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獣人しかいない世界で 僕は胃袋掴んで無双する  作者: けろ


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70.僕と、餃子と、ニッチな機械

僕の頭の中はすでに『餃子ギョーザ』の販売計画で一杯だった。

けれど、特別寮でサリーと一緒に作った時に痛感した通り、餃子をビジネスとして展開する上での最大のネックは、あの「皮にタネを包む作業」だ。

一つひとつ手作業で包んでいては、連日長蛇の列を作る『ししし屋』で需要に応えられるだけの数を効率良く量産することなんて到底できない。

この圧倒的な手間の多さこそが、餃子を世に送り出すための最大の障壁になることは間違いなかった。

「……やっぱり、ここはあの人に頼るしかないな」

僕は仕上がったばかりの構想を抱えて、製麺機も作ってくれた天才職人、ロンのもとへと相談に向かった。

「何ぃ? 薄い小麦粉の皮で、細かく刻んだ肉と野菜の餡を自動で包み込む機械だと?」

ロンじいは偏屈そうな顔で白い髭をひねりながら、僕が持ち込んだ餃子のイメージ図を凝視した。

「そうなんです。売るだけの数を揃えるには、人間の手じゃ追いつかなくて。ロンじい、こういうのって作れそうですか……?」

てっきり難しいと一蹴されるかと思ったのだが、ロンじいはフンと鼻を鳴らした。

「機構的には、さほど難しい話じゃねえな。要はタイミングと型押しの問題だろ?」

ロンじいの頭の中では、すでに設計図が組み上がっているようだった。

彼が提案してくれた仕組みはこうだ。

機械の片側に練った生地をセットし、もう片側にタネをセットする。機械を動かすと、まず生地がローラーで薄く伸ばされて丸く型抜きされる。その円の中心へ、連動したノズルから餡が正確にぽとんと落とされる。そして次の瞬間、下から皮の縁を持ち上げるようにして、専用の金属型で一気にギュッと型押しして密閉する――。

「ただなぁ、ヒロキ。これもこの前作った製麺機と同じで、用途がニッチすぎる。一般の家庭に売り出したところで、毎日餃子を包む奴なんていやしねえからな。民生用としては全く商売にならんぞ」

「あはは、確かに。お店の厨房や特別寮用、つまり僕の専用機として使えれば十分ですよ!」

そうと決まれば、ロンじいの仕事は早かった。

驚くべきことに、それから「あっという間」に、僕専用の『餃子自動包み機』の試作第1号が完成してしまったのだ。本当にこのおじいさんの技術力はどうなっているんだろう。

「よし、それじゃあ早速試運転といこうか」

ロンじいの工房の片隅で、新マシンに生地とタネをセットし、レバーを入れる。

ガシャコン、ガシャコン、と小気味いい金属音が響く。薄く伸ばされた皮の上に餡が落ち、下から包み込むようなアームが立ち上がって型押しされた。

コロン、とトレイに転がり出てきたのは、見事に成形された餃子だった。

「おお……! ちゃんと包めてる!」

手にとって観察してみる。端の「ヒダ」に関しては、機械特有の規則正しい折り目がついているだけで、人間が作るような温かみのある手作り感には確かに欠ける。けれど、隙間なくきっちりと餡が包み込まれていて、これなら焼いている途中で肉汁が漏れ出す心配はなさそうだ。何より、このスピードで均一なクオリティの餃子が次々と量産されていく光景は、圧倒的の一言だった。

「ロンじい、これ凄いよ! さすがだなぁ。……よし、せっかくだから今ここで焼いてみよう」

僕は工房のフライパンを借りて油を引き、出来立てのメカニカル餃子を並べた。

じゅうじゅうと小気味いい音が響き、差し水をしてフタをする。ニンニクとごま油の香ばしい匂いが工房の中に充満していくと、それまで無表情だったロンじいの鼻がピクピクと動いた。

フタを開け、底をパリッと綺麗な黄金色に焼き上げる。

「はい、お待たせしました。ロンじい、熱いうちに食べてみて!」

僕は焼き上がった一皿を、醤油と一緒にロンじいの前に差し出した。

「ほう、これが『ギョーザ』か……」

箸で不器用そうに餃子を摘み、フーフーと息を吹きかけながら、ロンじいは大きな口でそれを一気に頬張った。

カリッ、モチッ、そして直後にジュワリと弾ける肉汁の音。

「――っ!?」

ロンじいの目が、驚きで丸くなった。

ハフハフと口を動かしながら、無言で咀嚼していく。そしてゴクリと飲み込んだ瞬間、彼は自分の手が作った『餃子自動包み機』と僕の顔を交互に見つめ、ニヤリと満足そうな笑みを浮かべた。

「おい、ヒロキ。この機械、民生用には出せねえと言ったが……頑固な職人じじいどもの夜食にとりあえず1台、裏で量産してやってもいいぞ?」

「あはは! 気に入ってくれてよかった!」

最大の障壁だった「包む作業」は、天才職人の力によって完璧にクリアされた。この『餃子自動包み機』があれば、お店での大量販売はもちろん、獅子丸食品の新しい一大主力商品として世界中に届けることだって夢じゃない。

このパリジュワの美味さがカントウ、そして世界中の食卓を席巻する日は、もうすぐそこまで来ている。僕は確かな手応えを感じながら、ロンじいと一緒に熱々の餃子を次々と口へ運ぶのだった。

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