表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
獣人しかいない世界で 僕は胃袋掴んで無双する  作者: けろ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
68/137

66.僕と、たこ焼き器と、ソースコンテスト

『ししし屋の塩ダレ』や『てりやきソース』の発売とほぼ同じタイミングで、ロンじいたちが裏で進めてくれていたもう一つの大プロジェクトが形になった。

それは、家庭用の『たこ焼き器・民生用セット』の発売だ。

これまでお店や実地研修の現場でしか見られなかったあの画期的な調理器具が、ついに一般の獣人たちの手に入るようになった。

しかも、ただ本体を売るだけじゃない。お店と同じように綺麗に丸くひっくり返せるように、特製の「ハケ」、お馴染みの「千枚通し」、そして「油を入れる専用の容器」までが最初から全て同梱されているという、至れり尽くせりのコンプリートセット。

これさえ買えば、その日のうちに家が『ししし屋』に早変わりするという優れものだった。

そして、この民生用セットの発売に合わせて、レミ社長と僕はある特大のイベントを仕掛けることにした。

それが『ししし屋』主催の『たこ焼き新ソースコンテスト』だ。

一般・プロの料理人問わず、獣人たちから、新しいたこ焼きのソースやタレのアイデアを大募集するこの企画。もちろん、僕たちの一番の狙いは「たこ焼きの新しい味を見つけること」だけじゃない。

「自分で新しい味を試作するためには、どうしても家でたこ焼きを焼く必要がある。そのためには、あの発売されたばかりの『たこ焼き器セット』を買わなくちゃいけない」という、家庭への普及をガツンと加速させるための、ちょっとしたビジネス戦略でもあった。

レミ社長も「コンテストにかこつけて器具を家庭に一気に浸透させるなんて、ヒロキ、お主も相当ワルよのう!」

「いやいや、社長ほどではございません。しししっ」と時代劇のようなやりとりがありつつ、告知用のポスターを貼り出した。

そのポスターに書かれた優勝賞品は、かなり豪華なものにした。

『たこ焼き新ソースコンテスト』優勝特典として

期間限定メニュー化考案したソースが、実際に『ししし屋』の店頭で期間限定メニューとしてお客様に売り出される。もしかしたらソースそのものの単体販売もあるかも。

特製ソース3点セット「1年分」。現在大ヒット中の『お好み焼きソース』『ししし屋の塩ダレ』『ししし屋のてりやきソース』を、なんと「1年分」まるごとプレゼント。

この告知ポスターが特別寮のリビングに貼り出されると、真っ先に食いついたのユイナだった。

「ひ、ヒロキくん……! 優勝したら自分の考えた味が本当にお店に並ぶと!? それに、あの美味しいソースが1年分も貰えるなんて、夢のようばい……!」

ポスターの前で拳を握り締め、目をこれ以上ないくらいキラキラさせて大興奮している。

しかし、ひとしきり感動したあとで、ユイナはふと真顔になり、人差し指を顎に当てて僕に振り返った。

「……あ、でもヒロキくん。ちょっと気になったっちゃけど」

「ん? なに、ユイナ」

「この『ソース1年分』の具体的な量って、一体どれくらいあると? ボトルで何本分?」

「えっ」

真っ直ぐな瞳で核心を突かれ、僕は思わず言葉に詰まってしまった。

確かに「1年分」と景気よく銘打ってはみたものの、それは毎日使う人の基準なのか、それとも一般的な家庭の消費ペースなのか。

ボトルにして何本分が「1年分のソース」になるのか、僕の頭の中でも、そして獅子丸食品の企画書でも、実はまだはっきりとした具体的な数値は決まっていなかったのだ。

「あ、あはは……それは、その……ほら、使う人の愛の量によって変わるというか、ね? ほら、とにかく『これでもか!』ってくらい大量に届くことだけは間違いないからさ!」

「? 愛の量……? よく分からんけど、とにかく一生分くらいドカンと届くってことね!」

「う、うん、まあそんな感じ!」

なんとかお茶に濁したけれど、ユイナの納得したようなし切っていないような顔を見て、僕は密かに冷や汗をかいていた。

後でレミ社長に連絡して、早急に「1年分=〇〇本」の法的な基準を決めてもらわなきゃいけないな……。

何はともあれ、この『たこ焼き新ソースコンテスト』の開催によって、世間は「新しい味のアイデア」を巡る熱い試行錯誤の空気に包まれようとしていた。

他社に奪われる前に、僕たち自身がもっと面白い流行を作っていく。民生用たこ焼き器を抱えた獣人たちが、どんな奇想天外なソースを生み出してくるのか、僕の胸は今から期待で高鳴っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ