50.僕と、生徒名簿と、希少種族
試食会が終わり、お腹も胸もいっぱいの状態で寮の自室に戻った僕は、ベッドの端に腰掛けて優美林高校の生徒名簿を開いていた。
そこには生徒一人ひとりの顔写真と名前、そして「種族名」がずらりと記されている。
この世界に来てから、世界の獣人の種族分布にはそれほど国ごとの偏りがないと聞いていたけれど、名簿を眺めているうちに「それでも数の多い種族」のカラクリが見えてきた。
というのも、たとえば一口に『猫族』という括りで見ても、サリーのようにアメリカンショートヘア系の特徴を持つ獣人もいれば、耳が折れたスコティッシュフォールド系の獣人もいる。
それらが品種の壁を越えてすべて一括りで『猫族』とカウントされているのだ。必然的に、元の世界でいうところの「品種の多さ」が、そのままこの世界での「個体数の多さ」へと繋がっているらしかった。
その証拠に、この優美林高校だけに限って見ても犬族と猫族の割合は圧倒的で、全校生徒のじつに6〜7割を占めている。
ページをめくっていくと、アニーちゃんの属する『鼠族』とは別に、あえて『倉鼠族』と表記されている生徒の文字が目に留まった。
「『倉鼠』って……確か、元の世界でいうハムスターのことだったかな?」
同じ小動物系でも、ネズミとハムスターでしっかり区別されているのが面白い。意外と細かいこういう分類を見ているだけで、異世界の生態系への興味が尽きなくなってくる。
さらに読み進めると、『鰐族』や『亀族』といった爬虫類系の獣人もそれなりの数が存在しているのが分かった。彼らがどんな風に制服を着こなしているのか、今度校内で探してみたいところだ。
一方で、ふと目に留まった『鹿族』の生徒の顔写真を見て、僕は首を傾げた。写真を見る限り、頭部には角らしき器官がまったく見当たらないのだ。
名簿に『鹿』と書かれていなければ、人間の僕からしたら何族なのか見分けるのはまず不可能なレベルだった。
そして、最後に名簿の全体をもう一度見渡してみる。
「……やっぱり、大熊猫族は一人もいないんだな」
ちびっ子寮長としてみんなに弄られている僕(パンダ耳)だけど、優美林高校の生徒の中には同族はゼロ。そもそも僕は『人間』という、この世界に1人しかいない種族なのだけど…
ちょっとした孤独感と、それ以上の愛着を自分のパンダ耳に感じながら、僕は名簿を閉じた。




