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獣人しかいない世界で 僕は胃袋掴んで無双する  作者: けろ


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56.僕と、ショッピングモール進出と、メニュー会議

学食での試験販売の大成功は、すぐさま『獅子丸食品』のデータへと反映され、レミ社長の驚異的なトップダウンによって次の巨大なプロジェクトへと繋がった。

「ねえ、マジで学食の売り上げデータえぐいんだけどぉ! これ、もたもたしてたら他所に真似されちゃうし、一気に攻めるよ!」

レミ社長の決断により、獅子丸食品の全面バックアップのもと、カントウでも有数の大型ショッピングモールのフードコートに、初の本格的な粉もの専門常設店を出店することが決定したのだ。

しかも、メニューはたこ焼きだけに留まらない。

粉ものと言えばの代表格である『お好み焼き』、

そしてかつてピピのにんじん嫌いを克服させた、ジューサーミキサーによる特製『スムージー』もラインナップに加えることになった。

ガッツリ食べられて、冷たくてヘルシーな飲み物で締めくくられる、完璧な布陣だ。

放課後の特別寮のリビングには、再び大きなホワイトボードが持ち込まれ、2年生になったメンバーたちによる、細かいメニュー作りの開発会議が始まろうとしていた。

「ショッピングモールとなると、女子高生だけじゃなくて、小さい子供連れのファミリーからお年寄りまで、いろんな種類の獣人さんが来るからね。バリエーションが必要だよ」

たこ焼き、お好み焼き、そしてスムージー。

異世界の知識と、獣人たちのアイデア、そして獅子丸食品の資本力が合わさり、ショッピングモールを揺るがす新しい一大グルメブランドの種が、いま着実に形作られようとしていた。

数日後、新店舗のメイン看板となる「たこ焼き」のメニューを決定するため、僕は試食用として用意したのは毛色の違う3種類だ。

リビングのテーブルには、焼き立てで外側がカリッと仕上がったたこ焼きが、それぞれ異なるトッピングをまとって並べられた。

「よし、これが今回提案する3種類だよ。みんな、忌憚のない意見を聞かせてほしい」

アニーが「待ってました!」と一番に箸を伸ばした。

まずは、お好み焼き用と兼用で開発した特製ソースをたっぷり塗り、青のりと鰹節をかけた王道の味。

「んん〜っ! やっぱりこれや! 学食のときも思ったけど、この濃厚なソースとごま油の香ばしさは、もう鉄板の組み合わせやね。これは絶対に外されへんメインストリームや!」

アニーがハフハフと口を動かしながら太鼓判を押す。

続いて、たっぷりの白ネギを盛り付け、お酢、かつお出汁、塩、レモン汁、そしてごま油をベースに作った特製塩だれをまわしかけた逸品。

「あ、これ凄く美味しい……!」

ピピが丸メガネの奥の目を丸くした。

「ソースと違ってすごくサッパリしています。お酢とレモンの酸味があるから、ごま油のコクがあっても全然重くない。これなら何個でも食べられちゃいますね」

「本当だ、ネギのシャキシャキ感と、中から出てくるトロッとした生地の食感の対比が完璧ばい! ナンゴクの暑い夏にも絶対に売れる味よ!」

ユイナも小麦色の肌を綻ばせ、ナンゴク訛りで大絶賛だ。

最後に、しょうゆ、みりん、砂糖を絶妙なバランスで煮詰めた甘辛いてりやきたれに、みじん切りのゆで卵をこれでもかと乗せた、ボリューム満点の変わり種。

「なにこれ……! 悪魔の食べ物じゃん……!」

サリーが一口で頬張り、尻尾をプロペラのように激しく振り回した。

「てりやきたれの甘辛い味に、ゆで卵のまろやかさが絡みついて、口の中が旨味で大爆発してる! 育ち盛りの獣人なら、これ一皿で一瞬でハッピーになれるよ。ヒロキ、天才!!」

三者三様の仕上がりに、試食会は早くも大盛り上がり。

それぞれのメニューが別のターゲット層(王道のソース、大人・女性向けのねぎ塩、学生・子供向けのてりたま)に綺麗に刺さっている。

「ふふ、さすがね。これならレミも文句の付けようがないわ」

フェイ先生が炭酸水のグラスを片手に、満足げに微笑んだ。

「お好み焼きのソースと兼用できる『ソース味』でコストを抑えつつ、『ねぎ塩』と『てりたま』でしっかり単価を上げる。メニューとしてのバランスも商業的に完璧よ」

「よかった。じゃあ、たこ焼きのベースはこの3種類で決定だね。次はこれに合わせるお好み焼きのバリエーションと、ピピが考えてくれたスムージーの試作に移ろうか」

たこ焼きのメニューが決定したところで、開発会議の焦点は、ピピが監修を務める「スムージー」へと移った。

黒い丸メガネをくいっと押し上げ、ピピはホワイトボードの前に立つ。

「皆さんがたこ焼きやお好み焼きで濃厚な旨味を堪能した後に、口の中をリフレッシュさせ、かつ栄養を補給できる完璧なスムージーを3種類提案します」

そう言って、ピピは手元のジューサーミキサーを順番に回し始めた。ブースに爽やかな果物と野菜の香りが広がる。

まずピピが差し出したのは、柔らかなオレンジ色のスムージー。中身はバナナ、にんじん、牛乳、そしてはちみつだ。

「私がかつてにんじん嫌いを克服した、あのヒロキのスムージーの黄金比をベースに、牛乳とはちみつでより万人受けするマイルドな味に仕上げました。特にお子様連れのファミリー層に強く推したいメニューです」

次にサーブされたのは、女子生徒なら誰もが目を輝かせそうな、鮮やかなピンク色のスムージー。イチゴと牛乳という、絶対に外さない組み合わせだ。

「んん〜〜っ! 間違いないやつ!!」

サリーが尻尾を激しく振りながら、一瞬でグラスを空にする。

「イチゴのきゅんとする酸味と、冷たい牛乳のコクが最高! ソースまみれになった口の中が一気に甘酸っぱい幸せで満たされるよ!」

「これは見た目も可愛らしいし、ショッピングモールに買い出しに来る若い女の子たちに爆発的に売れそうやね」

アニーもストローを吸いながら、そのキャッチーな商品価値に太鼓判を押した。

最後にテーブルに並んだのは、目の覚めるような深い緑色のスムージー。小松菜とほうれん草の青菜コンビに、りんごを贅沢に合わせたものだ。

恐る恐る一口含んだユイナが、小麦色の肌をぱっと輝かせた。

「……! 見た目は完全に『葉っぱ』やけん、ちょっとビビったとけど……めちゃくちゃスッキリして飲みやすい! りんごのフルーティーな甘みと酸味が効いとるから、青臭さが全然なかね!」

「そうでしょう。小松菜とほうれん草で鉄分とビタミンをガッツリ補給しつつ、りんごペーストで極限まで飲みやすくしました。お買い物の休憩でリフレッシュしたい大人の方や、健康志向の獣人さんに最適です」

ピピの理路整然とした解説に、フェイ先生も「やるじゃない、ピピ。お肌の曲がり角な私にも、これは毎朝デリバリーしてほしいくらいだわ」と、絶賛した。

「すごいよピピ、どれも完璧なラインナップだ。お腹にたまるバナナににんじん、デザート感覚のイチゴ、そしてヘルシーなグリーン。これで粉ものとのバランスが完璧に取れたよ」

ヒロキの言葉に、ピピは黒い丸メガネの奥の目を嬉しそうに細めた。

たこ焼きの3種に続き、スムージーの3種も決定。

「さて、最後はお好み焼きだね。ショッピングモールのフードコートという場所柄、提供スピードやクオリティの安定性を考えると、あんまり奇をてらいすぎない方がいいと思うんだ。だから、メニューは厳選して2種類に絞ろうと思う」

その言葉にアニーが、黒髪ロングの三つ編みをきゅっと握りしめて力強く頷いた。

「大正解や、寮長さん! お好み焼きはな、ゴチャゴチャ弄るより王道をきっちり美味く焼くのが一番や。で、その2種類っていうのは?」

「うん。まずは絶対に外せない王道、『豚玉ぶたたま』。そしてもう一つは、豪華にイカとエビをたっぷり入れた『海鮮玉かいせんだま』。この2本柱でいこうと思う」

僕がホワイトボードに力強く書き込むと、待ってましたとばかりに歓声が上がった。

アニーが手際よくキャベツと生地を混ぜ合わせ、豚バラ肉を綺麗に敷き詰めてホットプレートでジューッと焼き上げる。

ひっくり返すと、豚肉の脂がカリカリに焼けた最高の狐色だ。特製ソース、マヨネーズ、青のり、かつおぶしが乗った焼き立てをサリーがハフハフと口に放り込む。

「んんんーっ! 豚肉の旨味のある脂が生地に染みてて、キャベツが甘くてフワフワ! やっぱりお好み焼きと言ったらこれだよね!」

続いて焼き上がったのは、大ぶりのエビと、プリプリのイカがゴロゴロと入った豪華な海鮮玉。

一口食べたユイナが、小麦色の肌を火照らせてナンゴク訛りを炸裂させた。

「ふぇーっ、これもたまらんばい! エビがぷりっぷりで、イカのコリコリした歯ごたえが最高。豚玉よりちょっとあっさりしとるけど、海の旨味が凝縮されとって、いくらでも食べられそう!」

「ええ、これはソースの濃厚さに負けないくらい、海鮮のダシが生地に出ていて素晴らしい完成度です」

ピピも丸メガネを光らせて太鼓判を押した。

「よし、これで全メニューが出揃ったね!」

ホワイトボードをポンと叩く。

フードコートのメニューとしては、これ以上ないほどシンプルで、かつ死角のない最強のラインナップが完成した。

「素晴らしいわ、ヒロキ、アニー、ピピ。これならすぐにでもレミにゴーサインを出せるわね」

フェイ先生が満足げに炭酸水を飲み干す。

ショッピングモール進出プロジェクトは、いよいよ本格的な開店準備へと動き出すのだった。

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