54.僕と、新年と、身長測定
「365日」の夜が明け、新しい年が始まった。
この世界の流儀に従い、今日から寮生は全員一斉に17歳となり、優美林高校の2年生へと進級した。
僕もこの世界の流儀に則り、今日から17歳とする。
そしてフェイ先生は25歳。「これ以上歳を取りたくないわ、お肌の曲がり角が怖い!」とリビングのソファで朝から頭を抱えて嘆いているが、相変わらずスタイル抜群で美しいままだから説得力がない。
新年を迎え、心機一転したところで、誰からともなく「せっかく歳を取ったんだから、身長を測ってみよう」ということになった。リビングの柱の前に、みんなが代わる代わる背中を合わせて立っていく。
ヒロキはまだ成長期ということもあり、測ってみると去年より1cm伸びて169cmになっていた。
「よし……! 169cmだ!」
ヒロキは小さくガッツポーズを決め、頭のパンダ耳をシャキッと立たせた。
(これで、ピピと1cm差だ……!)
去年まで170cmだったピピに、ついに肉薄した。今年こそは追い抜いて、男の意地を見せてやる――そう息巻いて、ヒロキは自信満々にピピを振り返った。
「さあ、次はピピの番だよ!」
「えー? じゃあ測ってみるー」
ピピは長い兎耳を揺らしながら、のんびりと柱の前に背中を合わせた。サリーが頭の上に定規を当てて、柱に目印を書き込む。その目印を見た瞬間、サリーが「あ」と声を漏らし、尻尾をパタパタと激しく揺らした。
「……ピピ、すご。めちゃくちゃ伸びてるよ、これ」
「え、本当?」
ヒロキが慌ててその目印を確認すると、そこには驚愕の数字が刻まれていた。
なんとピピ、この短い期間で驚異の成長っぷりを見せ、一気に175cmまで背が伸びていたのだ。
「ひ、175……!? 嘘だろ、一気に5cmも伸びたのか!?」
「あはは、本当だ! 兎族って、この時期に急にグンと伸びることがあるんだよね。ヒロキ、残念でしたー!」
ピピは175cmのすらりとした高身長から、いたずらっぽく169cmのヒロキを見下ろしてニカッと笑った。
1cm差まで詰めたはずが、気がつけば一気に6cm差まで引き離されてしまった。隣には176cmのユイナ、さらにその向こうには192cmのアオイの影がチラつく。この世界の女子たちの高身長スペックは、相変わらずヒロキの心をへし折りにくる。
「くっ……まだまだ、僕のほうが伸び代はあるはずだ。男の成長期はこれからだからね。来年こそは絶対に追い抜いてみせる!」
ヒロキが悔しそうに胸を張ると、アオイが「ふふ、ヒロキくんなら、きっとまだまだ伸びますよ」とおっとり微笑み、
アニーは「169cmでも十分男前やんか、気にせんと美味しいもん食べよ!」と笑い飛ばしてくれた。
背比べの騒ぎで、一気に賑やかになった新年の特別寮。
17歳になった2年生たちの新しい1年が、こうして騒がしくも温かい笑い声と共に幕を開けた。




