第22話 レディ・ドロップの抜き打ち検査と、生徒会室の秘密
【現在の蓄積リビドー:120%】
(限界突破・サキュバス強制起動)
「あ、あら? 潮見さん……? なんだか急に、雰囲気が……?」
私の顔面をその豊満な胸に抱きとめていた生徒会長、天ヶ瀬清子さまが、怪訝そうにその美しい眉をひそめた。
――これから変身が始まる。
彼女の胸の柔らかさと、そこから香る極上の甘い匂いによって、私の中の『リビドーゲージ』は完全に許容量を突き抜けてしまったのだ。
ドクン、と熱い鼓動が全身を駆け巡る。
次の瞬間、私の内側から溢れ出した濃厚な紫色の魔力が、爆発的に生徒会室へと広がった。
「な、何よこれ……!? 身体が、動かない……っ」
壁際で私を睨みつけていた副会長の御園絵里香さまが、突然室内に満ちた圧倒的なプレッシャーに息を詰まらせ、その場に膝をつきそうになる。
ふふっ、ふふふふふ。
ジメ子としての卑屈な精神は、瞬く間に無意識の海へと沈んでいく。
代わりに鎌首をもたげたのは、傲慢で、奔放で、美しいものを蹂躙することにこの上ない悦びを感じる、サキュバスとしての本能。
「ごきげんよう、可愛い小鳥たち。ちょっとおイタが過ぎるんじゃないかしら?」
私の口から、ジメ子のものとは明らかに違う、低く艶やかなハニーボイスが零れ落ちた。
* * *
ゆっくりと立ち上がる。
紺藍色のショートボブは魔力で妖しく波打ち、瞳は淫靡なピンク色へと染まっている。背中には漆黒の悪魔の羽、お尻からはハート型の尻尾が、まるで意志を持つかのように気だるげに揺れていた。
サキュバス・レディドロップの再臨である。
「ひっ、化け物……っ! 清子から離れなさい!」
絵里香さまが必死に私を拒絶しようと叫ぶが、もう遅い。
私が指先をチリン、と鳴らすと、生徒会室の全ての窓とドアがバタンと音を立てて閉ざされ、外の光を遮断した。室内は、私の魔力だけが支配する不謹慎な絶対結界へと作り変えられたのだ。
「えっ、なにこれ……!? 一体、何を……っ」
「きゃああっ!?」
絵里香さまと清子さまの身体が、不可視の魔力の鎖によって引きずられるようにして、バチンと背後の壁際に押し付けられた。両手を頭上に固定され、完全に身動きが取れない状態で並べられた二人の美少女。
「さあ、生徒会の厳格なお姉様方? 抜き打ちの『身体検査』の時間ですよ♡」
* * *
【現在の蓄積リビドー:100%】
私は猫背を完璧に正し、妖艶なプロポーションを誇示するように優雅な足取りで、壁際に拘束された二人に歩み寄った。
日頃から生徒の規律を厳しく取り締まり、私のような日陰者を廃部に追い込もうとする、百合ヶ丘高校の最高権力者トップツー。
そんな彼女たちが、今や私の前に完全に無防備に晒されている。このシチュエーションだけで、リビドーがさらに発酵しそうだ。
「な、何を、するつもり……潮見さん、いえ、あなたは何者なの……っ」
清子さまが、恐怖と混乱に濡れた黒曜石の瞳で私を見上げる。さっきまで私を優しく抱きしめてくれていた胸が、今は恐怖で激しく上下していた。
「私はただの通りすがりの一般市民よ、清子さま。あなたたちに虐められている写真部員を哀れに思って立ち寄ってみたの。それで――日頃から『校則違反』を厳しく取り締まる生徒会が、まさか自分たちは不健全なことをしていないわよね? ……というチェックを、今からしてあげようと思って♡」
「ふざけないで……っ! こんな無礼な真似をして、タダで済むと思っているの!?」
隣で銀髪を振り乱しながら、絵里香さまが般若のような形相で私を睨みつける。
彼女の冷徹なプライドが、この理不尽な状況を許せないと激しく拒絶していた。
「うるさい口ね、絵里香ちゃん。お仕置きの順番を早められたいのかしら?」
私がフッと微笑みながら彼女の滑らかな顎を指先で撫で上げると、絵里香さまは屈辱に唇を噛み締め、ぷいと顔を背けた。
その白い首筋が、微かに赤らんでいる。
「それじゃあ、まずは百合ヶ丘高校の象徴、清子さまから校則チェックといきましょうか」
私は清子さまの目の前に膝をつき、彼女の紺色の制服スカートの裾に、ゆっくりと両手をかけた。
「や、やめて……見ないで、一般市民さん……お願い……っ」
清子さまのピュアな懇願。
それがかえって私のドS心に火をつける。
じわじわと、布地をたくし上げていく。
現れたのは、雪のように白い、眩しすぎる太もも。
そして、そのさらに奥。
品行方正で、全校生徒の模範であるはずの天ヶ瀬清子が穿いていたのは——。
「あらあらあら……? 随分と、情熱的なものを穿いているのねぇ?」
清楚な外見を完全に裏切る、鮮やかなバラ色。
シルクの光沢を放ち、ふんだんに最高級のレースがあしらわれた、大人の色気たっぷりの『真っ赤な高級ランジェリー』だった。
「ひゃんっ……! ち、違うの、これは、その……っ!」
秘密を白日の下に晒された清子さまは、顔をこれ以上ないほど真っ赤に染め、涙目を潤ませて身をよじった。
* * *
「素晴らしいわ、清子さま! 普段の生真面目さの裏に、こんな熱いパッションを隠していたなんて! これぞギャップの極み!」
私は魔力で空中に一眼レフカメラを浮遊させ、パシャパシャとマルチアングルからその破廉恥な姿を激写し始めた。
「さあ、次は絵里香ちゃん、あなたの番よ」
「くるな、この変態! こんな真似は今すぐ止めなさい! 校則違反など一切——」
問答無用で、絵里香さまのスカートを一気に捲り上げる。
その瞬間、私は思わずシャッターを切る手を止め、目を見開いた。
「……嘘、でしょ? 絵里香ちゃん、あなたって人は……!」
「くっ、み、見るな……っ、早く下ろしなさい!」
絵里香さまが顔を真っ青にして叫ぶが、私の目は誤魔化せない。
クールビューティーで、規律の鬼である御園絵里香が穿いていたのは。
布地がほとんど存在しない。
細い紐だけで腰を締め付け、お尻の肉をこれでもかと大胆に強調する、極限まで面積の狭い『黒いレースのTバック』だった。
「ぷっ、クハハハハ! Tバック!? あの堅物副会長がTバックですって!? これ、校則違反どころの騒ぎじゃないわよ、完全に対象年齢オーバーじゃない!」
「ち、違う……! これは、お尻のラインが制服に出ないようにするための、機能的な、その、合理的な選択で……っ、ぁああっ! 見ないで、撮らないでぇぇ!!」
* * *
ついに絵里香さまの鉄のプライドが完全に崩壊した。
彼女は銀髪のハーフアップを振り乱し、子供のように大粒の涙をためて恥じらいに震えだす。
「はい、お二人とも、もっとくっついて♡ 最高の百合写真を世界(私のフォルダ)に残しましょうねぇ!」
ここからは、レディ・ドロップによる至高の撮影会(お仕置き)の始まりだった。
カメラを縦横無尽に走らせながら、私は二人の敏感な太ももや腰のラインに、指先からほんの少しだけサキュバスの痺れるような魔力を流し込んでいく。
「ふぁっ……!? んんっ……、あ、熱い、の……っ♡」
「く、悔しい……っ、身体が、変に、熱くて……ひゃんっ!♡」
厳格な生徒会のトップ二人が、壁に縛られたまま、淫靡な魔力に翻弄されてハモるように甘い悲鳴を上げる。
真っ赤なランジェリーと黒いTバック。
対照的な二つの秘密がファインダーの中で絡み合い、これ以上ないほどに不健全で、芸術的な光景を作り出していた。
カシャシャシャシャシャシャシャ!!
シャッター音は鳴り止まない。
私の脳内麻薬は完全にドバドバと分泌され、二人の極上の恥じらいの表情を、私は一瞬たりとも逃さずにカメラに収め続けた。
* * *
【現在の蓄積リビドー:0%】
(完全なる賢者モードへ)
「はぁ……。また、やってしまいました……」
夕暮れの茜色の光が差し込む、誰もいない校舎の廊下。
私はいつもの極限まで猫背を丸めた「ジメ子」の姿に戻り、重い三脚とカメラバッグを肩にかけ、トボトボと力ない足取りで歩いていた。
生徒会室での激しいお仕置き撮影会の後、リビドーを完全に使い果たした私は、急激な賢者モード(弱体化)へと突入した。
残った魔力を振り絞り、清子さまと絵里香さまの記憶を「生徒会室で潮見雫の処遇について話し合い、厳重注意で釈放した。写真部の廃部は保留」という風に曖昧に書き換え、二人をそれぞれの自宅のベッドへと転移させたのだ。
彼女たちが目を覚ます頃には、あの淫靡な時間は「妙にエッチでリアルな夢」として処理されるはずだ。
もちろん、カメラの中には、二人の衝撃的な下着姿のデータがこれでもかと保存されているのだが……。
「うぅ……胃がキリキリ痛みます……。いくら記憶を消したとはいえ、私は生徒会長と副会長にあんな破廉恥な真似を……。もし、もし魔法の効き目が甘くてバレたら、今度こそ私は刑務所行きです……」
自分のしでかしたことの恐ろしさに、今更になって凄まじい恐怖が押し寄せてくる。
サキュバスの力は便利だが、リビドーが切れて正気に戻った時の精神的ダメージが大きすぎる。私はただ、静かにパンチラの研究をしていたいだけの陰キャなのに、どうしてこんな大犯罪者みたいな綱渡りをしているのだろうか。
「ハァ……。お腹が空きました。早く家に帰って、温かいご飯を頂きたいですね。それから――お風呂に入って、引きこもって寝ます……」
夕日に照らされた自分の影を見つめながら、私は哀愁を漂わせ、独り寂しくトボトボと帰路につくのだった。




