ち上り、私の体内へと吸い込まれていく。
数秒間の激しい絶頂の後、莉愛さんは「はぁ、はぁ、はぁ……」と、完全に魂を抜かれたような顔をして、ぐったりとベッドに沈み込んだ。
その下着の奥は、指導の成果によってぐっしょりと濡れそべっている。
「……ふぅ」
私は指先を舐め、ふ艶やかな笑みを浮かべた。
莉愛さんに、絶対に忘れることのできない極上の快楽を、その身に刻み込んであげたのだ。
【現在の残量リビドー:0%】
【警告:リビドーが空になりました。強制変身解除を行います】
と、その瞬間。
私の身体を包んでいた漆黒のドレスとマスクが、霧のように霧散していった。
それと同時に、莉愛さんを縛っていた魔力の縄も消え失せ、周囲の紫色の閉鎖空間が、ガラガラと音を立てて崩壊していく。
「あ、あれ……?」
気が付けば、私はいつもの地味なジメ子の姿に戻り、朝の木漏れ日が差し込む、普通の静かな保健室のベッドの横に突っ立っていた。
ベッドの上では、下着を露出させたまま、完全に意識を失ってすやすやと眠りこけている莉愛さんの姿。
私は我に返り、あまりの恐怖にガタガタと震え出した。
(や、や、やってしまいましたあああああ!!! 何ですか今のドSなお姉様は!? 私、クラスのトップギャルを保健室で緊縛して、とんでもないハレンチな指導をしてしまいましたよぉ!!!)
しかも、リビドーゲージは完全にゼロ。
変身を維持する力すら残っていない。
(うぅ、力を完全に使い切ってしまいました……。こんなに派手に魔力を解放してしまって――もしこの学園の近くに、私たち悪魔を狩る『天使』が潜んでいたとしたら、一発で察知されてしまうリスクが急増するというのに……!)
私は大急ぎで、眠っている莉愛さんのスカートを直し、制服を元通りに整えると、急いで保健室を脱出した。
キーンコーンカーンコーン……。
無情にも朝の一限目の予鈴が響き渡る。
私は激しい自己嫌悪と、いつ正体がバレるか、あるいは天使に見つかるかという恐怖に心臓をバクバクさせながら、冷や汗を流して一限目の現代国語の教室へと向かうのだった。




