64.アニーの、冒険と、カントウ上京物語
小学生の頃のウチいうたら、カンサイの野山をなーんも考えんと、ただ駆け回っとるようなガキやった。
勉強? そんなん全く興味なかったし、成績かていつもクラスでビリに近いとこやったんや。
中学生になったある日、近所に住んどった仲良しのお姉ちゃんが外国への留学を決めてな。お姉ちゃんは目を輝かせて、「カンサイ以外の国を見て回るのが夢やってん」って、めっちゃ興奮して語ってくれたんよ。
……せやけど、そのお姉ちゃんは、高校入学を翌日に控えた日に、居眠り運転のトラックにはねられて、そのまま帰らぬ人になってしもうた。
葬式で泣き崩れながら、ウチ、心に誓ったんや。
お姉ちゃんが叶えられんかった夢は、ウチが引き継ぐ。お姉ちゃんが見るはずやった世界を、ウチが見てやるって。
そこからはもう、人生で一番勉強した。今までの分を取り返すみたいに死に物狂いで頑張って、お姉ちゃんが通うはずやった『優美林女子高校』の留学生枠、見事勝ち取ったんよ。
そうやって意気込んでカントウにやってきたものの、最初はほんまに戸惑うことばっかりやった。
みんな歩くのは異様に早いし、街ですれ違う人もどこか余所余所しい。カンサイに比べて、カントウの人らはみんな冷たいんやなって、最初はちょっと寂しく思っとった。
そんなウチの心をガラッと変えてくれたんが、あの日、全然違う世界から来たヒロキっていう男の子に出会って食べさせてもらった「お好み焼き」やった。
カントウでまさかこんなもんが食べられるなんて思ってへんかったし、何より、その一枚がびっくりするくらい美味しくて……。
お姉ちゃんを亡くしてからずっと張り詰めてた糸がフッと切れたみたいに、ウチ、感動してボロボロ涙が止まらへんくなってしもうた。あの味と温かさは、一生忘れへんと思う。
せやけど、正直に言うとな……お姉ちゃんには申し訳ないんやけど、今のウチ、めちゃくちゃ楽しいねん。
この学校に来て、ヒロキに出会って、ウチが知らんこといっぱい知った。料理の楽しさも、新しい世界に飛び込むワクワクも、全部ヒロキが教えてくれたんよ。
……まぁ、その分、ちょっと困ったこともあるんやけどな。
ヒロキの周りには、ほんまに魅力的な女の子が多すぎる!
スタイル抜群で優しいサリーに、頭が良くて冷静なピピ。グラマラスでおっとりとした雰囲気が魅力的なアオイさんや、ナンゴクのユイナまで……。周りを見渡せばライバルばっかりで、ウチも のんびりしとったら置いてかれそうや。
『でも、この人についていけば、お姉ちゃんも見たことないような、もっと面白い景色が待っとるかもしれへん』
お姉ちゃんの夢を追いかけとるつもりやったのに、いつの間にかウチ自身の心臓が、見たことのない未来に向かってバクバク言っとる。
胸の高揚が止まらへん。ウチの新しい冒険は、これからもっと面白くなる。そう確信しとるんよ。




