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獣人しかいない世界で 僕は胃袋掴んで無双する  作者: けろ


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80.僕と、餃子と、新規出店計画

大型ショッピングモールに出店している『ししし屋』の業績は、開店以来、右肩上がりを続けていた。そんなある日、幸運なことに『ししし屋』のすぐ隣の店舗スペースが空いたという報せが舞い込んできた。

モール内の一等地。このチャンスを逃す手はない。僕はすぐに獅子丸食品のレミ社長に連絡を取り、スピード勝負でその物件を押さえてもらった。

「ヒロキ、あそこのスペースはどうするの? 『ししし屋』を広げて、もっとお好み焼きをたくさん焼けるようにする?」

書類を片手にそう尋ねるレミ社長に、僕はニヤリと笑って首を振った。

「ううん。あそこは『ししし屋』の拡大じゃなくて、あえて新しい業態のお店をやりたいんだ。名前は――『ししし餃子』。餃子の専門店だよ」

「ギョーザ……? あの、薄い小麦粉の皮でお肉と野菜を包んで焼くっていう、特別寮でこっそり食べさせてもらった、あの料理?」

レミ社長が驚いて目を丸くするのも無理はなかった。この世界において、僕たちの世界でいう『餃子』という料理そのものが、まだ一般にはほとんど浸透していない。

それなのに、認知度の低い料理の、しかも『専門店』として出店するというのは、飲食ビジネスの常識からすれば大いなるギャンブルに見えるだろう。

でも、僕には絶対の勝算があった。

まず、最大の武器はすでに僕たちの手の中にある。餃子のタネのクオリティを決定づける命とも言える野菜――それには、ハクさんから仕入れているグヌマー産のキャベツを100%使用する。

グヌマーの肥沃な大地が育てたキャベツは、肉厚で水分と甘みがとにかく強い。すでに『ししし屋』のお好み焼きや焼きそばでそのポテンシャルの高さは証明済みで、お客様からも「このキャベツ、シャキシャキしてて甘みが全然違う!」と大好評を得ていた。

あの極上のキャベツを細かく刻んで塩揉みし、ジューシーな豚肉、そして隠し味にこっそり忍ばせるのは――そう、あのハクさんのこんにゃくだ。細かく刻んで肉汁を吸わせたこんにゃくを混ぜ込むことで、喉詰まりの心配が一切ない、驚異的なジューシーさを実現した究極の餡。これをパリッと焼き上げたら、お肉が大好きな獣人たちが狂喜乱舞するのは目に見えていた。

そして、この『ししし餃子』における最大のウリであり、僕が最も挑戦したかった戦略。それが『冷凍餃子』のテイクアウト・物販ビジネスだった。

この世界には、僕の世界と同じようなコンプレッサー式の冷蔵庫や冷凍庫が、一般的な家電として広く家庭に普及している。けれど、僕の世界にあるような「電子レンジ」という便利な電化製品はまだ発明されていない。だから、冷凍食品をお弁当のように「チンしてすぐ食べる」という文化は存在しなかった。

だけど、餃子なら話は別だ。

「電子レンジがなくても、餃子くらいのサイズと調理法なら、お家のフライパンや鉄板でちょっと焼くだけだから、さほど手間じゃないはずなんだよね」

凍ったままの餃子をフライパンに並べ、水を少し注いで蓋をして蒸し焼きにする。仕上げにごま油を垂らして底をカリッとさせるだけ。特別な料理の技術がなくても、誰でも簡単に工場のプロの味を自宅で再現できる。

仕事帰りの労働者たちが、お店でアツアツの焼き餃子を食べて感動し、「これ、家で待ってる家族にも食べさせてあげたいな」と、レジ横の冷凍ケースから冷凍餃子のパックを買って帰る――。そんな光景が僕の頭の中にはっきりと浮かんでいた。

それに、家庭用の冷凍餃子がカントウの街で爆発的に売れれば、グヌマーに建設予定の獅子丸食品の新しい工場で、白虎族の若者たちに「餃子を包んで急速冷凍する」という大量の雇用を生み出すことができる。すべてが綺麗に繋がるのだ。

「……なるほどね。相変わらずヒロキの考えることは、規模が大きくてワクワクするわ! いいわ、その新業態、獅子丸食品としても全面的にバックアップする!」

レミ社長は嬉しそうに書類にサインを入れた。

こうして、まだ誰も見たことのない『ししし餃子』のプロジェクトが本格的に動き出した。オープンに向けて、餃子自動包み機もロンじいに増産してもらって、フル稼働させなきゃいけないし、なにより、あの厳しい目を持つハクさんや、優美林の食いしん坊な仲間たちを最初に唸らせるための、完璧な試作を仕上げなくてはならない。

「よし……カントウの街に、今度は餃子ブームを巻き起こして見せるぞ!」

隣の空き店舗の白いシャッターを見つめながら、僕は新しいエプロンの紐をきゅっと引き締め、未来の美味しい音に胸を躍らせるのだった。

レミ『テナントが空いたのは『ししし屋』が売れすぎた影響なことは、ちびっ子にはまだ理解できないかなあ?』

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