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獣人しかいない世界で 僕は胃袋掴んで無双する  作者: けろ


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18/31

18.僕と、暦と、休日の計画

獣人の世界の特殊な暦の話です。

カレンダーの「130」という数字に斜線を引く。

この世界に来てから、正確に30日が経過した。

僕のいた元の世界なら「1ヶ月」と言うところだけれど、この世界には『月』という概念が存在しない。

1年は365日。ただ1から365までを順番に数えていくだけのシンプルな暦だ。ちなみに閏年もない。

さらに独特なのが、年齢の数え方だ。

この世界の獣人たちは、1年の始まりである『1日』を迎えた瞬間に、世界中の全員が一斉に年齢の数字が1つ増える。

何日生まれだろうが関係なく、次の1日が来たら歳を取る。そのため『誕生日』という概念はとても希薄だ。

「(僕がこの世界に落ちてきたのが101日だから、

30日経って今日は130日。次の1日が来たら

僕もめでたく17歳ってことになるわけか……)」

尤も、この世界に戸籍のない僕に年齢は意味ないかもしれないけども。

個人的には数字だけで完結するこの暦は

割と計算がしやすくて嫌いじゃない。

あと、この世界には決まった曜日もなければ、

国が定めた特定の休日も存在しない。

休日の設定はすべて学校や企業の裁量に委ねられている。

優美林女子高は『10日間通ったら3日間休み』という変則的なシステムを採用している。

世間には『基本的に休みなし』という、元の世界なら一発でブラック企業認定されるような契約もあるらしいけれど、

その分賃金が跳ね上がるか1日の労働時間が短いらしい。

すべては自己責任の完全な契約社会なのだ。

ただ、そんな世界でも『1日〜3日』と『363日〜365日』の、年の初めと終わりの3日間だけは、全国一斉に休みになるという。

「……待てよ。ってことは、僕、もしかして年中無休なのでは?」

寮長として毎日朝晩のご飯を作っている。

年末年始以外、僕には明確な休みが設定されていないことに今更気づいた。

下手したらその年末年始もここで料理をしている可能性は高い。

とはいえ、仕事というよりは完全に趣味の延長のようなものだし、みんなが美味しそうに食べてくれるのが純粋に嬉しいので、特に不自由も不満もない。

「(でも、たまにはTKG(卵かけご飯)だけとか、めんつゆパスタだけで思いっきり手抜きする日があってもいいよな、少しだけ……)」

そんな贅沢なサボり計画を頭の片隅で考えていると、リビングから賑やかな声が聞こえてきた。

「あー! 明日から3日間お休みだー! 授業から解放されるーー!」

サリーがソファにダイブし、黒い猫耳を嬉しそうにパタパタと動かしている。

「私もお腹いっぱい寝るー! 朝ご飯の時間まで絶対に起きないもんね!」

コニーも金の尻尾を大暴れさせて大喜びしていた。

「……私も、明日は、お休み……。ヒロキくんのご飯、ゆっくり食べられる……っ」

アオイがグレーのクマ耳を嬉しそうに寝かせ、はにかむような笑顔を僕に向けてくる。

ピピも丸メガネの奥の目を緩ませて、学年委員長の重圧から解放されたように息を吐いていた。

明日から優美林女子高の3連休が始まる。

全員が完全に休みが被る、貴重なタイミングだ。

「皆さん、明日はせっかくのお休みですし、お昼はみんなで外に食べに行きませんか?」

僕の発言に、リビングの4人がピクッと動きを止めた。

「え、外食!? ヒロキのご飯じゃなくて?」

サリーが不思議そうな顔をする。

「はい。この世界に来てから、僕、まだちゃんとした外の飲食店に行ったことがないんです。皆さんが普段どんなものを外で食べているのか、料理人として『市場調査』をしておきたくて。美味しいお店、どこか知りませんか?」

僕が言うと、コニーが真っ先に飛び上がった。

「知ってる知ってる! 普通コースの女子の間で今めちゃくちゃ流行ってるお店があるんだよ!」

「……そこ……私も、気になってた……。すっごい、山盛りなの……」

アオイも目を輝かせる。どうやら食べ盛りの彼女たちらしい、ガッツリ系のお店があるようだ。

「いいですね。じゃあ明日の昼は、そこにみんなで行きましょう。フェイ先生からお小遣いももらったことだし、僕が奢りますよ。」

「やったーーーー!!!」

サリーとコニーの歓声が響き渡る。

明日は久しぶりの外出だ。赤い頭巾をしっかりかぶって、この世界の「外の味」をたっぷり勉強してこよう。

もしかしたら、新しいメニューのヒントが、たくさん転がっているかもしれない。

ベッドに入る前、僕は明日出会うであろう未知の料理に思いを馳せながら、少しだけ胸を躍らせるのだった。

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